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第三十八話 「地図と手紙」

 エレイア古代迷宮にて未知の野生動物(モンスター)の討伐。

 報酬は迷宮内で入手出来る魔法道具(マジックアイテム)

 新しいカードが入手出来る可能性に惹かれたのか、今日のマリアはいつになく積極的だ。

 しかし、地図上での話とは言え、名前しか分からない迷宮を探し出すのは骨が折れそうだ。

 それ以前に俺はこちらの地図の見方がさっぱり分からない。


「えっと……これさ、どれが古代迷宮?」

「古代迷宮は赤い丸印よ。

 青い四角が町で、町と町をつなぐ線が整備された道。

 ここが私たちの居るアグウェルよ」


 マリアの指差した場所を見ると、赤い丸の横にアグウェルと書かれていた。

 地図の中央より、やや南寄りの位置だ。

 そこから北の位置に他の数倍サイズの赤い丸があり、ディアナハルと書かれている。

 これが王都ディアナハルか。

 地図で見ると王都の広さが一目瞭然だな。

 王都から更に北へ目を移すと、地図の北端が赤い斜線で覆われていた。

 斜線の範囲は王都よりも広い。


「この端っこの赤いのって何だ?」

「え? その辺りは……さ、さぁ? 分からないわ」

「そか」

「そんな事より、今は古代迷宮でしょ」

「分かってるって。

 ちょっと気になっただけだろ」


 続いて古代迷宮を示す赤い丸印を確認する。

 かなり多いな……明らかに町の二倍以上は存在する。

 不思議なのは、その約半数が無記名な点か。


「なぁ、この古代迷宮のマークだけどさ。

 所々、名前が書いてないのがあるんだけど?」

「そう言うのは無視していいわ。

 大半は名前が決められてない迷宮よ。

 稀に領主や政府の都合で名前が伏せられている場合もあるけど、それに該当する可能性は低いと思うわ」

「もし、それに該当したら?」

「……お手上げね」

「そうか」


 俺たちの探しているエレイア古代迷宮が、名前の伏せられている迷宮の一つだった場合、場所を特定する事はほぼ不可能になる。

 そうならない事を祈りながら、念入りに探そう。


「私は北から見ていくわ。

 あなたは南から探して」

「おっけー」



 地図上に点在する赤丸をひとつひとつチェックする。

 どのくらいの時間が経過しただろうか?

 王都の近くまでチェックを終えたが、エレイア古代迷宮はまだ見つかっていない。


「王都の辺りまで見たけどないぞ。

 そっちはどうだ?」

「見つからないわ。

 ……残りは王都周辺だけね」


 俺の問に答えつつも、マリアは地図から目を離さない。

 だが、しばらく地図とにらめっこを続けた後、彼女はため息を吐いて顔を上げた。

 この様子だと、エレイア古代迷宮は見つからなかったようだな。

 俺が慰めの言葉をかけるべきか悩んでいると、マリアはテーブルの上の地図を半回転させた。


「次は私が南からチェックするわ。

 あなたは北からお願い」

「え? あぁ、見落としがあるかも知れないからな」


 これだけの量の中から探し出すとなると、一度のチェックでは見つからない可能性がないとは言えない。

 地図を二分するのではなく、ローテーションさせてお互いが全体を見る事で、片方が見落としてもフォロー出来ると言う考えか。

 正直、面倒くさいと思いつつも、マリアの考え方には納得出来るので、俺は地図とのにらめっこを再開した。

 しかし、成果をあげられないまま、地図の中央に位置する王都の辺りまで辿り着く。

 いつの間にか、アリスのお手伝いを終えたミスティが、俺の隣に来てじっと作業を見つめていた。


「……ないな」

「そうね……地図に載っていない迷宮……」

「このビラ自体が作り物の可能性は?」

「さっきも言ったけど、それはないと思うわ。

 イタズラなら印刷機を使う必要がないもの」

「なるほど」

「お手上げね。

 一般の地図に載っていないとすると、このカイルヴェルトっていう貴族と直接面会するしかないわね」

「どうすれば会えるんだ?」

「貴族様が私たち冒険者なんかに会ってくれる訳ないでしょ」

「でも、この依頼書には冒険者求むって書いてるぞ」

「そ、それだけこの貴族が切羽詰まってるって事よ」


 マリアは頬を真っ赤に染めながら、少々苦しい言い訳をする。

 彼女の言うとおり、この貴族が切羽詰まっているのだとしても、地図には載っていないし、連絡先も不明ではどうしようもない。

 俺にビラをくれた人物(エボルタ)に会って訊けば、ヒントくらいはくれるかも知れないが、それは罠にかかりに行くようなものだ。


「詰んだな」

「知り合いに貴族と繋がってそうな人物でも居れば良かったんだけど、心当たりはないわ」

「諦めるしかないか」

「ますたー、ますたー」


 今まで横でじっと見ていたミスティが、俺の服を引っ張りだした。


「何だ? ミスティ。

 俺はマリアと大事なお話中だから、遊ぶのは後でな」

「ちがうの。ますたー、これ見て」

「だから後で……ん?」


 彼女が差し出した物はカードサイズの一枚の紙だった。

 貰ったのは良いが使い道がなく、自室のテーブルの上に長い間放置されていたものだ。


「王都で会った何とかって人の名刺じゃないか?

 これがどうかしたのか?」

「ますたーの役に立つと思って、お部屋から持ってきたの。

 ミスティえらい?」

「え? お、おう。ミスティは気が利くな」

「えへへ」


 せっかく持ってきてくれたので、なんとなくミスティを褒めてはみたが、これが何の役に立つのだろう?


