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【完結】心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫
お試しの居場所・後編

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66/66

66 延命の愛も甘い幸福も手放せない。



 キスの雨が止む。

 恐る恐ると目を開けば、とろっとしそうな熱を込めた眼差しで、私を見つめていた数斗さんがそこにいる。


「悪戯がすぎたね。ごめん」


 優しい声をかけて、右頬を撫でてきた。


 そこで、トーストが終わった知らせの音が鳴り響いたので、数斗さんは「食べようか」と言うと、私を起き上がらせてから、先に寝室を出ていく。


 髪を整えた私は、右ポケットから、例のジュエリーボックスが落ちていることに気付いて、慌てて、しまい直す。

 右ポケットでよかった……。知られるところだった。

 胸を撫で下ろしてから、私も寝室から出る。



 カウンター上に、とろりとしたチーズトーストパンには、レタスと生ハムを上に添えられて、持ちやすいように切ってもらって、盛りつけられてたその皿が置かれた。

 数斗さんと肩を並べて、椅子に座って、いただきます、と食べる。


「ん。美味しいです」

「よかった。あ、カフェラテいる?」

「はい、お願いします」


 色んな種類のチーズとレタスと生ハムのパンに、濃厚なカフェラテ。美味しいランチ。

 頬杖をついて、数斗さんもサクッとかじっては食べる。私の食べる姿を、横目で眺めながら。


「そんなに見られると食べづらいのですが……」

「ごめん」


 苦情を言えば、数斗さんは私の左耳に髪をかけてくれた。


 これでは、余計によく見える……。見るの、やめる気ないですね?


「見てて楽しいですか?」

「うん。可愛いから、ずっと眺めてられるよ」

「やめてください……」

「え~」


 クスクスと笑う数斗さんは、やっぱりやめる気はないらしい。


「荷解き終わっちゃったのなら、もう今日から住む感じですか?」

「うん、そうだね。新一の家で居候生活は、おしまい」

「……短かったですね? 急な引っ越しにしては」

「急いだからね。いい部屋に引っ越せた」

『七羽ちゃんと一緒に作った部屋だから、最高の家だ』


 食べ終えた数斗さんは、後ろを振り返って、部屋を満足げに見回す。


「じゃあ、仕事復帰は、もうすぐ?」

「あー、ちょっと迷い中。座ってていいよ。おかわりいる?」

「え、はい……お願いします」


 トレイに空になったお皿とマグカップを乗せると、数斗さんはキッチンに運んでいった。


「迷い中とは?」

「ん~。事件の被害に遭ったし、急に引っ越しするしかなかったし……特別休暇、もっと楽しもうかと」

『七羽ちゃんと過ごす時間が増えるしね……延長を決めてもらうまで』

「……そうですね。それがいいですね」


 カウンターの向こうで、カフェラテを淹れてくれる数斗さんを、両手で顎を支えて眺める。


「ん?」

『じっと見てる』

「イケメンバリスタ」

「ふふ。ずっと眺めてられる?」

「ええ」


 小首を傾げた数斗さんに、お返しに眺めた。

 数斗さんは、一切動じないで、クスリと笑うだけ。


 赤いマグカップが、目の前に戻って来た。


 お礼を言えば、数斗さんも腰を下ろすと、自分のマグカップでカフェラテを一口啜る。


『……今、渡そう』

「ちょっと待ってて」


 数斗さんはマグカップを置くと、立ち上がって寝室へ行ってしまう。


 えっ? 今? ハヤシライスを食べたあとじゃなかったの?


