バレンタインの聖戦2
2月というのはかなり寒い。マフラーを巻き、コートを着て、ニット帽を被り、手袋をはめて、カイロを全てのポケットに入れても、なお寒い。その特殊さから学校は寮制度だが、教室につくまである程度の距離は歩かなければならない。つまりその間、俺は冷たい外気、ナイフで刺されるような凍った凶器と闘う必要がある。そのためには装備が必要だ。だからこれは、
「正当防衛だ!」
「どこがどうして?!」
俺は友人の佐野と登校している。佐野がお前は服を着すぎだ、何故そんなに厚着なのだと聞いてきたので、答えてやったのだが、どうやら理由を省略しすぎたようだ。
「いや、周り見てみなよ。みんな厚着して…。」
「いや、誰もそんな雪だるまファッションじゃないから。」
よく周りを見ると、教室に向かう生徒達はみんな薄着で、見てるだけで体の芯まで冷えそうだ。
「ううっ。寒っ…。」
「いや、そんなに寒くないからね?!」
ワイワイ言いながらもなんとか教室に辿り着く。ふう、今日も勝ったぜ、とつぶやきながら、鞄を机の横に置き、雪だるまファッション、ではなく防寒装備を解除して机の上に積み上げる。教室は適温に保たれているため、すぐ脱がないと汗をかくのだ。俺は防寒装備を一つ一つ鞄にしまっていく。今日もお疲れさん、帰りもよろしく、と呟くのを忘れない。そんな俺に声が降りかかってきた。
「ドルカ君ってどうしてそんなに厚着なの?
寒がり、のレベルじゃないよね…?」
透明感があって、でも芯があるその声。俺は見上げるような角度で振り向いた。そこにいたのは、燃え上がる炎のような赤髪の少女。彼女を見た途端、俺の心が不思議な感情で満たされる。不安と安心、諦めと期待、痛みと恍惚、正反対の感情が同時に交錯する。俺はこの感情がなんなのか知っている。けど、その感情を表に出す訳にはいかなかった。だから俺は極力感情を抜いてこう言った。
「正当防衛だ。」
赤髪の少女、アルファさんはどこか困ったような顔をして、そのあと顔に落胆の表情らしきものを浮かべた。その表情の意味を図りかねていると、彼女は感情を隠すように冷たく声を発した。
「ふうん」
その時、ドアがガラガラと激しい音を立てて開いた。思わずそちらに目をやると、あまりに勢いよく開いたドアが反動でからからと閉まったところだった。教室中の注目が集まり教室中から声があがる。
「なんだ…?」
声は波紋のように広がり、教室に狂乱、大騒ぎを巻き起こした。だが俺は驚かない。こんな形で教室中の注目を集めるのはヤツしかいない。そしてアルファさんも驚きはしないだろう。彼女を見やると溜息をついていた。その溜息に喜びが含まれているような気がして俺もまた、溜息をついた。アルファさんが俺の視線に気づき、
「ん?」
といってきたので、慌ててドアへと視線を戻す。すると今度は、カタツムリ並みの遅さで慎重にドアが開かれているところだった。そしてヤツが、教室に降臨した。
一回間違えてデータ消してパニックだった。
みんなも気をつけよう。