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【完結】心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫
お試しの居場所・後編

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53/66

53 誘惑には勝たずに物欲爆発。



 チョコレートソースに塗れた甘いマンゴーは、冷たかったせいか、口の中でとろけるようだった。

 パフェにあるコーンフレークも、好きなんだよね。コーンフレークは、硬いうちが好き。


『美味しそう』


 数斗さんは、私がフォンダンショコラとカスタードプリンを交互に見ていたので、それを注文してしまった。


 私にも食べさせてあげるため。身体が軽かったり薄かったりと、心配しているので、太らせたいという理由も含まれていたり。


 それなのに、私のパフェを見て、数斗さんがそんな心の声を零したので、マンゴーの一ひと欠片をスプーンですくって、差し出す。

 目を丸めてパチクリと瞬いた数斗さんを見て、今の心の呟きは、羨ましがって”美味しそう”と言ったわけじゃなく、正しくは”美味しそうに食べるな”という意味だったのだと気付く。


 クスッと笑って、数斗さんはパクッとそれを食べた。


「俺もお返しに……どっちが食べたいかな? 温かいうちに、フォンダンショコラ?」

「……お願いします」


 数斗さんもフォークですくったとろりとしたチョコレートソースとふわりとしたケーキを私の口元に運んだ。

 うん。美味しい。チョコレートは、生チョコとフォンダンショコラが私の中で一位を競い争っているくらいには、好物。


「七羽ちゃんって、間接キスとか、平気なの?」


 数斗さんはカスタードプリンもフォークですくって、私の口元に運んできた。差し出されたのなら、食べるしかない。


『意識すれば照れるみたいだけど、結局どうなんだろう』と、数斗さんは間接キスした時のことを思い出す。遊園地でのソフトクリーム、飲み屋でのグラス。間接キス済み。


「…………好きな、相手なら……大丈夫です」


 語尾を萎ませて、答えた。

 もちろん、嫌いな相手なんて、ごめんだ。

 でも、まぁ……数斗さんが好きなんだから、嫌がらない。……恥ずかしいけれど。


 赤くなる顔を伏せて、チョコとマンゴーのソースをまとったコーンフレークをじゃりじゃりと咀嚼。


『かっわいいんだよ……』


 恥ずかしがっている私を、微笑ましそうに見つめてくるので、顔が上げられなかった。


 ごちそうさま、と完食。どれも美味しかったと、支払いをしてくれた数斗さんにお礼を言ってから、ごちそうさまでした、と言って店を出た。



 一先ず、お手洗い。私を一人にしたくない数斗さんは、お手洗いの入り口のそばで待ってくれた。


 足を確認してみたけれど、靴擦れなどの怪我はなく、力んだ歩き方の負担で疲労している。帰ったら、足用マッサージ機をしようするべきだな。

 化粧も直して、出てみれば、心の声でかっこいいだの絶対に連絡先を交換するだの、女性の声が複数聞こえたから、予想はしていたけれど……。


 数斗さんが、ナンパされていた。

 数斗さんの方は携帯電話の画面から目を離すことなく、生返事を返すだけ。全然彼の声が聞こえなかったのは、不思議だ。……三人の綺麗な女性に囲まれても、最早、無反応。


「数斗さん」


 その女性陣の元に割り込めないので、ちょっと離れたところから、数斗さんを呼んだ。

 パッと顔を上げた数斗さんは、無表情から一転、笑みに変わる。


「失礼」と、素っ気なく言うだけで、女性陣から離れて、私の元まで大股で歩いてくると肩を抱いた。


「七羽ちゃん、会いたかった」

「数分離れていただけですが?」

「んー、()()()()()()()()()から、酷く恋しくなったんだ」


 ちゅっ、と頭の上に口付けをした数斗さん。

 その言葉、ナンパの女性陣に聞こえてますけど……わざとですか? ”()()()”呼ばわりに、言葉を失ってますよ。


 デレデレさを見せつけるように、ニコニコしている数斗さんは「腕組もう」と腕を差し出してくれたので、またしがみ付くような形で腕組み。


 私は振り返らないように言い聞かせて、一緒に靴下屋のある二階へ、エスカレーターで向かった。



 数斗さんは、極端だなぁ……。

 優しさが、私に多すぎるぐらいに傾いている。

 むしろ、すでにひたすら注がれている……?



