序
全ての人々に
全ての心に
全ての始まりに
この物語を捧げます
「光? そんなもん信用するなよ。光があるってことは、その周りはとんでもないくらい真っ暗って事なんだぜ」
世界は未曾有の求神時代。人々は神の存在を認め、人間の闇と欲望に支配された狂乱の時代の中で、自己救済の術を神に求めた。そしてそれだけでは物足りなくなった民は、精神論的な神ではなく、ある実体としての神を求めるようになった。そう世界は、いわゆる『神の子』の存在を認めていたのである。騒動の発端は、5年前に冒険家イーストン・ジャンキーが15年間の旅の末に辿り着いた大秘宝『クラルテ』。しかし、ジャンキー一行は、祖国にそれを持ちかえることはなかった。そしてそこには肝心のジャンキーの姿はなく、一行は皆何かに脅えるような顔でブルブルと震えていたという。15年ぶりに祖国の土を踏みしめた一行を待っていたのは、国民の手厚いもてなしでも、国王からの賞賛でもなかった。待っていたのは連邦からの処刑通告のみ。ジャンキーの仲間達は、牢屋に幽閉され、 帰還後わずか3日で処刑された。どんな高価な財宝をかき集めても引き換える事の出来ない大秘宝『クラルテ』、それは多くのものの心を魅了した。そして、世界は狂乱の渦へと呑み込まれていったのである。腕に自信がある者、頭のきれる者、病弱な母親を持つ者、己の欲にとりつかれた者、ありとあらゆる理由で、ありとあらゆる人々が、大秘宝をいち早く自分のものにしようと旅に出た。しかし未だ辿り着けた者はいない…