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そこは意外にも和室だった。

目標の1PV達成しました。わーい

俺は死んでしまったんだろうか。

数分前、目が覚めると大騒ぎになっていた。

俺は開口一番「花結となつめは!?」と叫んだが無視された。

人が集まっている場所を見ると二人はいた。

二人は床に倒れていて、看護師か医者をやっていると思しき手際のいい数人の女性に、二人は心臓マッサージや人工呼吸などの手当てを受けていた。

二人に「大丈夫か!?」と何度も声をかけたが返事はなかった。

周りからの反応もなかった。

手当てをしている女性に「あの!!友達なんです!!二人は大丈夫ですか!?」と声をかけたがやはり返事はなかった。

二人の手当てに必死で周りの人間は俺にかまっている暇がないのかと思ったがそんなわけはない。

俺も手当てされる側の人間のはずだ、見向きすらされずなぜフルシカトされるんだ。

なにかがおかしい。

あたりを見回すと二人のいる反対側にも人が集まっていた。

目の前にトラックに吹き飛ばされたであろう俺が店の床に横たわっていた。




何度か夢の中で死んでしまったことがある。

だからこれも俺の夢かもしれなかった。

仮にだ

仮にトラックがこちらに突っ込んできたこの記憶が正しいものだとしても。

血を流して息をしない俺の「体」が床に横たわっているのも。

店にあった姿見に俺の姿が映っていなかったとしても。

これが現実なのだとしても。俺は一時的に幽体離脱しているだけかもしれない。

しばらくすると救急車がやってきた。

同行してみる。

ところが病院に到着しても腰が抜けたみたいに立ち上がることができず、やっと立ち上がれたと思ったら車内には誰もいなくなってしまっていた。

物理的なものに触れないんじゃドアを開けることもできない。

困ったと思ったが、壁は通り抜けることができた。

昔見た主人公が幽霊の映画みたいに、「通り抜けたい!」と強く念じて思い切り突進したらできたのだ。


病院をうろうろしていると手術室が集積しているゾーンを見つけ、壁抜けで探して自分の「体」の居場所を見つけた。

俺が病院で緊急手術を受けている間、花結のいる手術室を見つけた。

あいつが一番重症だった。なにせ窓に一番近い席だったのだ。

俺は友達が手術を受ける姿を見て初めて血の気が引いた。

医師も花結の体を見ながら絶望的な表情を浮かべていた。それを見て俺は絶望した

別にガタイもよくないが変に度胸のある俺はさっきまで妙に冷静だった。

だが花結のこの姿を見て俺は頭がぐちゃぐちゃになりそうだった。

まぁ俺の体のそこかしこがぐちゃぐちゃだったので脳もそうなっていても無理はない。

そう冗談を考えて落ち着...


いや、実際そうだ。

あれだけの衝撃を受けてむしろ頭にダメージがないはずがなかった。

ではどうやって今俺は"考えて"いるんだろう。

大昔、サッカーボールに乗ってひっくりかえり、頭を強く打ったことがある。

すぐに目は覚めたが半日以上意識はもうろうとしていてまともに考えることができず幽体離脱もなかった。目の前にあるものが便器なのか、お粥が入った鍋なのかわからずそこかしこに一日中嘔吐していた。

