序章 その8 トラブルと邂逅、そしてトラブル
長めになっちゃった、、ま いっか
一通り回った感想は、スラム街はさして治安が悪いわけではなかった。ということだ。背は低いがちゃんとした家もあるし、子どもたちも笑顔で遊び回っている。少し汚れている雰囲気が感じられる程度だ。あと、住民たちが少し肉感がないというだけ。(、、質素な人たちが多いというだけだな。どこがどうスラムなのかがわからん)なんならこっちの世界の住宅地と比べても差異がないレベルだ。そう思いながら歩いていると、家と家の間の路地に、二人して女子を壁に押さえつけているのが視界に写った。その直後、ノールックで接近し、二人の服の背をつかんで、真上に放り投げた。殴り飛ばさなかったのは、もし血が飛び散ったとき、女子に血が飛び散ることを考慮してのことだ。「大丈夫ですか?レディ」と彼女の前で片膝を付き、手を差し伸べた。「は、はひぃ」そういいながら、彼女は俺の手を取る。その間30秒。「行きましょう。貴方はここにいるべきではない。」「わ、わかりました」俺が歩き出すと、そう言って彼女もついてくる。そのまま路地を出て、自分が来た道へともどり、右折する。そして、俺は彼女の耳を塞いだ。その直後、何かが鈍く砕ける音が聞こえた。「ひゃっ?!な、何するのです!」「いえ、何でもありません。貴女の耳に入れるべきでない音が聞こえてきただけですので」そう言い、手を軽く引っ張る。「、、?ま、まあ、いいです。ありがとうございました。もう結構ですので」なんとも頭の硬い貴族様だ。「何言ってるんです。このまま繁盛地まで同行しますよ。ここは些か治安が悪い。それともまたああ言う目に会いたいですか。」「ウッ、、!?そ、それは、、」「それでもいいというのなら去ります。強制する私の方も悪かったです。では」「あっいえ!、どうぞこのまま同行していただけると嬉しいです!」「、、あなたがそう言うなら。」貴族が彼女以上に頭が硬いのだとしたら、先が思いやられるな。
「ありがとうございました。えーと、、こ、この恩は忘れません」人に礼をするのは少々なれないのだろうか。少し言葉が、、辿々しいな。「いえ、女子に礼を尽くすのは男のマナーですから。」本当にそうなのかはしらないが。
彼女と王城のすぐ南にある通りで別れると、まるで機を伺っていたかのようにエドが現れる。「よぉ、どうだ、良かっただろ?」「、、ああ、よかったよ、エド、、ということは此処がギルドセンターか」「ああ。もしかしてわからなかったのか?」「申し訳ない」。眼の前には、浅緑の銀行っぽい建物が建っていた。正面玄関の脇に、観葉植物が置いてある。立派な建物である。
建物に入ると、ベルが鳴る。
入口が広いおかげで、かなり身長の高いエドでも入ることができる。「こんにちは!なにか御用ですか?」。窓口のようなところに行くと、容姿端麗な受付嬢が迎えてくれる。「わしの弟だ。こいつの冒険者登録を頼む。」「はあっ!?」いきなりのジョークについ慌ててしまう。おいおい爺さんよ、もう少しまともな物言いはできんのかね。「クスッ、エドワードさんったら、、冒険者登録ですね。お名前を言ってください。」。さすが美女。笑いを漏らす姿も絵になる。「タクトです」「タクトさんですね。、、一応ですが、レベルをどうぞ。」白紙に素早くペンを走らせながら尋ねてくる。「62です」「62ですね、、、え?」タクト自身のレベルを伝えて、3秒ほど経って、初めて彼女に動揺が走る。「すみません、もう一度言ってください」「62です」。そしてまたもや沈黙が続く。「、、すいません。ちょっと診療所へ行ってきます。耳に支障があるようですので」「へぁ?は、はぁ、、お大事に。」。大丈夫なのだろうか。「では」と、そう言い残して窓口の奥に去っていく彼女に、一抹の不安を覚えた。そしてエドを視界に入れようと、周囲を見渡す。「、、いねぇ」。そう、いないのだ。建物の中ならとても目立つあの巨体が。「、、、厄介事の匂い、だな」。