 靴下屋で、パンプス用の靴下を手に取る。

 そのまま一人でレジに向かおうとしたけれど、数斗さんは腕が離れることをよしとしなかった。


 今日のデート代は、数斗さんが全額持つ。

 本日の合言葉である。


 先に買ってくれて、店の前のベンチに腰を下ろして履いた。ぴったり感。これで疲労は、だいぶ減る。


「なんか追加に買っておく?」

『ガーターベルト、ないかな』

「大丈夫です。お揃いのアクセサリーを探しましょう」

「そうだね」


 数斗さんがガーターベルトを気にするので、お揃いのアクセサリーを買うという目的を思い出させて、そちらに気を移す。


 どうして数斗さんは、ガーターベルトに並々ならぬ思いを抱えてるのだろうか……。靴下屋さんにはないと思いますよ。ジュエリーショップの隅にあるのは、見たことありますけど。そのまま、知らないままでいてください。


 足取りがとても楽になったので、数斗さんと手を繋いで歩く。

 数斗さんが腕組みがなくなったことに残念がっているけれど、口には出さずに私の手を握り締めた。


 途中の店を気にしながら。


 スポーツ用品店を見れば「七羽ちゃんは、運動は得意だっけ?」と話題を振ってきたので、不得意ではないと答えておく。

 でも、スポーツグッズは、不要です。運動する気、全くないですし。


 お手軽価格で販売してくれるファミリーカジュアルなファッションブランドを見かけて、そういえば、ブラウスの下に着ておくタンクトップとか欲しいなぁ、と思っていれば、数斗さんが入って行ってしまった。


「何か必要?」と、悩んでいたことに気付いての質問。


 数斗さんの方が、心を読む能力を持っているのでは???

 とか、疑ってしまった。


「ただ仕事中に着る服が新しく必要かなって、思っただけです」

「じゃあ、買っておこうか」

「いいですよ。また今度でも」


 何も今日買わなくてもいいと出ようとしたけれど、数斗さんを引っ張って歩けるわけがなく、失敗。


「今来てるなら、今買おうよ。それに、ここは、県内で一番広くて取り揃えが多いって」

「ホントですかっ?」


 え。ビックリ。ここが県内で最大級の店なの?

 心の声を聞いても、数斗さんは嘘をついていない。

 さっきサイトを見て、ついでに知ったらしい。


 そういうことで、見事に丸め込まれて、店内を歩き回って物色。


 これ欲しい、とか、これ可愛い、とか。

 買い物かごに多く入らないように気を付けながら、数斗さんと話す。


 メンズコーナーにも行って、数斗さんの意見を聞き出して、選ぶ。

 弟と母の恋人さんのプレゼントに、母と妹と選んだことがあることを話した。

 その時は適当だったけれど、数斗さんが興味を示したものや、欲しいかも、とか思ったものをせっせと買い物かごに投入。

 二人して、ラフな服を数着、選んだ。


 ……結局、いっぱい買ったな……?

 セルフレジで会計金額を見ても、後の祭りだった。


「あ。天然石アクセサリーだ。七羽ちゃん、好きでしょ?」


 次は、パワーストーンが並ぶアクセサリーショップに足を向かわせてしまう。

 頑張って止めた。


「数斗さん、ジュエリーショップに行くんですよっ」

「ちょっと覗こう?」

「ジュエリーショップです」

『頑張ってる……可愛い。しょうがないな』


 いや、数斗さん。なんで私がワガママ言ってるみたいになっているんです?


 続いては、電気製品店。


「七羽ちゃん、こだわりの物とかある?」と、尋ねながら、足を踏み入れる数斗さんは、それを聞いたら買うのか。何故ですか。


「特にないですけど……数斗さんは?」


 あ。ドライヤー。家にあるのは、古いんだよね。ホテルのドライヤーには、感激しちゃったくらいだ。


「俺は……今のコーヒーメーカーは気に入ってるね。実家でも、同じのあったから。一人暮らしの際に、買うことにしたんだよね。七羽ちゃんの髪をセットする道具は、今どんなの?」


 数斗さんは自分の話を答えてから、私が気にしたドライヤーを手にした。


「特別な物では……。これ、乾かすだけで、うるツヤになるって本当ですかね?」

「あはは。じゃないと、広告詐欺になっちゃうよ」


 怪しむ私は、じとっとポップの言葉を睨むように見る。

 数斗さんは横で笑うと、私の髪をひと房、手にした。


「うるツヤが必要? ヘアーオイルは、サラサラの効果を選んでたよね」

『オレンジの香りのヤツ』

「普通、欲しくなりません? 数斗さんは、どんなドライヤーを持ってるんですか?」

「七羽ちゃんが答えたら、教えてあげる」

「……古い物です。母がいつの間にか買った物ですので、どこの製品か、よくわかりませんが……ちょっと重いですが、普通に乾かしてくれます」

「重いの? 俺のは軽量と速乾性を重視、って謳い文句の商品だったよ。重い?」


 情報交換すると、数斗さんは私にドライヤーを持たせる。

 んー、重いかな。今のドライヤーと変わらない。

 次は、軽い物を持たせてくれた。


「ほら、速乾性で、まとめ髪に仕上げるんだって。これがいいんじゃない?」

「なるほど……。でも、”いい”とは?」

「七羽ちゃんの新しいドライヤー」

「欲しいとは言ってませんよ?」


 ブンブンと、頭を横に振る。

 なんで電気製品まで買ってもらわなくちゃいけないんだ!


