第一話 くびになって実家に帰る
「今いるところもあと少しで1年だったのに首か、、」
私安藤あんはとあるエンジニアリング会社に勤めるただの会社員。
ただ気になるところはよく首になることかな。
今日もまじめに会社で業務をしていると課長から会議室に呼び込まれ
「安藤さんの仕事は来月までだから」
とピシャリ通達された。今の案件はまだまだ続くはずなのに、私は不必要なようだ。
先月にはゴールデンウィークの後もよろしくねと言われていたはずなのに、、。
いつも通り仕事を進めながら何が悪かったのだろうかと考えてみるが、コレだと思い当たる節がない。
いつもそう、昔からそうだった。
高校時代に入ったブログラミング部では部長にコンテスト用に作っていたプログラムの
主担当を首にされ、結果として退部を余儀なくされた。
私は誰よりも頑張って働き、誰よりも成果も出していたはずなのに。
協調性はあまりなかったがそれでも周りに必要とされていた、、と思っている。
それでもある日、部長がほかの部員がいる前で私に首を通達、私は確か泣きながら部室を後にした。
通達された日の週末、私は家でゴロゴロとしていた。
最近ずっと平日は仕事漬けで気づいたら休日になっている状況だったので特にすることがないのだ。
ふとんに寝そべりながら通達された時のことを思い浮かべて、
「まあでも新しい天地に飛び立つチャンスかもな、」
とぼんやりとつぶやいた。それなりにこういう状況に慣れてしまっているので、数日経つと気持ちはだいぶ切り替えられるのだ。
とはいえ、平日のハードワークが精神的に来ているのか体がだるく、体は動かない。
家でもできることはとゴールデンウイークだし休みの予定を考えることにした。
今回も実家に帰るか。友達とも久しぶりに会いたいし。
私は休みの日の計画を考えるうちに少し元気になっていくことを感じた。
日は巡ってゴールデンウィーク初日。
前日までの本社での楽ではあるが特にすることのない待機状態から一転、
新幹線に乗ってすぐに実家に帰ることにした。
実家に帰ると高校時代まで過ごした自分の部屋に入り、ふぅーと息をつく。
実家は楽だなー、気分も晴れるし、切られることも基本はないはずだし。
私はそう思ってのんびりと一日を過ごした。
「あん、最近仕事は順調?新しい職場には慣れた?」
と母が夕食のときに訪ねてきた。私は何度も同じことを聞かれていたのでいつも通り
「うん、徐々に慣れてるよ」
と答えた。そう私は度重なり職場が変わるので実際徐々に慣れているのだ。
「あ、そういえば、○○ちゃんなんだけどね、最近結」
「ごちそうさま。」
私はいつものパターンに入る前に席をすぐに立った。ちまちま言われるのは嫌いなのだ。
ただ、母親の言いたくなる気持ちもわからなくはない。
そういうことも考えてないといけない年齢なのに興味わかないからとずっと考えてないようにしている自分がいるのだから。
「好きだった人にお前は首だなんて言われたんだもん、そりゃ人を好きになれないよね」
私は一人つぶやいた。