しばらくして別の受付嬢がやってきた。「おまたせしました。では、冒険者登録の続きをしましょう。」「あ、はい。」「えーと、、レベルはいくつですか?」「62です」すると受付嬢が「、、へ?」と間の抜けたような声をもらす。仕方がないのでもう一度言っておく。「62です」すると、受付嬢は少々悩んでから「少々お待ちください。上司へ相談してきます。」と言った。「あ、はい、わかりました」。今度は上司に相談するようだ。しばらくあたりを見渡していると、上司に相談すると言って去っていった受付嬢が、何やら190cmはありそうなほどの巨人を伴って戻ってきた。上司「、、ちょっと防音相談室へご同行いただきたい。」「わかりました」。こっちにも厄介ごとの匂いが、充満していた。
〜防音相談室〜
そう書かれた部屋の中に入り、ふたりとも席につくと、「おい貴様、レベルが62というのは本当か」「はい」。なんだ、またそれか。と、少々呆れながら答えた。「、、仕方がない。鑑定士を呼ぶ。それであなたの発言の真偽がわかるだろう。」「、、はあ、、」鑑定士なんてものが存在するんだな。そんな呑気な感想を抱きながら、しばらく待っていると、右にモノルクをかけ、ちょび髭を生やした、(上司と比べたら)少し小柄な初老のおじいさんがやってきた。この道長そうだ。すると老人が、「それではいきなりですが、始めますぞ」といってきた。「はい」と、返事をすると、「〈其の者の形を表せ、其の思惑を露わにせよ。その眼は真を写し、その口は真実を語る。〉フルステータス・アイ」と、慣れた口調で詠唱を紡いだ。最後のはいるか?と思ったが、忘れよう。詠唱を紡ぎ終えたとともに、机に紙を叩きつけ、「謄写」と、静かに、かつ力強く言った。すると、その紙に、文字が現れた。
橋本 拓斗 64,Lv ステータス傾向:騎士型
膂力:3071 防御力:8691
俊敏:1821 魔力:5032
跳躍:1428 魔力量:5217
魔法
(文字化けしている)
衣服・装備
(文字化けしている)
「、、!前代未聞だぞ!」「ほっほっほっほ、、ですなぁ」二人共驚いたようなリアクションをしている。まあ64なんてレベルで驚くようなことなんてないと思うが。
しばらく上司と問答して、やっと冒険者登録が終わった。冒険者証というものももらうことになった。彼女曰く、「これを無くしたら、窓口から金の引き出しが出来なくなり、報酬ももらうことができなくなる。なのでくれぐれも気をつけるように」ということなのだそうだ。保険証みたいな感じになる。内容は
タクト 冒険者ランク:12
達成済みクエスト
・無し
(箇条書き)
進行中のクエスト
・無し
(箇条書き)
欲しがっていたおもちゃを手に入れたときのような眼差しでそのカードを見つめていると、不意に上空が裂けた。「、、これはやばいな」そう言いながら、まずは何をするかを考えていたら、『警報発令!警報発令!冒険者は直ちに南広場に集合!市民は王城へ避難してください!繰り返します、、』と、街灯から音声が鳴った。(これはサイレンの役割も兼ね備えているのか!)街灯の機能に驚きながら、南広場に向かおうとするが、「南広場か、、どこ?」。彼はこの街に来たばかりだった。なぜ今なのかと、裂け目を呪いながら見ていると、巨大な『動物の足』が、裂け目から覗いた。間違えても偶蹄目のものではない、明らかに獰猛な肉食動物が持つ足だった。「、、間違えても守護神じゃない、か、、SARA」そう言いながら、家と家の間を縫うように飛び回り、屋上に上がった。「、、やはりでかい。足だけでも30mはあるな、、レイドクエストをソロでクリアするみたいなことになりそうだ。」その足の大きさに感嘆しているが、そんな場合ではないということにも気づく。「SARA、リセット、その後に〈怪力〉と〈俊敏〉、2つずつセット」《、、完了》「、、様子見だな」。どこに落ちるかわかったものではない。闇雲に走って逆に標的から遠ざかることになるかもしれない。「、、まあ大抵は落ちる前に仕留めるんだろうが、、そうも行かない」そう言いながら、俺は屋根伝いに駆け出した。