 特別休暇の間に一緒に過ごして、延長を求める。そう考えたから、今に決めたらしい。


 私は右ポケットの上に、手を置いた。緊張が、ぶり返す。

 ゴクリ、とカフェラテを一口、喉に流し込む。そして、コーヒーの香りを吸い込んだ。


「はい。これ、初デート記念品。忘れてたかもしれないけど」

「いえ、そんな。待ってました。数斗さんは、慌ただしかったでしょうから。あ、綺麗ですね」


 コトン、と置かれたのは、開かれたジュエリーケース。シックな黒。


 蓋の裏には、鏡。そのすぐ下とサイドには、ネックレスをぶら下げるスペース。ピアスをつける穴が並んでいて、左右には置き場所。

 数斗さんが前面の蓋を下すと、右側に三段の指輪を差し込む土台が出た。

 左側に引き出しが、三段分ある。


「……バングルは?」

「どーこだ」

『真ん中』


 スッと、真ん中の引き出しの小さなノブを摘んで、引いた。


「すごい当たり」


 ピンクゴールドのバングルが、二つ。

 中に、折り重なっていた。

 二つとも取り出すと、数斗さんはアメジストの粒がはめられたバングルを、私の左手首につけてくれる。

 私ももう一つのバングルを持たせてもらって、数斗さんの左手首につけた。ペリドットの粒のバングル。

 二人して、腕時計の下に、宝石違いのピンクゴールドのバングル。


「あ。刻印を見忘れました」

「俺はちゃんと見たよ。写真、撮ろう?」

「はい」


 数斗さんは右手で携帯電話を取り出したから、私は数斗さんと左手を繋ぎ合った。


『積極的。なら、こうしようか』


 嬉しげな心の声を響かせて、指を絡めて、握り合う。


「……このジュエリーケース。大きいですけど、貰い物のアクセサリー、そんなにあるんですか?」

「え?」

「え?」


 カシャリ。

 写真を収めた数斗さんがキョトンとしたから、私も目を見開いて、パチクリと瞬く。


『あ。俺が、貰い物のアクセサリーを箱に入れっぱなしだって話したことがあったからか……。ここに入れると思って……』


 ……違うんです!? ほぼ空っぽなのにっ! 新しく買うと!?

 まさか、ペアアクセサリーを買いまくるつもりですか!?


