「秘密の家族」
ショートストーリー:一見普通の3人家族の香田家には実は凄まじい秘密があり、彼らはそれを誰にも言えず。隠し通そうと日夜家族のために頑張っているのだ。
1・秘密のパパ
私は香田智之40歳
どこにでも居るおじさん中年…予備軍だが、
若い頃結婚し今だに仲良くやってくれている
愛すべき奥さんが居て、
最上の愛を降り注ぎ育てた宝物のような娘も居る。
3人家族で仲睦まじく日々を生き、
娘が餌をやり過ぎてかなり太り気味の
先生と言う命名娘のオス猫も飼っている。
そして私には誰にも言えない力があり、
この秘密のおかげで闇からの魔を祓い、
霊的にも清浄な生活を営んでいる。
そもそもうちの曾祖父さんが
この力の持ち主だったらしく、
私は先祖還りのような霊性を受け継いでいると
祖母に聞かされ育ち、
秘密だから、
口やかましく言われていたのは、
「その力を公言するな誰にも、
いつか出来る家族にも教えず見せず
縁の下の力持ちであり続けろ!
お前の力は時と場合により
人とは見なされず魔人になる」
と言う教訓めいたもので、
曾祖父さんが力の大盤振る舞いをし、
最初はご近所から始まり評判はいつか大きくなり、
ついには名だたる人たちと関わりだした結果
えらい揉め事に巻き込まれ往生したから。
と言うのが理由だった。
お婆ちゃん子だった私は、
その教えのまま、
この授かった力を使えば使うほど自分の事を、
家族ですら恐怖するはずだと、
心に戒めを持ち生きている。
この力に吸い寄せられる様に湧く魔も居るのだ。
この力は申し訳ないが、
誰にとっても両刃の刃…
隠し通す事を申し訳なくも思い
誰にも言えない私だけの秘密。
時に重くそれが伸し掛かり
私を押し潰そうとする…だが、
つい3日前。
唐突に現れた強力な魔に大事な我が家を乗っ取られかけ、
深夜就寝中の家族に悟られる事無く
寝ずの番で明け方遂に祓えて安堵したが、
当然ながらそこから出勤して普通に仕事。
サラリーマンで営業職の私は、
強力な魔と対峙し力を全開放し、
疲労困憊で心身ともに大不調。
疲れた身体と赤く腫らした目。
それを家族に指摘され腹を壊して眠れなかったと
適当な嘘を吐いてしまい、
結局は要らない心配をかけてしまっていたが、
驚くことに会社に付く頃体調は自然と戻り
それどころか力が漲っていくのを実感し、
「『私もまだまだいける!いつでもかかってこい魔共め!』
ガハハハハハ!」
っと運転中に突然大声を出してしまい、
乗り合わせている同僚にドン引きされていた。
そして滞り無く1日が終わり帰宅後、
入浴中に事件は起きた。
頭をシャンプーまみれで洗っている時、
「おつかれちゃん」
と、声がはっきり聞こえ、
『!!』
恐ろしさに固まってしまったが、
『魔!』
だと思った私は無理に目を開けようとし
滲みるシャンプーに痛がりつつも振り向くと、
声の主は私の頭に湯をかけ、
「敵じゃない」
それは明らかにバスタブの中に居て
言いながら
咄嗟に呪文を唱えようとした手に優しく触れ下ろそうとし、
物理的に触られ、
『おぉおおおおおお前何者だぁあああ!
化け物なのかぁあああああ!?』
魔には当然物理干渉など無い。
だがそれは今たしかに手を触ってきたのだ。
その恐ろしさ半端なくガクガク震える身体。
ジャージャーとシャワーで流される
泡は落ちていくが恐ろしさで目が開けられず、
もし物理ま敵なら、
強い霊力はあっても普通の人の私…
応戦は不可能。
敵ではないと宣言されても信じられず、
次の言葉を待っていると、
「まぁびっくりさせて申し訳ないが。
私は本当にお前の味方で、
お前のことならなんでも、
何から何まで知ってるぞ?
