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短編とかその他

無力な勇者

作者: リィズ・ブランディシュカ



 遠くから狙いを定める弓使いは、嘆いていた。


 残りの矢は一つ。


 九つあったチャンスは、無駄になった。


「なんて強い勇者なんだ」


 弓使いは予感していた。


 きっと次の攻撃も無駄になると。







 死体溢れる場所。


 戦場で立ち尽くす勇者がいた。


 彼は剣を振る事もできない。


 その場から移動する事もできない。


「僕は無力だ」


 心がうちのめされていたからだ。


 体を動かす気力がなかった。


「仲間を失う勇者なんて、仲間一人守れない勇者なんて、勇者じゃない」


 つい少し前にこの戦場で、勇者は敵と戦った。


 敵は全滅し、勇者も生き残った。


 しかし、多くいた仲間は全て死んでしまっていた。


「なんて無力なんだろう」


 勇者は嘆く事しかできなかった。


 勇者は無力ではなく強い。


 遠くから狙う弓を今も、無意識に叩き落した。


 けれど、勇者は無力だと嘆く。


 そんな力は意味がないから。


 彼にとって、力ある強い勇者とは「大切な人を守れる勇者」だから。


「僕は無力だ」


 心が折れた勇者は、もう剣を振る事ができない。


 自分だけしか守る事ができない。


 空を貫く音がした。


 抵抗しなかった勇者はそれに貫かれて死ぬはずだった。


 けれど強い風が吹いて、その矢を防いでしまった。


 その後、遠くで矢の尽きた弓使いが逃げ出していく。


 ぜんぜん強くなんてない。


 弱い勇者から逃げ出していく。



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