表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/111

第四十話 「来客」

「半年ぶりだねぇ。噂は色々と聞いてるよ。

 這い寄るロリコンだっけ?

 あぁ、なんて羨ましい二つ名だ」

「羨ましいのなら、譲ってやりたいくらいだよ」


 俺を訪ねて来た人物、それは半年近く前に仕事で王都まで同行した軍人、リックであった。

 しかし、俺の二つ名を羨ましがる人物には初めて会ったな。

 流石としか言いようがない。


「ミスティちゃんも久しぶり。

 相変わらず、かわいいなぁ……思わず舐めたくなるかわいさ!」

「この人やだぁ……」

「だから、そう言う台詞を口にするなよ」


 ミスティが俺を盾にするように背後に隠れた。


「ところで、俺に何の用だよ?

 これから仕事を探しに行く所なんだけど」

「おっといけない。ミスティちゃんに見惚れて忘れる所だった。

 僕がここに来たのはコレについてなんだ」


 そう言ってリックは鞄から一枚の紙を取り出す。

 それは以前、エボルタがくれたビラと同じ物であった。


「っ!? 何でリックがコレを持ってるんだ!?」

「何でって、コレ僕のパパが作った物だし」

「え?」

「ここにサインがあるでしょ。

 カイルヴェルト・グレーナーって。

 これ、僕のパパ」

  

 確かにリックの苗字もグレーナーだが、このロリコンが貴族?

 とてもそうは思えないぞ。 


「いや……これ貴族様だろ?

 でさ、お前は軍人じゃん。

 それが親子っておかしくね?」

「パパの言いつけで、社会勉強として二年間だけ軍に所属してるんだ。

 貴族軍人ってやつ?

 一般の兵士と違って、色々と優遇されてるから気楽でいいよ」

「そういうのもあるのか」


 軍人だけど扱いは貴族に近い、仮染めの兵士か?

 こいつの軍人らしからぬ緩さを見てると、一応真実のようにも思える。


「エレイア古代迷宮はパパの所有地なんだけどね。

 半年程前から未知の野生動物(モンスター)が住み着くようになって困ってたんだ」

「それでこんなビラを?」

「そう言う事。

 それに今回は上官命令でね。

 君を手伝う為に派遣されてきたんだ。

 僕なら土地勘もあるからね」


 上官……ジャスティスか。

 手紙の返事が来ないと思ったら、わざわざ援軍を寄越してくれるとはな。

 少々、頼りない援軍だが……。


「ミスティ、マリアを呼んできてくれ」

「うん」


 リックがジャスティスの命令で訪ねてきたとなれば、マリアも無関係ではなくなる。

 諦めかけた時に、手紙を出そうと言ってくれたのは彼女なのだから。


「ちなみにさ、このイラスト描いたのは僕。

 どう? かわいいでしょ」


 リックは冒険者募集のビラに描かれた、女の子のイラストを指差した。


「マジか!? 上手ぇな!」

「幼女の絵を描くのが僕の趣味でね。

 訓練の合間によく描いてるんだ」


 絵を描くのが趣味と聞けば悪い気はしないが、文頭に幼女と付いただけでいかがわしくなるな。

 だが、彼らしいと言えば彼らしい。

 ツッコんでも喜ばれるのがオチなのでスルー安定だ。


「実はいくつか作品を持ってきているんだ」


 そう言って、彼は鞄から何枚かの紙を取り出す。

 そこには黒い服装をしたツインテールの女の子が描かれていた。


「おっ! これミスティか?」

「そそ、良く描けてるっしょ」

「すげー、そっくりだよ!」


 少しデフォルメされているが、一目でミスティと分かる。

 リックにこんな才能があったなんて正直意外だ。

 ただし、このイラストにはおかしな点がある。

 イラストのミスティは顔を赤く染めながら、両手でスカートを捲りあげてパンツを見せているのだ。


「でもさ、何でスカート捲りあげてんだ?」

「恥じらいながら下着を見せる芸術的なポーズ!

 どう? そそるでしょ」

「いや、全く……てか、ミスティはこんな事しねーから」


 ちなみにイラストには、真っ白な生地にピンクの小さなリボンがついた、オーソドックスな幼女パンツが描かれている。

 悪くないイメージだが、残念だったな。

 ミスティのパンツはうさぎさん柄だ。

 何故知ってるのかって?

 俺が買ってやったからに決まってるだろ。

 ついでに洗濯も俺の仕事だぜ。


「じゃあこれは? 渾身の一作なんだ。

 実用性を重視してみた」

「どれどれ……」


 リックは紙を捲り、別のイラストを見せてくる。

 このイラストに描かれているのもミスティのようだ。

 右手を胸に、左手を股に充てて恍惚とした表情をしている……ってダメ! アウトーッ!


「呪文詠唱 火の玉(ファイアボール)!」


 懐からカードを取り出して、火の玉でリックの描いた卑猥なイラストを焼き払う。

 あんなものがミスティに見られたら大変だ。


「うわっちぃっ!

 あぁっ……僕の芸術作品がっ!」

「何が芸術だ!

 ミスティをオカズにしてんじゃねーよ!」

「そんなっ……自分のイラストで大人の永久機関を作るのは、僕の自由じゃないか!」


 大人の永久機関……自分の描いたイラストで欲望を満たせるってすごいな。

 例え絵が描けたとしても、俺には真似できないだろう。


「それは勝手だけどさ。

 ミスティそっくりにする必要がないだろ」

「だって、ミスティちゃん、かわいいんだもん!」

「そこは認める!」


 あれ? 何か意気投合してしまった。

 さっきまで意見が割れてた筈なのに……おかしいな。


「変態同士で何バカやってんのよ」

「ますたー、おねーちゃん連れてきたよ」


 ミスティがマリアを連れて戻って来た。

 マリアは呆れた顔でこちらを見つめている。

 不本意ながら、リックと意気投合した所を見られてしまったようだ。


「おぉっ! マリアちゃんも久しぶり!