バイト先のママの気を引こうと
あの頃は必死だったよな。
懐かしいだろう?」
確かにそうだったと私は思ったが、
「だぁああああああああ!
なななななな何を言ってる!
そんなの当てずっぽうだ!
しかもーお前どこから入って来た…
かかかかかか家族に手を出したら…
コロス!」
私は逆上し敵意剥き出しにそいつを見た。
「うわあああああああああああああああああああああ!」
良い年したおっさんの生まれて初めての悲鳴は、
喉がカラカラで声にならずただただ狼狽え、
風呂用の座椅子からコケ、
尾てい骨を嫌と言うほど打ってしまいダブルな衝撃で
腰も抜け、這うように風呂場から逃げ出そうとしていた。
「おい大丈夫か?お前が怪我したら
何の意味ないから落ち着けって」
声の主の正体は…
『私…私…私!』
今この狭い空間に私が2人!!
「ままままままま魔じゃないのか!?」
やっと絞り出せた声。
「違うから、説明するから。
そんな状態で外へ出るなよ皆が心配する」
「ハァハァハァ」
私はなんとか体制を戻し、
そいつからシャワーをぶんどり、
水に切り替えガブガブ飲んでいた。
「そもそもお前が俺を呼んだのだよ?」
もうひとりの自分が湯船の中で
小さなアヒルの玩具で遊びながら答えたが、
「あーー!?そんな事信じられるか!!」
顔も真っ赤に声を荒げ、
「パパーどうしたのー何か呼んだー?」
半透明の戸の先、
洗面台に来ていた娘の葉月に声をかけられ、
「あ。いやちょっと椅子から転んで尻打って
痛かっただけー大丈夫よ」
「えぇえええードジだねーあははははは」
去って行く娘にホッとしたが、
そいつを見れば見るほど自分でしかなく
思わず頭を掴み後頭部をガン見し、
同じ所にある昔の小さな傷跡を確認していた。
「お前が俺をさっきこさえたんだ。
だから唐突にここに…ほら見ろ」
そいつはザブンと湯船から立ち上がり、
身体の全てを見せつけられると愕然と、
驚きを隠せない私が見つめる先に
”あれ”は無かった。
「ぉ、お前はぁ使い魔…し、式神………」
「左様にございます」
「ど…どうやったら消せる?
あ、いゃ具現化させる方法をまず教えてくれ」
私はやっと理解していた。
これが2年前、初めての式神との出会い。
簡単に説明するともうひとりの私は、
強大な魔を払うため全精力を使ったのが原因で、
自身の霊性が次元上昇し覚醒したために
生まれた式神。
もしかすると、
もっと別な高度な生命体であるかもだが、
通常の式神なら
和紙などの何かに念を込めるのだが、
私の場合それは無用。
念じるだけで具現化させる事が出来、
消すのも自由自在。
それからと言うもの私は、
このクローンのような式神と共に魔を祓い、
疲れ過ぎたら代わりに会社へ行かせたり、
逆に家に居てもらったりで、
こいつは文句も軽口も叩き、
固有の意志も持ち合わせているが、
全ては私の指示ありきでしか動けない、
ありがたい賜り物で、
なんと何人も出せる事が分かり、
私の能力は、
霊的な悪霊を祓う事に長け、
尚且つ式神を大人数出現させられる
特殊能力者となっていた。
2・秘密のママ
私は、香田美椰38歳
どこにでも居る専業主婦だけど、
家族に言えないハンパ無い秘密があり、
それは母方の祖父母の代まで
まじないや占いや霊障を払う事で生計を立てていたらしく、
曾祖父さんも曾祖母さんも双方に霊力があり、
私の母には一切その力は無かったがあなたに、
つまり私にその力が宿っていると
子供の頃から教えられ、
人前で使うなときつく言われて育っていた。
