第2話 現実は非情なり
「はぁはぁ」
僕は必死なって走った。ぶっちゃけもう確実に間に合わないのだが今はとにかく走り続けることしかできない。そう、今は亡き目覚まし時計のためにも。そして、僕は滑り込むかのようにして教室の中に入った。
「何とか間に合たか…」
教室に入り息を整え、ほっと一安心した僕は、ふと黒板のほうに目をやると、長い黒髪、細くすらっと長い脚、まるでモデルのようなとても綺麗で凛とした女性がスーツを着て立っていたが…
遠目からでもわかるくらいの殺気に僕は凍り付いた。話を聞くと、その女性はこのクラスの担任らしくほかの生徒は能力検診に行ったそうだ。
そして、僕はその後しばらく土下座をし続けることになったのは言うまでもない。
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「まったく、入学式から遅刻をしてくるなんて、私も長い間教師をしているが君が初めてだ」
深いため息をつきながら怒りを通り越してあきれたかのように先生は僕に言った。
「すみません、返す言葉が見当たりません」
確かに僕も学校初日から遅刻した事はあるが入学式から遅刻した事は一度もない。むしろそんな話聞いたことがない。
「まぁ、過ぎたことをこれ以上気にしても仕方がないか」
そういうと、先生は表情を整え僕に少し歩み寄り自己紹介まがいのことを始めた。
「では改めて、私の名は菊野簪だ。君たちのクラスの担任として一年よろしく頼む」
そういうと、先ほどの凛々しい顔とは裏腹に満面の笑顔を浮かべた。この破壊力は不味い恐らくクラスの男子のほとんどはひんしになるレベルだろう。
「ところで、君の名前を確認したいのだが…」
菊野先生はとっさに言葉とめ僕の首元に目やる僕もそれにつられて目をやると朝急いででできたせいか制服のネクタイが曲がっていることに気が付いた。直そうとネクタイに手をやると、
「まったく、君はつくづくだらしない」
と言いながら僕のネクタイを直し始めた。
これは、非常にまずい普通の男子ならっきと死んでいただろう。だが僕は、まだここで死ぬわけには……
「顔が赤いが大丈夫か?」
そう言うと菊野先生は、僕のでこに手のひらをあてた。
「毎日僕のために味噌汁を作ってください」
僕の理性は死んだ
菊野先生は少し苦い顔をして、「来る途中頭でも打ったか」と言い1mほど距離を置かれた(心の)。そして、咳ばらいをして、改めて僕に話始めた。
「あー、話を戻すが確認のため君の名前教えてくれないか」
そう言うと菊野先生は元の凛々しい顔に戻り僕に問いかけた。
「あっ、申し遅れました。1年加藤拓真です」
すこしこっぱずかしいが菊野先生は僕のそんな姿を見て少し微笑んだ。
「よし、それじゃあもう能力検診が始まっているからすぐに体育場に向かうように」
「はい」
そうして僕は教室を後にし体育場に向かった。
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能力検診とは異能と言う特殊な力を人々が持ちはじめその異能に関しどのような副作用があるかや、能力によっての体調の変化などを定期的に検査することである。そして、その異能はほとんどの場合16歳の時点で発現するため、大体の人は高校生なると同時に異能が発現するためこのように検診が行われる。
そして何より、発現した異能によってランクがつけられ、その後の学校の待遇も変わってくる。能力のランクは能力を使いなれることによって上がる。だが、最初のスタート地点が違えばそれなりに周りより有利なことになる。ここで今後の高校生活が決まるといっても過言ではない。
「はい、では検査が終わりましたので結果を外で受け取ってください」
さあ、ここが運命の分かれ道だ。いや、今日は不幸が重なってきた分きっとこっちでは運が回ってくるはず……
そして、僕は期待と不安を胸に恐る恐る通知を確認した。
加藤拓真 ランクD
現実は非情なり
加藤拓真 ランクD
能力名 微速
自分を含め触れたものの時間の流れを少しだけ早くする。最初は3分のカップラーメンを2分にする程度の使い道しかしていない。