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第七十三話 巨大魔石の行方と、気がつき

ルクリツ公国での採掘現場について、ひとまずの収束が見えてきた今――ふと、私は窓越しに空を仰いだ。

――災害に発展する前に、手が打てたのなら何よりだ。

あの地に滞在していた頃の記憶が一瞬よぎる。そういえば、いたわね、やたらと根暗な世界は全て敵みたいな“悲劇の王子様”……元気にしてるのかしら。また死にたい病気にかかってたりして。いや、別にどちらでもいいし、二度と会いたくは、ない。

などと、どうでもいい思考を振り払いながら、改めて報告書に目を通す。

先日こちらから伝えた確認事項や対処法の提案が、ルクリツ公国側にしっかりと届いたようで、地層調査を含む現地確認が行われた結果、やはりというべきか、現採掘場では通常と異なる地層の混在が確認された。さらに、魔力の波形の測定においても、非常に大きな乱れが検出されたという報告が届いた。

――やはり、巨大な魔石が眠っている可能性が高い。

そのため、ルクリツ側としても、今後の対応について後方支援局としての見解を求めたいという問い合わせがあった。

私たちの立場として明確に言えるのは――「空の魔石に充填するのが一番手っ取り早いのでは」というシンプルな結論だ。とはいえ、それはあくまで技術的な見地からの話であって、国としてどう判断するかはまた別の問題だ。国土の地下に未知の巨大魔石が眠っているとなれば、それに対する権利や利権、政治的な絡みも少なからずあるのだろう。

だからこそ、私はカースとティナの意見を整理し、あくまで“助言”という形で見解をまとめることにした。

巨大な魔石は、現状では採掘自体が非常に危険を伴う。通路の確保や搬出路の構築だけでなく、魔石そのものが露出すればするほど、周囲に魔力の波動が広がり、結果として魔獣を引き寄せる可能性もある。

であれば、安全性を考慮し、周囲に“空の魔石”を設置し、そこに魔力を吸収させることで充填していく方法を、選択肢の一つとして再検討してもらいたい。

また、明記しておく必要があるのは、後方支援局としては既に“災害を未然に防ぐための対策”を提示済みであり、それに従わず災害が起こった場合は、当国の責任範囲を逸脱するものであるという立場だ。今後何らかの事態が起きた際には、外交官や支援部隊の派遣は行わない旨を、明記しておく必要がある。

そして、補足として記した技術情報も添えた。

――巨大な魔石は掘り起こすのではなく、近くに空の魔石を置く。そうすれば、おおよそ半刻で拳大の魔石が一つ充填される。巨大な魔石であれば、その量は計り知れない。結果的に、掘るよりも遥かに効率的である可能性がある。

この提案を文書にまとめ、外交官を通じて正式にルクリツ公国へと送ってもらった。

そして数日後。

驚きとともに、続報が届いた。

ルクリツ公国は、我々の提案を受け入れ、実際に巨大魔石を掘り起こさず、その周囲に馬車一台分もの“空の魔石”を配置して充填を行ったという。

結果――見事に成功。

空の魔石は次々と魔力を吸収し、しかも未だ充填が続いているらしい。現場の技術者の中には「掘るよりこっちの方が効率がいいのでは?」と目を丸くしていた者もいたとか。

……まったく、その通りである。

なにより、巨大な魔石が“動く”こともなく、崩落の気配もなくなり、採掘場の安全が守られたのは何よりだった。

目に見える成果は、心に安堵をもたらす。

私たちの提案が一つの命や暮らしを守ったのなら、それは誇りにして良いはずだ。

空は、今日も穏やかだった。

――何事もなく、世界が少しでも静かに前へ進むように。

そんな願いが、そっと風に乗って、どこかへ届いていきますように。


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