自分のために使うのは良いのか
昔聞いたことがあったが、
使ってみれば分かると言われ、
宝くじを当てようとしたが何回やってもハズレ…。
そう、自己私益のためには一切使えず
本当にがっかりもしたが、
縁の下の力持ちだと強く心に留め、
それ以降身近な人々たちに悟られぬよう、
ありとあらゆる場面、
いついかなる時も出くわす
あまり宜しくない霊障を祓い
幸福な空間を作ってきた…つもり。
今のところ、
旦那にも娘にも、
なんか感の良い母親くらいにしか思われてなくて、
暮らせているが、
この力が娘に受け継がれていないか心配で、
生まれた時から注視しているが、
力を感じたことは微塵も無くて安堵している。
でもいつか覚醒してしまったら、
その時は一緒に立ち向かおうと心に定めている。
宝くじは買うなとも…。
私は毎日見る鏡にいつも祈る。
背後の守護霊たちや、
力の源である神に祈る。
彼らは言葉もなくぼんやりとしか見えないが、
いつも微笑んでくれてるように思う。
そしてついこないだの事。
事件が起きた。
それは自分史上最大、
最強の出来事ある日、
スーパーで娘と買い物をしてる時、
鮮魚コーナーの角に黒いモヤ、
悪霊の通り道である鬼門が発生していて、
以前からこのスーパーのこの場所には
嫌な印象しか無く、
その原因がしっかりと
芽吹き始めていたのだ。
これは、この場で力を使えずやば過ぎると、
娘を連れ逃げ出そうとしたら、
なんと葉月、
娘は少し離れたお菓子コーナーで
誰かと買い物を楽しんでいるのだ。
もうひとりは背中だけで
誰だか不明だったが、
背格好も髪型も着てる服まで
見覚えあるどころか自分と同じ…
一瞬身体が凍りつき震えるからだで、
『え?誰?それ誰?悪霊?!娘、娘を返せ!!』
息を飲みゆっくりと近づいていく私。
するとそいつは背中をむけたまま、
あの鬼門を指差しなんとかしろと
後手に合図を送っているように見え。
『え????』
そいつに悪霊などとは真逆の
穏やかな印象しかなく、
娘を誘導するように外へ連れ出しているのだと確信し、
『どうか私のやる事がばれませんように』
とただただ願い鬼門に立ち向かうと、
自分の身体から霊波が放たれ力の壁、
簡単に言えばバリアのような、
この場所から私を隔絶し周りから見えなくする膜、
球状の何かが膨れあがり、
「ありがたい!」
陰を結び呪文を唱えると、
あまりに強力な悪霊たとが次から次へと
門から飛び出そうとひしめき合い、
私の心臓が口から飛び出しそうになるほど大きく動き、
脂汗もダラダラで、
培ってきた秘技を駆使し、
最大限の力で応戦すると、
「続けて!」
さっき娘の横にいた女が、
私そっくりな女が今度は私の横で一緒に
念を送ろうとしていて、
「娘は!!」
私は聞いていた。
「大丈夫、親友の木乃美ちゃんちに遊びに行ったから平気。
欲しいお菓子も買ってあげた。あとで財布見てね。
しっかり減ってるから。あはは」
「財布??財布…でも…
ああああああんたいったい何者?!」
「あー駄目あまり力まないで、
平常心を保って!
私はあなた、
あなたの飛ばした最上級の使い魔。
式神だよ」
「えぇええええそんな力なんか持ってないよ」
「今まではね、
さっきあなたが鬼門見た時に
超強力に娘の保護を願ったでしょ?
その時生まれたから、
この隔絶球もそうよ?
あなたはまた一歩上に覚醒したの」
「えぇええええええ!」
式神だと名乗る自分そっくりの女を
まじまじと見つめると、
服の袖から先、
「その腕…まさか紙!!
そんなんでダイジョブなの?!