「ツーショットも撮ろうか?」


 数斗さんはそうはぐらかして、左手を握り合ったまま、顔を寄せた。


「笑って?」と、促されたので、はにかむ。

 それを見た数斗さんは笑みを深めて、カシャリ。

 それから、頬にキスしてきて、カシャリ。


「送るね」と、数斗さんは写真を私に送ったあと、日付に目を留めた。


『あと10日……。どう切り出そうかな。さりげなく言うだけにしようかな』


 少し迷っている数斗さんから、手をスルッと抜いて、両手でマグカップを持って一口飲んだ。


「あの、数斗さん」


 右ポケットから、小さなジュエリーボックスを取り出す。


「ん?」

『ジュエリーボックス……? 俺に?』

「お試しの、恋人関係について、なんですけど」

『!』


 ゴクリと息を飲み込んで、小さなジュエリーボックスをクルクルと指で回す。


『え。七羽ちゃんから……? すごい緊張してるみたいだけど……それの中身は、なんだろう? いや、先ずは、お試し期間についてだ』


 驚いた数斗さんは、私が手の中で回し続けるジュエリーボックスを気にしつつ、私の言葉を静かに待つ。

 けれど、口を開いては閉じて、声が出せない。


 沈黙が、続いた。


『……悪い、話じゃ、ないよね……?』

「っそ、そのぉ……えっと、ですね」


 数斗さんが不安を湧かせたから、なんとか声を絞り出す。

 ずっと考えていたのに、用意していた言葉は、頭の中で散乱してしまった。どう繋ぎ合わせればいいのやら。

 俯いて、ジュエリーボックスを額に、コツコツと当てる。

 そうしても、セリフは出てこない。


「ゆっくりでいいよ? 七羽ちゃん」

『勇気を振り絞ろうとしてるんだろうけど……答え? 延長?』


 数斗さんの手が、私の頭の上に置かれて、後ろに下がってひと撫で。

 数斗さんは、お試し交際の内容を予想して、待っている。



「……数斗さんは、幸せ、でしたか?」



 心臓をバクバクさせて、その質問をした。



「――――もちろん。幸せだよ。七羽ちゃんと一緒に居られて、幸せ」



 数斗さんは心からの声で、答える。


「七羽ちゃんの恋人にしてもらえて、最高に幸せだよ。七羽ちゃんは?」


 数斗さんの手が、また頭を撫でるように滑ると、耳に髪をかけては、私の顎の輪郭を添っていき、人差し指で顔を上げさせた。


「幸せでした……」

『”でした”? なんで過去形?』

「でも」

『怖じ気づいたって言葉を出すなら、無理にでも、口を塞いでしまうかも』


 目を合わせたのは一瞬で、また顔を俯いて、キュッと唇を閉じる。


 そんな緊張を増すようなことを言わないでほしいっ。

 部屋の中で、想い合う男女が、二人きり。改めて、意識させないでほしい。


「恋人関係の、お試し期間は、一ヶ月」

「……うん。あと10日だね……」

『お願い。延長。延長だって、言って』

「そう、あと……10日、ですね……」

『俺の延命を』


 切実に願う心の声。

 延命だなんて、大袈裟。けれども、彼の心は、いつもそう。


「もっと……甘えてもいいでしょうかっ?」


 両手に持つジュエリーボックスを挟んで、数斗さんと目を合わせる。

 面食らった顔をした数斗さんは、カチンと固まった。思考とともに、停止。


「時間を……もっと、欲しいのですが……いいでしょうか? 数斗さん?」


 小首を傾げて、数斗さんに問う。


「ワガママ、ですか?」と、数斗さんが動くことを待つ。ちょっと不安になって、視線を落とす。


「いやっ、そんなことないよ」と、数斗さんは我に返ると焦って、私の左腕を掴んだ。


「延長。延長だね? お試し期間を延長、いいよ。七羽ちゃんが、もっと時間が必要だって望むなら、ね」

『上目遣い。可愛い。嗚呼、よかった。延命だ』


 ホッと、心からの安堵した心の声を零す。

 私も、少しだけ、肩の力を抜く。


「いつも、その……ワガママを聞いてもらって、ごめんなさい」

「謝る必要ないよ。甘えていいから。いくらでもワガママを言って」

『どこまでも、甘えて』


 嬉しそうに目を細めて、優しく微笑む。


「……本当に甘えますよ?」

「うん。構わないよ」

「いくらでも、ワガママを聞いてくれるんですね?」

「うん。いくらでも、どうぞ」

「……言質、取りました」

「うん。なんなら、録音する?」


 延長の申請に、安心した数斗さんは、少々浮かれ気味。

 ニコニコしながら、何度も首を縦に振った。


 私は録音の必要はないと、首を横に振る。

 その拍子に、頬についた髪を、数斗さんが耳にかけてくれた。


「……これ、どうぞ」

