江戸前☆寿司っこブラザーズ
題名と紹介文は無視してください。
青い空を徐々に黒雲が覆い始めていた。
少し憂鬱な気分になりながら、私は職場に向かった。
私の名前はエミリエッタ・和田。
名前からわかる通り、両親は共にセネガル人だ。
フランスのパリでカレー専門店をやっている私は、ルーの仕込みのために朝早く起きて店へ向かう。
従業員は私と、今年で米寿を迎える李さんの2人。時給は7万だ。
李さんは足が弱くて立てないので、ウエイトレスを私が、そして李さんはカレーの作り方を何度教えてもすぐ忘れるので、シェフを私がやっている。
2人で役割分担がハッキリしているので、私は自分の仕事に集中することができる。李さんの存在はとても助けになっている。
黒雲が広がるのをみて、私は歩調を早めた。
一応雨が降ってきたときのために服の下にレインコートを着てきたが、今雨が降ってきたら服が濡れてしまう。
急がないと。
雨が強くなってきて、小走りで店に着いた私。李さんは来ていない。そう言えば今日はホームヘルパーが来る日だった。
私の店、『ミネスとローネ」は朝6時から午前11時までの営業だ。
何故か昼に店の前に来て「closed 」の文字を見て帰って行く人が多い。
それなら朝に来ればいいのに。
ミネスとローネの看板メニューは、石焼ビビンバだ。李さんの賄いに作ったものを、お客さんが食べたいというので出したところ、大盛況となって雑誌にも取り上げられた。
カレーを食べるお客さんは、この日を皮切りにいなくなった。
6時から店を開けるので、とんでもない早起きをしているのに作ったカレーは毎日私の食事になっている。
作りたくもないビビンバを作り続ける日々。正直私はうんざりだ。
午前10時50分を過ぎた。
そろそろラストオーダーの時間だ。
すると、モンゴル人力士が文字通り転がり込んできた。
「ヘイ、らっしゃい!」
私はいつものようにお客さんを迎える。
モンゴル人力士は息を切らしすぎて過呼吸になっていた。
「はーっ!はーっ!ビーフカレー1つ!」
「結婚してください」
私はその瞬間恋に落ちた。
まさかカレーを頼んでくれる人がいるなんて!
「طهثثرميشضرهقثيسصرزذ」
「لمسيرتقسذزونييىعبيذزوىتثلومو」
ايسززيسدنليذوببيذىاقسبرولسيزاسدرسسذديسذزتبسيدظشلزظيلزشستبيلتيثاسيايسلسبمكشيد
こうして私は店を閉めた。
今日はとても幸せな気分だ。17年振りにカレーを頼んでくれる人がいたから。
3日後ーー
10時40分。そろそろラストオーダーの時間が迫っている。
なのにさっき駆け込んできた板前の格好をしたナイジェリア人(本人はオバヤナと呼んでくれとのことだった)は、まだ注文を決めていない。
すると彼は突然口を開いた。
「アナタノカレートッテモオイシソーデース。是非私の店に協力していただきたい」
何のことかよくわからなかったので、私は彼に尋ねた。
「I want to be a good itamae.
But I can't make sushi very well.
そこであなたのカレーと私の唯一自信があるシャリを組み合わせて、究極のシャリカレーを作るのさベイビー」
だそうだ。
私は自分の石焼ビビンバに誇りを持っていたので、店を離れたくないと言ったが、オバヤナがバナナをくれたので協力することにした。
そこで私たちはシャリカレーを作るべく、血の滲むような研究を重ねた。
そして60年後、私たちは遂に究極のシャリカレーの研究を完成させた。
まず私たちは始めに若さを手に入れた。そして自分たちのクローンを大量に作り出して、シャリカレーを作る労力とした。
世界各国で私たちのシャリカレーと、ついでに石焼ピビンバも好評を得て、次なる地はこの日本だ。
しかし私たちはここで残酷な事実を知ることとなった。
日本では既に回転寿司のチェーン店がシャリカレーをメニューに加えており、その味は私たちのものを遥かに上回っていた。
私とオバヤナは絶望し、すごすごとフランスに帰った。
やはりそれぞれの仕事を全うするのが1番良いと、私は写真になった李さんの待つ自分の店へ、オバヤナはマク◯ナルドのバイトへと戻った。
オバヤナはまだ自分の師匠を見つけていなかったらしい。
何故日本に留まらずにフランスに帰ってきたのだろうか。
まあそんなことはどうでもいい。
李さんが亡くなってから、私の頑張りのおかげか、私の時給が以前より7万ほど上がった。
天国で李さんは私を見ているだろうか。それとも石焼ビビンバを見ているだろうか。
このカレー店での頑張りを李さんが見てくれていれば、私は幸せに思う。
「ヘイ、らっしゃい!」
今日も何人ものお客さんが『カレー専門店 ミネスとローネ』の石焼ビビンバを食べに来てくれる。
その国籍は様々だ。
インド、印度、India …。
何故カレーを頼まないのか不思議に思うが、私は石焼ビビンバを振る舞う。
いつも私を支えてくれた李さんに、死んでから胸を張って会いに行けるように。
ツッコミたいそこのあなた!
是非感想をお寄せくださいね☆
待ってまーす♪