唐突に消えたりしないで!」
そしてもっと見ると足も紙製で、
「平気平気私はあなたと同じくらい強いし、
唐突に出て来たせいで紙になってるだけ。
あなたに力がある限り
いつでも召喚出来る…はず」
「はずじゃ困る~」
「様子見してよね」
式神に言われ、
「わ…分かった。
このまま一気に押し込むよー!」
「ほいほーぃ!」
ふたり?で力を開放すると
門は徐々に小さく淡くなり、
閉じられようとした時、
再びこじ開けようとした鬼。
その腕先をばっさり切り落とし
門は閉じられたが、
強力な魔は現世に出た瞬間
物理化するのも居ると知ってしまい、
鮮魚台の上でのたうち回る腕を、
「物理は駄目…
ハァハァ太刀打ち出来ない……
もし全体が出てきたら…
逃げるしか…ハァハァ…」
疲れすぎ息を切らし血の気も引き顔は青ざめている。
「これどうする?」
式神は動かなくなったそれを掴み上げ、
「置いていけない…」
私の差し出すスーパーの袋に放り込むと、
隔絶球も消え、
いつもの明るい店内。
いつも流れているスーパーの
素っ頓狂なテーマソング。
何も知らない人々の顔を見て安堵し、
帰宅後、バスタブの蓋に置いた鬼の腕…
これをどうすればいいのかと
式神と相談しまくったら、
生ゴミで出すしかないと言う結論に至り、
新たに何枚ものビニール袋で
でグルグル巻きにし、
ガムテープでさらにグルグルにしようとしたが、
「あ!」
腕はそのうち跡形もなく消えると、
どっと疲れが滲み、
床にヘタレ込んでしまう私だった。
これが1年ほど前の出来事。
それ以来私はありがたくシカちゃん。
ちなみに私は式神をいつのまにか、
シカちゃんと呼びはじめ、
呼び出しては、
なにかとこき使っているが、
シカちゃんは文句こそ言うものの
私の指示は絶対で大変心強い相棒…いや、
下僕…
言い方悪いな下僕?として、
家族の未来を守るため、
今日もふたりワンセットのように
事あるごとに戦っているのだけど、
いつだったかだるくて
平日私の昼ご飯を作らせたら…
美味しそうなうどんがテーブルに置かれ、
ひとくち食べたら全部紙で出来ていて泣き、
シカちゃんは笑い転げ、
「自分の宝くじは…」
それを再度肝に命じ、
私は魔物の中でも特に鬼祓いに長けた
能力者ではないのかと、
気づきはじめていた。
3.秘密の娘
私は香田葉月17歳高校生。
私には奇妙な事が、
思い返せば4歳くらいから年に1~2回は
必ず起こってると思っていて、
家族に心配させるなと戒める
先生の声に従い、
長年心の中に留めているけど、
奇妙な事はこの猫、
食事を与え過ぎで、
でっぷりした体になっている、
名前は先生。
だいたい寝てるが
この猫は魔物で、
私の夢に現れては特別な授業を
してくれるのだ。
何の授業かと言えば、
・暗闇の見分け方
・危険を察知したらすかさず逃げる方法
・秘密を秘密のままにしておく心構え
・良い人にはお礼を
・首の後ろから顔を洗う方法
はじめのうちは猫が猫として生きる方法論で
面白おかしく教えられ、
あたしは猫じゃないから、
先生が実演するのを楽しく見ていて、
まだまだ子どもの私だけど、
もっと子供の頃は絵本のような教材や、
人形劇などもあり喜んでいたけど、
もう17の私にはかなり具体的な、
この国では買うことの出来ないピストル、
ライフルなどのパーツ毎の名称や組み立て手順と扱い方。
地雷を踏んでしまった時の対処法…。
「どこで使うのよ?怖すぎ…」
悪い人と良い人を見分け方や、
男性と上手くお付き合いする方法とかもあって、
簡単に噛み砕いて言うと、
クソ男や悪いオスに惑わされる事無く生きるかで、
本当のナイトを見つけなさいという尊い教えに、
大変勉強になったのだけど、
こんな授業が夢とは到底思えず、
起きてる時に先生に質問しても無意味で、
餌で釣ろうとしては、
ただただ太くしただけと言うオチ…で、
あたしがこの子を飼う事になったのは、
あたしの住んでる地域は、
動物の譲渡会が盛んに行われていて、
当時たまたま両親と見に行ったの。
たくさんの動物を可愛いと見回していたら、
子猫だった先生があたしに話かけてきて、
「僕は君のご先祖たちから、
君を見守るように言われてここに居るんだ。
君がここに来るのは決まっていたんだよ?
