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第四十五話 ――その場に立ち、声を上げる者

「内部抜擢――あれって、ずるくない?」「なんであの三人が選ばれたの? 募集もまだ始まってないって聞いてたのに…」

そんなささやきが、学園内の至るところで渦を巻いていた。後方支援局という新たな機関に、セレガル、アレクサ、タイラーの三人がすでに内定している――その知らせは、まるで火のついた噂のように瞬く間に広まったのだ。


学園内の空気が妙にざわついていると知ったセレスティアは、すぐに学園長の元へ足を運び、全校生徒を集めての説明会を提案した。人の心は曖昧な情報に流されやすく、それが誤解と反発を生むなら、最初から正面から向き合うしかない。


そして当日。大広間に生徒たちが集まり、張りつめた空気が漂う中、壇上に立ったセレスティアは、堂々とした態度で挨拶を始めた。


「皆、お集まり頂きありがとうございます。わたくしこの度、後方支援局の局長に任命されました、王立学園 高等部特別科一年、セレスティア=サフィールと申します。」


彼女は、抑揚のある澄んだ声で続けた。


「まず、後方支援局とは何か。そして、なぜ今その設立が求められているのかについて、明確にお伝えいたします。支援局は、災害支援、辺境地への補給、そして外交的な現地対応など、国の根幹を支える“後方の柱”となる部署として新たに設置されるものです。」


背筋を伸ばし、視線を会場の隅々まで向けながら、セレスティアは語る。

「主な活動は四つあります。一つ、現地調査。二つ、行政補助および資料整理。三つ、物資輸送や支援の調整。四つ、多国語による交渉支援です。」


彼女の言葉は静かだが、芯があった。言い訳でも正当化でもない、ただ事実と真意を伝える声。


「今回先に選ばれた三名は、先生からの推薦により、事前に軍部および騎士団の聞き取り調査した書類の整理をお願いしました。推考を経て、後方支援局の初動要員として必要と判断された者たちです。それは偶然でも、贔屓でもなく、適材適所の判断です。」


ざわつきが一瞬止み、静寂が降りた。


「ですが、今回の件で皆様に不信を抱かせたことは、わたくしの不徳の致すところです。よって、あらためてこの場で“後方支援局の初期募集”に関して正式な説明と募集を行います。」


空気が変わったのを感じた。

「支援局では現在、“二つの部門”で人員を募っております。」


一つは――事務方。

「制度設計、報告受付、予算管理、記録保全など、裏から支える屋台骨です。数字と現場をつなぎ、正確かつ迅速な運用を支える力が必要です。」


もう一つは――現地調査班。

「災害地や辺境地域、他国との交渉地に赴き、現場の声と状況を読み取り、整理し、必要な支援を明確に伝える役割です。多言語能力、冷静な観察眼、そして地形や風土を読む力が求められます。」


「この局は、ただの事務仕事でも、派手な戦場でもありません。人の命を支える“見えない盾”なのです。」


沈黙のあと、セレスティアは一歩、前に出た。


「ここで、“自ら名乗り出たい”という意志ある者がいれば、今すぐ壇上に上がってください。自己紹介をし、希望部署を明言の上、面接の準備をしていただきます。推薦状と成績資料を後日ご提出ください。」


だが、広い大広間に静けさが戻った。誰も動かない。


「……ご質問等あれば、挙手をどうぞ。」


誰も手を挙げない。


「ないようですので、今後この件に関しての個人的なご質問はご遠慮願います。希望者は正規採用試験をお受けください。」


そのまま彼女が壇を降りようとしたとき、ひとつの声が響いた。


「……はい!」


きゅっと全身をこわばらせながら、壇上に現れたのは、一人の少女。

「高等部専門科三年、ミオナ=バークと申します……魔法薬学と魔獣の研究を専攻しています。後方支援局に……ぜひ、加わりたいです。わたしも……誰かのために、力になりたいです。面接……お願いします!」


震える声ながらも、はっきりと伝えられた意志。

その瞬間、まるで心を動かされたかのように、続けざまに壇上へ数人が立ち上がる。


「僕も……」「私も!」


誰かが動けば、空気は変わる。

セレスティアはその姿を見つめ、心の奥に静かに火を灯した。


ここに――本当の“始まり”があった。


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