 しばらく会ってないのに全く発育していない胸!

 あぁ、いつ見ても素晴らしい!

 これぞ、合法ロリの黄金比率!」

「ぶん殴ってもいいかしら?」


 流石はリックだ。

 欲望を包み隠さない純粋な性格で、確実に地雷を踏み抜く。

 いや、踏むどころか地雷にドロップキックをかまして、確実に爆発させている。


「そうそう、マリアちゃんに良い物を見せてあげよう」

「待てリック! 命が惜しかったら、それを出すんじゃない」


 鞄に手を突っ込み、起爆スイッチ(えっちなイラスト)を取り出そうとするリックを慌てて引き止める。

 彼が取り出そうとした物は大体予測がつく。

 もし、それがマリアをモデルにした卑猥なイラストだったら……考えるだけで恐ろしい。


「ん? あぁ、そうか。

 じゃあ、これは後で君だけにこっそり見せてあげるよ」

「いや、そういう意味じゃなくてだな」

「分かってるって。君も好きだねぇ。

 同士としてさっきの事は水に流そうじゃないか」


 リックを止める事は出来たが、おかしな勘違いをされた気がする。

 何で、エロ本を回し読みする男子中学生みたいな雰囲気になってんだよ。


「あなた達の仲が良いのは分かったから、要件は何なのよ」

「えと、このイラスト描いたのリックなんだってさ。

 それを見せたかったらしいぜ」

「ふーん……どうでもいいわ。

 それより、どうしてリックがここに居るの?」

「あぁ、そっちか。

 実はな、こいつはジャスティスの使いで来たんだ」


 俺はリックが来た経緯をマリアに話した。


「一応、筋は通っているわね。

 古代迷宮とは別の、もう一件についてもリックが知ってるの?」

「ん? 別のもう一件って?」

「知らないならいいのよ。

 元々、答えてくれるとは思ってなかったし……」


 そう言えば、マリアが手紙に何か書き足してたな。

 確か、不死がナントカ……思い出せん。

 俺には関係なさそうだし、どうでいいか。


「まぁ、良いじゃないか。

 半分諦めかけてたんだし、古代迷宮に行けるだけでもラッキーだぜ」

「あなたの言う通りね」

「ひょっとして、マリアちゃんも行くつもりなのかい?」

「何よ? 私が居ちゃ悪い?」

「いや……悪くない。

 マリアちゃんにミスティちゃん。

 なんと素敵なロリハーレム!

 むしろ大歓迎だよ!

 符術士くん、馬の扶助は任せた!」

「いやいや、馬なんか乗った事ねーし!

 それに道も分かんねーよ!」


 リックが二人と馬車に乗りたいのは分かるが、このメンバーで馬に乗れるのは彼しか居ない。

 俺に馬を扶助しろと言われても無理な相談だ。


「ちっ……じゃあマリアちゃんかミスティちゃん、どちらでいいから僕と一緒に乗馬しよう!」


 うわ……こいつ、舌打ちしやがった。

 しかし次から次へと、よく欲望を口に出せるな。

 答えは分かりきっているのに……。


「やだぁ……ミスティはますたーといっしょがいい」

「私も嫌よ。

 あんな立派な馬車があるのに、どうして馬の背中に乗らなきゃならないのよ」

「ぐぬぬ……符術士くん。

 後で一発殴っていいかい?」

「何それ? 理不尽じゃね!?」


 予想通りの回答が二人から浴びせられる。

 てか、何で俺が殴られなきゃいけないんだよ。


「……分かった。ミスティをカードに戻そう。

 これならハーレムじゃないだろ?」

「やぁ~だぁ。

 ミスティはますたーといっしょに、馬車に乗るのー!」

「ミスティが居なくなったら、二人きりになっちゃうじゃない!

 そ、そんなのダメよ。

 み、密室で二人きりだなんて……そう言うのは結婚してから……」


 俺がハーレム状態になるのが気に食わないリックの為に考えた案だったのだが、二人に否定されてしまった。

 ミスティはともかく、マリアの理由は意味不明だ。


「符術士くん」

「……何だ?」

「爆発しろ!」

「リア充認定されたっ!?」


 この程度で爆発しなきゃならないとか、こいつの基準低すぎだろ。

 そもそも俺は日本じゃ非リアまっしぐらのインドア派だぞ。


「ちょっと話が脱線しすぎよ。

 リック。その迷宮はどこにあるの?」


 マリアが地図を広げて案内を促す。

 それに応じたリックが、アグウェルの北西の辺りに位置する赤い丸を指差した。

 この地図で赤い丸は古代迷宮を示している。

 指さされた赤丸に、名称は記載されていなかった。


「だいたいこの辺りかな。

 王都とアグウェルを角として正三角形を描く位置。

 ここにあるのがエレイア古代迷宮だ。

 辺鄙なところだけど、道はあるから馬車での往復は問題ないよ」


 ギリギリ日帰り出来る距離だな。

 サクッと野生動物(モンスター)を駆除して、新しいカードをゲットだぜ!

 などと気楽に考えていたのだが、リックの続けた言葉は、にわかには信じがたい内容であった。


「続いて、迷宮に生息する未知の野生動物(モンスター)についてだけど、一言で言うと、ここの野生動物(モンスター)は符術士とほぼ同等の耐性を持っている。

 つまり……あらゆる武器と魔術が通用しないんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