だから僕を連れて帰るように、
パパとママにお願いしてね
じゃないと恐ろしい事が起きるんだ」
幼いあたしは猫が喋ったと大騒ぎだったけど、
両親にも周りの人にも聞こえて無くて、
その時は後ろ髪引かれるまま帰宅したけど、
それから一週間ほど両親に駄々をコネまくり、
ついに根負けした両親。
話しかけられた瞬間から決めていた名前の先生を
お迎えしたが13年前。
もうかなりのお年で、
そろそろ旅立たれるのではないかと
毎日ヒヤヒヤ…。
そして現在に戻り眠りに就くと
ついに何度か目の授業が開催され、
先生が夢枕に立った瞬間、
ここぞとばかりに質問していた。
「これって本当に夢?」
「ん?」
「先生は魔物か何かなの?」
「んんんん~
次の段階へのステップアップカリキュラム
スケジュールについては君が18歳になったらと
決められてて今はまだ時期尚早。
出来ないね」
「スケジュール…
年齢によって段階を追ってる?!
次は18で開放?
そのカリキュラムをこさえているのは
だーれなんです?
いったい何歳までこの授業がっ!」
「ん~まぁいいか一つだけ応えよう。
18で終わるよ」
「えぇええええ~
もう会えなくなるの?
先生お迎えが来るの~ダメダメダメやだ~」
葉月は猫先生を抱きしめ別れの妄想に
涙ぐんでいたが、
「…心配してくれてありがとう…でも、
会えなくなるなんて事は無いよ。
むしろ…………
さぁ今日の授業を始めるよ教科書開いて~
今回はこの長かった授業の集大成だから集中して聞くんだよ?
試験もあるし試験は全て~」
「逆?今以上にって意味ですよね?
どーいう状況??」
先生はかなり含みを持たせ授業は始まり、
今回はなんと初めての試験が行われるとの事で、
待ってたらふたりの男子が現れ、
椅子に座り挨拶してきた。
「こんにちは僕はAと申します」
Aはきっちりした七三分けのメガネ君。
「はい君かわうぃいいいねぇ俺はBだぞ宜しく」
Bはパリピな陽キャ。
「これなんの試験?」
葉月が聞くと、
「これは、葉月に人を見る目が養われたかの試験です。
制限時間10分。
1人は悪い奴です。
果たしてどっちかな~ではスタート!」
先生はストップウォッチを押していた。
「んん~何をしたのかは分からないけど、
それは聞いてもいいの?」
「まぁー簡単な話、
いたいけな女子に三股をかましたのは
どっちでしょーです」
「なにぃいいいい!
二股でも酷いのにこれは許せない
断罪すべき事案!!
そぉ言う事なら真剣に真剣に
あたしが教わってきた
過去の教えから弾き出すなら…」
葉月は腕を組みふたりを交互に見定め、
「あー答えはA君です!」
ものの数分で答える女子高生17歳葉月。
「早い!いいのか?ほほぅで、根拠は?」
教科書を見てる先生は顔を上げほくそえんでいる。
「簡単過ぎるよこんなの」
葉月はAの髪型をぐちゃぐちゃにし、
メガネを取るとBに渡しかけてと即し、
「本来ならこれが…」
Bがかけようとするのを一旦止めその顔の横、
フレームが当たる部分を指差し先生に見せていた。
「このメガネは本当に度が入っているので、
長年かけている人にはこめかみ辺りに
フレームの食い込みがあったりするんです。
ほらここここ、
しっかりメガネフレームの跡ある。
でも、Aには無い。
本当のメガネ君はBで、
小賢しく入れ替わったんでしょ?」
すると2人はパッと消え、
Aの席に葉月の大好物イチゴ大福が、
皿の上に置かれていた。
「正解!お見事です。拍手~」
先生の拍手はボフボフな音だった。
「やったーこれ食べていいの?」
「いいよ」
「ありがと。正解の褒美は格別美味いね~
お茶もください」
「人を見るテストはまだまだ続きます。
次の報酬は休憩も兼ね最高級お抹茶です。
喉を潤わせられるよう頑張って」
「もぐもぐ。はい!」
二口ほど口を付け皿に戻すと、
次の質問からだんだん難易度が上がり、
数十個の問題を片付けたあと、
究極の問題が出てきていた。
「今からそのステージに色んな人が出てきます。
でもどれかが魔物や怨霊の類で、
制限時間などは無く…
即答えて正解が無いと喰われ地獄行き…
いいですか?」
「うわぁあああちょっと待って、
何それきついー。
喰われるって本当に…試験でしょ?
