予告編 ファインダー越しのクリスマス
これは、最後のクリスマスへの物語。
雪が舞う渋谷の夜。きらめくイルミネーションの下、笑い声が響くカラオケボックス。
「飾りじゃないのよ女は、ゆきさ〜ん!」
悪友の替え歌に爆笑が巻き起こる。
僕、坂田悠斗は、苦笑しながらマイクを握る。
大学最後のクリスマス。
気の合う仲間たちと、最高の夜を過ごしていた。
そんな中、彼女が現れた。
三島咲希。
輝く笑顔に、心奪われる。
密かな想いを胸に、勇気を出して声をかける。
「咲希さん、この後の予定は?」
「ごめん! お家に帰らなきゃ……」
丁寧に断られ、胸が痛む。
でも、連絡先を交換できた瞬間、世界が変わった。
僕の歌う90年代アニメソングに、みんなブーイング。
でも、咲希の笑顔だけが、永遠に刻まれた。
それから一年。
11月30日、東京ビッグサイト近くの水の広場公園。
綿あめ撮影会。
プロカメラマンを諦め、趣味のカメラで生きる日々。
「あ、悠斗さん!」
主宰の新宮寺真彩に、差し入れを渡す。
彼女の言葉が、心に刺さる。
「悠斗さん、やっぱり咲希ちゃんに本当の気持ち、伝えた方が……」
「いや、まだ。彼女の笑顔を守りたいんだ」
咲希は運営CEO。
忙しく輝く女性。
僕の予約リストに、彼女の名前。
ファインダー越しに、恋を切り取る。
「坂田くん、よろしくね!」
バンザイポーズ、優しい微笑み。
シャッターを切るたび、心臓が疼く。
でも、この瞬間が、僕のすべて。
撮影後、彼女が近づく。
「リクエスト撮影も予約したんだよね? 最後?」
「知らない方がいい。それが君のためだ」
冷たく突き放す嘘。
彼女を傷つけたくない一心で。
家路。妹の澪が心配げに迎える。
「兄さん、無理しないでね」
家族の温もり。
父さん、母さん。みんな、僕を包む。
12月1日。街はクリスマス一色。
偶然、咲希と出会う。
「あれ? 坂田くんじゃない!」
飾り買い出しに付き合う。彼女の無邪気な笑顔。
「恋愛はしたいけど、忙しくて……」
「よかったら、僕と」
「冗談に聞こえるけど、ありがと!」
すき焼き定食屋へ。
庶民派CEOの意外な一面。
「高級店はタブー! 金持ちはがめつい!」
笑い合う。
彼女の過去のトラウマを、真彩から聞いていた。
心が近づく。
「お腹空いた? フレンチで!」
「待って! 安くて美味しいとこ!」
そんな彼女が、愛おしい。
帰り道、父さんに電話。
「家族旅行、予約して」
そして、ジュエリーショップ。
秘密の決意。
永遠の愛を、形に残す。
遺言状を書く夜。
涙が止まらない。
「咲希さん、僕の愛を、君に」
12月5日。
家族とショップへ。
父さんたちの涙。
「どんな形でも、息子が生きてくれるなら」
抱きしめ合う。
焼肉バイキングで乾杯。
「今日は悠斗が主役!」
神戸ビーフを頬張り、笑う。
澪の言葉。
「兄さんの想い、ちゃんと届けるから!」
12月7日。
熱海旅行。
新幹線が海を駆ける。
「瑠求ホテル・さざんか」。
温泉街の賑わい。
澪と買い物。
ソフトクリームを分け合い。
「兄妹水入らず、最後だね」
「悲しまないよ。笑顔で兄さんを思う!」
夕食のバイキング。
桜えび、黒毛和牛。
上弦の月が、静かに見守る。
人知れず、咲希が聞いていた……。
12月8日。
大学同窓会。
健児が駆け寄る。
「悠斗! 身体、大丈夫か?」
「来年はないよ」
みんなの視線。
咲希の到着を待つ。
外縁一周ミニ駅伝。
熱い声援。
「頑張れ!」
突然の乱入。
活動家たちに中断。
ハプニング続き。
同窓会後、咲希と二人きり。
ジャズバーへ。
「坂田くん、引っ越すの?」
「海外へ、年明け」
互いの嘘。
涙を隠す優しさ。
クラフトコークハイとカルーアミルク。
ジャズの調べ。
「私の昔話、聞きたい?」
彼女の告白が始まる。
CEOへの道。
幼少期の傷。
安定剤を飲み、僕は微笑む。
クリスマスイブが迫る。
僕の最後の聖夜。
雪降る街。
イルミネーションが、二人を照らす。
咲希の笑顔を守るため。
家族の絆を胸に。
この恋は、永遠に。
ファインダー越しの恋。
終わりなき愛。
~最後のクリスマスに、奇跡は起こるのか?~
2025年12月1日よりクリスマスイヴまで毎日連載開始(各日18時30分予定)。
貴方は愛する人に、何を遺しますか?