「俺にプレゼント? ありがとう。見てもいい?」

「えっと……」

『ん?』


 その手を掴んで、小さなジュエリーボックスを、掌に乗せる。すぐには手を退かさず、押さえ込む形を保つ。


「私の今のピアスは、お試しの交際記念品ですので……これは、その、お返し、と言いますか……」

『ピアス……!』

「気に入ったら、つけて、ください」

「絶対気に入る」

「……せめて、見てから、言ってください」


 数斗さんが待ちきれないと声に力を込めるものだから、手を退かして、開けることを許した。

 カパッと開けた数斗さんの反応が見れず、ただそのジュエリーボックスを見つめる。


「数斗さんが、私にはピンクゴールドが似合うと言うので、それで、その……ピンクゴールドにしました。正しくは、ローズゴールド、なんですけど」


 ピアスは、リングタイプ。黒のストライプで、クラシックなデザイン。


「ありがとう……気に入ったよ」

『七羽ちゃんに似合うから、俺にも? 嬉しい。可愛い。ずっとつけよう』


 数斗さんが私の強張りを解くためにも、頭を優しくひと撫でした。


「つけてくれる?」

「それは難しいです……」

「そっか……残念。つけるね」


 冗談めいて言ったけど、心の声の沈みぐらいからして、本気だったかもしれない。他人のピアスをつけるなんて、難しすぎる。


 数斗さんは、ジュエリーボックスをカウンターの上に置くと、一つずつ、耳たぶにつけた。


「どう?」と、短い髪を耳にかけて、よく見えるようにする数斗さん。

 明るいグレージュの髪の下の耳に黒の間にピンクゴールドが、控えめにキラッとした。


「……素敵です」

「よかった。ありがとう」

『顔、赤い。可愛い』


 数斗さんは私の顎をすくい上げると、頬にキスをする。


『あれ? 延長って言ったけど、どのくらいかな? 最初が一ヶ月だから、やっぱり一ヶ月の延長?』

「ワガママ、聞いてくれるんですよね?」

「んっ? うん。なんでも言って?」


 どれくらいの延長か、と尋ねられる前に、私はワガママを言うことにした。


「じゃあ…………」


 じゅわりと、顔の火照りが悪化した自覚をする。


『真っ赤……可愛い。なんだろう?』


 数斗さんは、視線が下がる私と、視線を合わせようと、首を傾げるようにして覗き込む。



「合鍵、くださいっ」


「――……」



 か細い声を震わせて、言った。


「この、家の? っだよね。ああ、うん。もちろんっ」

『合鍵って言ったら、普通に家じゃないか。びっくりして、間抜けに訊いちゃった』


 動転した数斗さんは、少し慌てながらも、バックの中から、合鍵用のキーケースを取り出して戻ってくる。


「実は前の家の鍵も、そのまま、あげるつもりだったんだ。いつでも遊びに来ていいからね」


 この家の鍵を、数斗さんは私の左手の中に入れて、握らせた。


 ……知ってます。


『お試し期間の延長なのに……七羽ちゃんの方から、歩み寄ってくれてる。目が潤んで、可愛いなぁ。手、ちょっと震えてるけど……頑張ってくれてる。どんどん歩み寄って、俺から離れないで』


 そう願いを込めて、私の左手を両手で包んだ。


 ドアを開けるために、必要な暗証番号も聞いて「ありがとうございます」と、おずっと頷く。


「延長の、期間なんですけど……」

「あ、うん。どれくらいかな?」

『10日にプラス30日で、40日、かな』

「……甘えさせてもらいますよ?」

「うん? いいよ?」

『なんでも甘えてもいいけど……改めて、何かな?』


 数斗さんがまだ私の左手を包んでいるので、そこに右手を添えた。


『あれ……耳まで赤く……』と、気付かれたように、耳まで火傷したように熱くなったのを感じる。



()()()()()()……()()()()()()()……いいですかっ?」



 言おう言おうと考えていた言葉。


 口にしたあと、数斗さんをチラッと見上げてみれば、目を丸めていたけど、次第に顔を赤らめた。


「誕生日、まで……? 七羽ちゃんの?」

『聞き間違い、じゃないよね?』

「は、い」


 ゴクリ、と数斗さんが、喉を鳴らした気がする。


『……それ、普通に考えれば、誕生日にフるわけないから……答えは、決まったようなものだよね?』


 心臓の鼓動が、うるさいくらいに暴れた。



『七羽ちゃんの、誕生日に……正式な、恋人…………』



 心音に負けないくらい、数斗さんの心の声が、喜びで強く響く。


『もしかしたら、誕生日プレゼントに……ってことかな? 誕生日プレゼントに求めてくれるのは、嬉しい……。君の生まれた日を祝う贈り物に、俺を選んで、求めてくれるなら』