4ぬの?!
まじなのーーー!
嘘ぉおおおおおおお」
「その質問には答えないよ…
葉月の心が決まったら合図を。
しかもこの試験が終わらない限り
この夢からも覚めない…
覚悟して」
「ぃいいいいいきなりそんな事。
まだまだゆっくりでいいじゃん。
18までまだだいぶあるし。
今日はお開き!」
葉月は必死に願ったが、
「いや実はね君があまりに正解を連発するので
最終設問になったんだよ。
このあとはもう人当て関連の問題がほぼ無いんだ…
とても喜ばしい想定外の出来事…
僕はドキドキしてる…
もう言っておくね。
言えない時のため…
葉月。
君に会えて幸せだった。
僕の事、
こんなに愛してくれてありがとう。
さようなら」
猫先生の目から大粒の涙が零れ、
葉月もオイオイ泣いている。
「グスグス…
あ~う~ぅ受けるしかないの…」
「うん…」
「猫先生本当にあたしの前に現れてくれてありがとう。
これに正解したらあたしはきっと、
魔物祓いとかするようになるんでしょ?
そう云う定なんでしょ?
だからこの世にいる
魔を嗅ぎ分けろって訓練を永遠に…
分かった…
あたしが三つ数えたらスタートです!」
「分かったよ…」
先生も両手を握りしめ祈りの体制になっていた。
「いち…にい…さん!!」
ついにカウントされ、
ステージ左から右へ人々が流れはじめると、
そしてなんとその人らは皆、自分、
葉月だった。
葉月が次から次へと流れている。
「何?!なんなのこれー。
何、何、何~~~~
意味がわからないよぉおおお」
混乱する女子高生、
「私しか居ない!」
思わず口走ると、
彼女の意識は遠のいてゆき、
ボフボフな音が微かに聞こえていた。
しっかりと目が覚めた葉月、
すると自分の体の上で先生が寝ていて、
頭を撫でると、
「うにゃぁ」
寝返りを打ち転がって行き、
「か、帰ってこれた…
自分が正解だった…
あたしは悪霊なの?!
そうなの?
そ~言う事なの…?!
んんんんん…
そうなんだね…
なんとなく分かってたけど
かなりショックで…凹む…」
「おはよう」
ギョッとし声方を見るとなんと、
自分が自分の勉強机の椅子に座っていて、
1番好きな漫画の1番好きな展開の13巻を読んでいて、
「うわあぁあああ悪霊退散!!」
跳ね起きた女子高生は腕で十字を切るが、
それはあの必殺技にしか見えなかった。
「夢から出てきたのかー?!
祓い方はまだ教わってないぃ~!」
慌てふためき冷や汗ダラダラで声も震え、
「安心しなさい味方。
あたしはあなたのとても心強い味方。
名前は適当に付けてね。
じゃー以後宜しくぅ。
ねぇ冷蔵庫にいちご大福まだあったよね?
持って来て~」
「味方?!
そんな事信用出来ない!
しかも、あたしはパシリではなーぃ!
自分で取りに行けーでも、
いちご大福は絶対渡さない!!
あ、違うぅううううそうじゃなくて、
味方の証明しなさい悪霊!」
ベッドから飛び起きいきり立つ葉月。
「んんん~あたしがもし魔者なら、
とっくに取り憑いてるか、
喉元引き裂いてるし、
こんな穏やかに会話してくる相手が
悪霊なはずないじゃん。
まぁ謀ってる悪魔かもだけど」
「悪魔~お前悪魔なのかぁああああ~」
ますます凄い形相でもうひとりを睨む葉月。
「先生そろそろ猫のフリ止めません?」
もう一人が先生をひょいと抱きかかえると、
「猫はいいぞぉ式神。
何と言っても何もせずゴロゴロしてるだけで、
配下の者たちがせっせせっせとご飯を持って貢いでくれるし、
定期的に入れてもらえる風呂が最高なのだ。
で、葉月よ。こいつは敵じゃないわしが保証する。
これでいいだろう?