「何なの? それ?」

「ただの名刺だよ」


 マリアがじっとこちらを見ているので、手に持っていた名刺を差し出す。

 なんの変哲もない、住所と名前が書かれただけのありふれた名刺だ。

 一目見ればすぐに興味を失うだろう。

 そう思っていたのだが、俺の考えはマリアの悲鳴にも似た叫びで否定される。


「な、何であなたが、こんな物を持ってるのよっ!?」

「え? 五ヶ月くらい前かな?

 王都に行った時に貰った」

「嘘!? ジャスティス・ササキに会ったの!?」

「あぁ、確かそんな名前だったな。

 その人がどうかしたのか?」

「虹の守り手ジャスティス・ササキ。

 南カトリア最強の符術士よ!」

「何だって!?」


 あの青年が南カトリア最強の符術士だと!?

 確かに普通じゃない雰囲気だったが、まさか符術士だったとは……。


「ちくしょう。知ってたら対戦を申し込んだのに……」

「知ってたらって……前にも話したでしょ?」

「あれ? そうだっけ?」


 全く記憶にない。

 俺とした事が痛恨のミスだな。

 今度、会ったら一戦お願いしよう。

 最強かぁ……一体どんなデッキを使うんだろう?

 俺の実力で勝てるだろうか?

 ダメだ……妄想が止まらない。

 楽しみで仕方がないぞ。


「何ニヤニヤしてんのよ。気持ち悪いわね」

「わりぃ。ちょっと考え事してた」

「……まぁいいわ。

 で、あなたはジャスティス・ササキとどのくらいの面識があるの?」


 何だ? マリアもジャスティスに興味津々じゃないか。

 流石、俺が見込んだだけの事はある。

 カードゲーマーなら最強のプレイヤーとは戦ってみたくなるよな。


「王都でちょっとトラブルがあってな。

 その時に少しお世話になったんだ。

 数分間会話をしただけで面識はほとんどない」

「そう……その程度なのね。

 対戦を申し込むとか言うから、もっと密接な関係かと思ったわ」

「別に初対面の相手でも、カードゲームの対戦を申し込むのは普通だろ?」

「え? そ、そうなの? あなたって凄いのね」


 ショップのデュエルスペースで暇そうな人が居たら対戦を申し込むのは、俺にとっては当たり前の事なのだが、マリアに変なものを見るような反応をされた。

 カードショップのないこの世界では、仕方のない事なのかも知れないが、少し切ない。


「しかし、えらく食い付くな。

 さっきまで古代迷宮に夢中だったのに」

「彼くらいの大物なら、その古代迷宮について何か知ってるかも……と思ったのよ」

「なら、訊いてみれば良いんじゃないか?」

「一度会っただけの相手に、どうやって訊くのよ」

「その名刺に住所が載ってるだろ。

 そこ宛てに手紙を出せば良い」

「はぁ……一般人が手紙を出しても、読んでもらえる訳ないでしょ」

「そうなのか?

 でも、何か困った事があれば手紙をくれって言って、その名刺をくれたんだけど」

「なんで、ジャスティス・ササキがあなたにそこまでするのよ。

 信じられないわ」

「ますたーの言ってる事、ホントだよ」

「どうもミスティの魔法に興味を持ったみたいでさ」

「なるほど……って、ミスティが魔法を使ったの?

 王都で何があったのよ!?」

「何でもいいだろ。

 ほら、早速手紙を書こうぜ!」

「言いたくないのなら、別に良いけど。

 封筒と便箋を持ってくるわね」


 王都で食事の邪魔をしてきた酔っ払いに苦言を呈したら、返り討ちにあってミスティに助けてもらったのだが、これは俺の中での黒歴史だ。

 流石に恥ずかしくて言えない。

 幸い、マリアも空気を読んでくれた。

 この事は心の多重スリーブに包み込んで墓まで持っていこう。


「お待たせ。便箋を持ってきたわ」

「おし、じゃあ手紙を書いてくれ」

「は? あなたが書くんじゃないの?」

「俺はカトリアの文字が書けない!」

「……呆れた。もう長い間ここで暮らしてるんだから、文字くらい勉強しなさいよね」

「へいへい」


 俺も文字は書けるようにならないとダメだとは思うのだが、何度挑戦しても挫折してしまう。

 独特のフニャフニャした字体が書き辛い事と、なまじ言葉がそのまま通じるので必要性を感じないのが理由か。


「ついでに私も質問を書いても大丈夫かしら?」

「良いんじゃないか?

 優しそうな人だったし、大丈夫だろう」

「じゃあ、書いちゃおっと。

 宛名はあなたの名前にしておくわね」


 こうして、ひょんな流れからジャスティス・ササキ宛てに手紙を送る事になった。

 内容はエレイア古代迷宮、及びカイルヴェルト・グレーナーと言う貴族について。

 ついでにマリアの質問も書かれている。

 その内容は『よろしければ、不死の静寂について知っている事を教えて下さい』……って何のこっちゃ?

 意味不明な質問だが、どうせ俺には関係ないか。


「じゃあ、早速この手紙を出しに行くわよ」

「え? ちょっと待った」


 今すぐ出かけるのはマズい。

 この町にはまだ大量殺人犯(エボルタ)が滞在している。

 せめて、彼が居なくなるまで待つべきだ。

 マリアのやつ、普段は引き篭もりの癖に、こういう時に限ってアクティブになりやがって……。

 彼女をエボルタと会わせる訳には行かない。

 何としてでも引き止めよう。

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