「幸せだよ」


 思わずと言ったように、数斗さんは心の声を、口から溢した。


『七羽ちゃんなりに、勇気を出してくれたんだね? 七羽ちゃんが求めてくれるだけで、俺は生きていける。嗚呼、好き。好きだ』

「……じゃあ、お試しの恋人期間は……七羽ちゃんの誕生日まで。……ね?」

『最初から同じ。お試し期間だなんて、建前。君が逃げてしまわないように、繋ぎ留めた”お願い”。それを叶えてくれた時点で……もう手放す気なんてなかった』


 ……知ってます。

 そう込めて、頷く。


 名ばかりのお試し期間。

 私の覚悟が決まるまでに、繋ぎ留める時間稼ぎ。


 数斗さんがお試しで終わらせる気がないのは、わかっていた。多分、心の声が聞こえなくても、わかったかもしれない。


 罠だった。

 頷いてしまえば、最後。

 愛に絡め取られて、放してなんかくれない。



『もう、君は俺のモノ』

「――欲しい」

『俺が愛するたった一人』



 渇望する熱い吐息に、身構える。


「……えっ?」

「許可が、欲しいな。キスの許可」


 数斗さんはとろりと落ちそうな熱を孕んだ瞳で見つめながら、私の唇を親指で触れて、軽くなぞった。


 その熱に、ギラついた情欲が含まれている自覚は、あるだろうか。


「あっ、うっ……ふ、触れる、だけの、ならっ!」


 触れるだけ。本当に触れるだけのキス。

 それだけなら、許可を出せる。それ以上は、まだ無理。


「わかった。ありがとう」

『触れるだけ。大丈夫。七羽ちゃんは、初めてだから……触れるだけ』

「じゃあ……」

『まだ、食べちゃダメだ。触れるだけのキス。それ以上はだめ』

「していい?」


 必死に自分に言い聞かせて、自制をしようとする数斗さんに、果たして、本当に今、キスの許可をしていいのだろうか。


 私も高揚している今、自制が難しいとわかる。

 でも、ワガママをたくさん言った手前、許可も出してしまったから、ノーとは言えない。


 数斗さんも、断られるとは思いもせず、私の顎を摘み上げた。

 あとは、私の合図待ち。


「っはい」と、ギュッと目を瞑る。


 数斗さんの顔が近付く気配に、バクバクと鳴る心音が、徐々に大きくなっていった。


 コツリ。触れたのは、額。

 びく、と小さく強張ったけれど、固く閉じた唇には、息が触れているくらいしか、感じなかった。


「七羽ちゃん。目、開けて?」


 呼吸が、声が。

 もう目の前にあることに、またびく、と強張る。


「な、んで?」

『目を見ながら、キスしたい』

「七羽ちゃんの瞳が見たいから」

「そ、それは……」

「七羽ちゃんも、俺を見て?」


 吹きかかる吐息が、熱い。


「む、難しい、かと」

「そうかもしれないけど……お願い、見てて」

『俺だけを考えて。俺だけを見ていて。俺をもっと愛して』


 甘く焦がれた願いを込めて、数斗さんは唇が触れる寸前であろうその距離で、待つ。


 ゆっくりと、瞼を上げる。

 目の前には、綺麗な黒い瞳。



『――――俺を魅了して放さない、一目惚れした瞳』



 唇が重なる。

 しっとりした感触で、繋がったと思う。

 それが、長く感じた。熱が灯って消えそうにない黒い瞳は、こんなにも近い距離だと、瞳孔の周りがうっすらと青灰色に見えると知る。


 見つめ続けようと頑張ったけれど、目をそっと閉じた。


 数斗さんも、額を押し付けるようにして、重ねていた唇を離す。

 その唇から、ほう、と感嘆の熱い息を零してきた。



『――――心から愛してる』



 幸福感に酔いしれたような甘い声は、心の中で吐露される。


 熱で朦朧としてしまいそうな私の中で、強く響かせながら――――。





 



臆病な天使のために、お試し期間を設けましたが、

さらさら逃す気ないヤンデレさん。

しっかり心の準備をしてから、誕生日に改めて正式スタートする二人です。


七羽本人はポロポロとボロを出してますが、

心が読める超能力は、他人の感情に敏感な能力としか認識されないまま。


今回は、ここで完結です。


またいつか、書きたいとは思っていますね。

たまに修羅場って、みんなで和気藹々しつつ、あまあまな天使守り隊一同を書きたいなぁ……。


珍しく、現代舞台での恋愛モノを久々に書きました。

この話は確か、パーフェクト紳士なイケメンにアプローチされ始める前までを書いたっきりだったのを、気まぐれに書き始めたんですよね。そしたら、ここまで書けちゃいました!

パーフェクト紳士なイケメンの心の声は、やはりヤンデレ気味という。


愛が重い、敵には物騒&容赦なしなスパダリイケメンな数斗くんになりました。


七羽ちゃんには、色々自己投影しましたね……。

アイスの一つくれエピソードは、私の実体験だったりします。それが嫌がらせという意地悪だったと気付いたのは何年もあと……二つのうち一つあげてもよくない? だからあの子、ビックリしてたのね……(´ω`)



甘々らぶらぶ、毎日投稿して、終わりました!

お付き合いありがとうございました!


よかったら、評価の方、よろしくお願いいたします!


(2023/10/26◯)

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