「……そっか」

『古いなら、買い替えればいいのに。七羽ちゃんの髪のキューティクルのためにも』

「俺は欲しいから買っておく。ごめん、ちょっと持ってて?」


 何故か買うことに決めた数斗さんは、そのドライヤーの箱を私に持たせた。私と手を繋ぎたいので、手が塞がっている数斗さんの代わりに、私が抱える形。

 今言った数斗さんのドライヤーは、一年も使っていないだろうに……。


「ストレートアイロンだっけ? それは?」

「母と妹が使っているのを、たまに借ります。ストレートアイロンでも巻けることは巻けますけど……私は、いつもはコテを使っているので」

「そうなんだね。ここにある?」

「……このピンクです。一年前くらいに、自分用に買いましたね」


 今度は、ストレートアイロンとコテのコーナー。流石にこれは買うわけないだろうと、思う。


『そうか……。七羽ちゃんが万が一、泊まりに来たら、これもあった方がいいよな』


 んんー!? 私がお泊りすることに備えて買うの!? ドライヤーもそれ!?


 止めたいのに。止められない。心の声だけなので、無理!


 でも、流石に、髪を巻くコテを目の前で買うことはしなかった。ただ、数斗さんのあとで買うリストに追加されてしまう。

 この電気製品店から、もう出たい。

 またジュエリーショップ行きましょう、と腕にしがみ付いて急かした。


 数斗さんの頭の中には、私が洗濯が不得意だと言っていたからと、洗濯機や乾燥機を確認したがっていたので、阻止。

 それでいいのがあったら、買い替える気なんですか? そうなんでしょうね!


 レジでドライヤーの会計をしつつ、数斗さんは『これから暑くなるし、扇風機は? エアコンは? 冷蔵庫は?』と、キョロキョロと店内を見回す。


 数斗さんは、私に家でも与える気ですか!?

 数斗さんの物欲爆発の尽くし方に、慄くしかなかった。


「流石に重くなってきませんか?」

「んー、まだ大丈夫だよ?」


 まだって……まだ序の口って意味ですか?


 流石に買い物袋が多くなりすぎたのに、数斗さんは、私に持たせる気が全くナシ。


 今度こそ、一階にあるジュエリーショップに行こうとしたのに、エスカレーターに辿り着く前に、さっきとは違う雑貨店に数斗さんが寄ってしまう。


 誘惑多すぎない!!?


「七羽ちゃんがまた食べに来てくれた時に、お皿が欲しいな」と、正直に話しながら、数斗さんは一緒に選ぶ。ついでのようにスプーンもフォークも、買い物かごへ。

 ……また数斗さんの手料理が食べたいので、私は誘惑に負けた。


 数斗さんも一人暮らしだから、食器も少ないだろうから、しょうがない。と、言い聞かせて正当化しておいた。


「このコースター、可愛くない?」とか「グラス、可愛いね。七羽ちゃんはどれが好き?」とか「あ、箸も必要じゃない?」とか、次々と選んでいく数斗さん。


「数斗さん。今日、金銭感覚大丈夫ですか? 買いすぎでは?」


 私が持つ買い物かごの中、いっぱいである。

 絶対、金銭感覚がバクっているに違いない。



「初デートで浮かれているから」



 ニコッと、数斗さんはそう笑みで言い退けた。


 金銭感覚がバクっていること、否定しなかったわ……。買いすぎも、自覚あるわ……この人。


「観葉植物って好き?」


 手当たり次第か!

 数斗さんの部屋が、私の好みに模様替えされるっ……!

 今日は、デートですよね!? 模様替えの買い物をしに来たわけじゃないですよね!?


 なんとか食器以外を買わないように、誘導に成功。


 やっぱり流石に重いだろうってことで、荷物を分けて持っておこうと強めに言う。


『流石にここまで多くなったら、七羽ちゃんも気になってしょうがないよね』と、数斗さんはやっと折れてくれた。


 割れることが心配ということで、今さっき購入した食器類の袋だけを持たされる。

 あとは、全部数斗さん持ち。……納得出来ない。


 むくれた顔を見て数斗さんは「ジュエリーショップのは、七羽ちゃんが持ってね」と、仕方なさそうに笑って宥めてきた。


 だから、なんで私がワガママを言った感じになっているんですか……。



 

2023/10/14

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