お前にはまだ教えなきゃならん事が
たくさんあるうちの
奥義中の奥義のこいつは式神。
詳しくは次の授業で!」
先生は言い終えるとすぐまた猫になり、
式神の膝で丸くなっていた。
「わぁぁぁわ初めて先生がリアルに喋ってくれたー
凄いすごいすごぃ~分かった納得したよ。
でもなんであたしのクローンなの?」
どっと疲れた葉月はベッドにヘタれてしまい、
「簡単だよ?
あなたは今後もっと忙しくなる。
その時私が代理で大活躍。
あたしはあなたと一部を除き
まったくの同一人物、
記憶も同じ。
あなたが願うだけで出たり引っ込んだり簡単」
「えぇええええこれは学校サボり放題ですか!」
目をキランキランに輝かせている葉月。
「ノンノンそれは駄目。
私利私欲に使おうとすると、
あたしはそもそもただの紙。
すぐボロボロのゴミになるから
要注意だよ」
「えぇええええええ…(ちぇっ…)
悪霊退治に私が席を外してる時の
代替え品って事だね。
でもねあたし魔物なんかと対峙したくないよ。
先生との授業は好きだけど、
本当の戦いなんかやだよ…
あなたが代わりに…あぁ…そうか…無理…
壊れちゃう…」
「そ~言う事でーす。
あなたの本気があたしなのです」
「わ、分かったから少し色々試していい?
ちなみに何人まで出せるの」
「あーそれいいね。試してみてよ」
「うん。増えろ~もう1人増えろ~
3人でもいいよ~」
すると目の前の式神はボロっと崩れ消滅し、
もう一度出てきたが、
ボッチに変化は無かった。
「無理みたい」
「まだまだ修行がかな~
当人のあたしでもそこは良く分からない。
先生に聞いて」
「うん。じゃーとりあえず今日は下げるねっとその前に!」
「何?」
「命名。あなたの名前はキミちゃんにします」
「キミちゃん?
ふふっ。ありがとう」
再度キミちゃんが消えると、
先生は部屋のすみで、
自動給水器から水を飲んでいた。
私、香田葉月は長年の英才教育で
魔物を狩る何者かになりそうだけど、
未だかつて、
やばい状況に出くわした事はないけど、
もし何か異変を感じそれが脅威となるなら、
立ち向かわないといけない定が
あたしを形作ってると本日、
本気の確信に至り、
怖くてたまらないけど、
魔法みたいなキミちゃんも
魔法の猫先生もいるし、
なんとかなるだろうなーと
高を括っています。
4・秘密の家族
香田家族にはそれぞれに大いなる秘密があり、
彼らの活躍は誰にも、
身内にも知られる事なく深く速やかに進行し、
偽人間の式神たちだけでの家族ごっこと言う
事態にも成りかねず…、
式神たちは自分の主人に無い力は
持ち合わせていないそう、
彼らも目前の誰かが誰かの使い魔であると、
認識は出来ないのだ。
偽の家族が破綻する時、
何が起こるかも分からないし、
敵として捉えバチバチにやり合うとしたら…
何かの拍子に1人づ消滅してしまったら…
主人の危機を察知したら、
式神は主人の元へ飛んで行くだろう。
この家族はすでに二組居て、
どちらも重要な主人公。
まったく同一な二組の本物と偽家族は、
突き出した刃の切っ先の上に
今は僅かなバランスで乗っているだけ…
そしてこの秘密の家族の今後は、
またいつかの機会…
それまでよく眠っておくように。
さようなら。
あーでだ、
家族同士の秘密はわしはもちろん知ってるんだが、
それぞれの思惑には関与しない、
出来ない仕様になってます。
(ナレーション:先生)
了
読んでくれてありがとう!