さっきの出来事で俺の頭はその時以上にダメージを受けているはずだ。

本来であれば脳がそんな状態であれこれと思考ができるはずはない。

今、俺の体は自分には見えているし実感として自分の体を体感できる。

だが壁は通り抜けられる、手は物をすり抜ける、誰にも認識されずときた。

つまり体はあってないようなものだ。

だけど脳はなぜかしっかりと機能している。

どういうことだ。


考えを整理しよう。


まず今の状態について考えてみる。

仮に幽体離脱があるとして、仮に俺がその状態にあるとすれば。

これも仮にの話だがおそらく今の幽体離脱の状態の俺と手術を受けている俺とは少なくとも脳の部分は繋がっているのだと思う。

つまり遠隔で脳が働いているクラウド状態なのではないかと思う。

しかし、たとえ命と脳に別状がなかったとしても今の俺の体の状態からして脳が機能できる状態だとは思えなかった。


「俺は今、どうなってるんだ...」

できることならいっそ考えるのをやめたい

頭がおかしくなりそうだ。変なことを考えるんじゃなかった


不思議な出来事というのはあるものだ。

どれだけ現実に沿って考えても不可解で、奇跡的な出来事もある。だから考えても仕方ない。

散歩しようと思う。


花結の手術室を出ようとしたとき「厳しいな...」と小さく医師が呟くのを聞こえなかったことにしてその場を後にした。

ほかの手術室も見てみる。

いくつか見てみたがなつめはいないようだ。

おそらく他の病院に運ばれたんだろうな。

あいつには生きててほしい

死ぬようなタマじゃない。明るくて死から一番縁遠そうなやつだ。死ぬわけがない。


手術室があるゾーンを出てまず外に出てみることにした。

病院の横側には大きなが池があった。

その沿道にはもみじが植えられていて暗くて良くは見えなかったが街灯にあたって紅葉しているのが見えた。

秋は消えたものだと思っていたが、確かに秋は来ていた。

道に枯葉が多く積もっていて秋が去ろうとしているのも見えた。

秋くん来年はもう少しゆっくりして行ってね!!

俺たちに来年はないかもしれないが。


池の周りを一周した後病棟に戻った。もう夜の11時を過ぎていた。病院の消灯時間は早い。

当然誰も起きてはいない。大声を出したら病棟のビル中に声が響くだろう。

病棟の明かりは最低限で暗かった。

その分廊下の突き当りにある細いスペースに並んだ自販機の光はとてもまぶしかった。

しかしなぜか優しさを感じる光だった

この雰囲気好きだなぁ...。


夜の病院は嫌いじゃない。

この病院ではないが俺は昔体が弱く何度か短期で入院したことがある。

深夜にベッドから抜け出して病院を歩くのが好きだった。

静かで暗く、落ち着いていた。病院の空気も不思議と体になじんでいるような気がした。

もっとも今までに大した怪我・病気にかかったことがないからそんなことが言えるのだ。

目が覚めて次にまた救急車で運ばれてくるようなことがあれば憂鬱とした気分で過ごすことになるだろう。

目が覚めればの話だ。


幽体離脱から何時間経つだろうか。

もうすぐ朝になりそうだ。座る気にもなれず、ずっと歩いていたがさすがに疲れてきた。

散歩の途中、もしこれが夢なら頬をつねれば痛くないはずだと思い、恐る恐る思い切りつねると痛かった。

夢じゃないみたいだな


自分の手術室にもう一度行ってみると親と妹弟が来ていた。廊下の壁に置いてあるソファに座ってみんな重苦しい雰囲気で下を向いていた。思わず声をかけたが当然聞こえるはずがなかった。

家族の沈痛な表情を見るとしばらく足に力が入らず家族のいる方とは反対の壁に寄りかかった。

しばらく家族のほうを見ていたが少しすると空が明るくなり始め、そして医者が来て話し始めた。

俺はどうやら持って数日、明日生きているか怪しいらしい。

父親が花結となつめのことを聞いた。二人とも最近は家によく来ていて両親ともよく話していた。

二人について聞くのは当然だが、聞いてほしくはなかった。胸がざわざわする。

医者は苦虫を嚙み潰したような顔をしていたがしばらくして口を開いた。

「花結さんはつい先ほど亡くなりました...。山崎さんも先ほど搬送された病院から連絡があり...亡くなられたと...」


なんでだ。

なんでこうなった。頭が働かない。うまく考えることができないし、もう終わりでいいんじゃないかと思い始めた。

できることならもう死んでしまいたい。二人がいないならそれでも良い。

「ああああああ!!!!!!!」

気が狂ったように叫び続けた。

床をのたうちまわった。

息ができないほどに苦しかった。

叫び声は当然誰にも聞こえていないから止められることはない。だが誰にも慰めてもらえない。


しばらくして少しずつ落ち着きを取り戻してしまった。

まともに考えがまとまるほど現実が見えてきて余計に苦しかった。

それならいっそ狂っていたかった。


今俺は幽体離脱という現実からかけ離れた状況にある。

なのにだんだんと現実の直視を促されているようだった。誰にだろう。


「私です。」 神は言った


俺は気づいたら日が昇りかけた病院の廊下ではなく和室にいた。しかもこたつやテレビが付いている現代的な和室だった。


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