表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫
お試しの居場所・前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/66

25 幸せになる素敵な愛の形。(数斗視点)


数斗視点。お家デート。





 七羽ちゃんの手を引いたまま、雑貨店を見回して、それからマグカップも必要じゃないかと思い至る。


「数斗さん。お昼になっちゃいますよ。飲み物やおやつを買うのでは?」

「あー、うん。あとマグカップを、一つ」


 新一と真樹の分はあるけれど、七羽ちゃんが使う用に買っておこう。

 先走りすぎるだろうから、七羽ちゃんの分だとは言わず、可愛い猫型のマグカップから選んでもらった。

 ちょっと怪訝そうな顔だったけれど、そんな七羽ちゃんの手を握ったまま、取っ手が猫足の黒いマグカップを購入。


 下の階のスーパーで、七羽ちゃんの言う通り、今日過ごすために必要な飲み物とおやつ。


 七羽ちゃんの好みを聞きつつも、余分にカゴへ入れていく。

「そんなに必要ですか?」と、首を傾げる七羽ちゃんに「ちょっと多すぎても困らないでしょ」と答えておいた。

 お菓子も、七羽ちゃんの好きなスナックを覚えておく。

 残っても、そのうち真樹が食べるよ、と笑い退けた。

 俺も、七羽ちゃんの好きなお菓子、食べてみたいしね。


 買い物を済ませた。

 車に乗ってから、袋から取り出した一つの猫のぬいぐるみは、値札を切り外して、七羽ちゃんに手渡す。

 七羽ちゃんは自分のクッションを膝に乗せたまま、ギュッと両腕でそれを抱き締めた。

 よかった。

 ……可愛い。


 間もなく、俺が住んでいるマンションに到着。

 オートロックマンションのため、エントランスで鍵を使って中に入る。

 荷物を持つと言う七羽ちゃんには、ぬいぐるみとマグカップの入った軽い方の袋を持ってもらい、エレベーターで五階へ。


「真新しくて綺麗なマンションですね」

「そう? 適当に選んだんだ。確かに新しいって言ってたかな。新一達と集まりやすくて、職場からもそんなに遠くない範囲の中から決めたんだ。でも、もっといいところに引っ越そうかなって、ちょっと考えてる」


 七羽ちゃんの家まで、車で一時間もかかるなら、もっと近くに引っ越したいな……。

 七羽ちゃんが、気軽に遊びに来れる距離。あわよくば、入り浸ってほしいから。


「そうなんですか? あの駅ビルからもわりと近くて、いいところだと思いますけど」

「そうかな? まぁ、確かに、遊びに行きやすいとは思っているよ」


 ……七羽ちゃんが遊びに来てくれるなら、このままでもいいか。

 出来れば、俺が迎えに行きたいけども。


 503号室。

 鍵でドアを開けて、七羽ちゃんを招き入れる。

 ドキドキしつつも、先に靴を脱いで廊下を歩く。そうすれば、七羽ちゃんはブーティを脱ぐことに苦戦をした。

 おっと。七羽ちゃんの手荷物をサッと持ってあげれば「ありがとうございます」と苦笑して、チャックを下げたブーティを脱いだ。


 ……靴下が、ボーダー柄。つま先に、猫の顔があるデザインだ。……ええぇ。可愛い……!


 でも歩くと、チラリとスリットから黒のレース越しに素足が見えて、ドキリ。


 キュートからのセクシー?

 ギャップ萌えで、胸が貫かれる。

 はぁああ……ホント、可愛い。


「スリッパ、なくてごめん。トイレはこっちね。さっき見せたリビングとキッチンで、あっちは寝室」


 軽く部屋の案内をしてから、遠慮は要らないと、ソファーに座ってもらう。


「すぐにパスタ作るから、待ってて。あ、七羽ちゃん。そのゲーム機で見放題アプリを観れるようにしてくれないかな?」

「さっきもテレビ通話で見えましたが、数斗さんがゲーム機を持ってるのは意外ですね」

「学生時代の名残りで持ってきたんだ。新一と真樹とよく遊んでたからね。勧められて、いくつかゲームをクリアしたよ。動画配信も観れるし……でも、ここに越してから、ほとんど使ってないな」

「それなら、先ずはアップデートが必要かもしれませんね。ログインのパスワードを教えてください」


 コントローラーを渡せば、すんなりと七羽ちゃんは引き受けてくれた。

 ちょん、とソファーの隅っこに座る。遠慮がちな七羽ちゃんらしいと、密かに笑う。

 メッセージから、ログイン情報を渡して、あとは任せた。


 新一は新機種を買ったけど、俺はまだ古い機種のゲーム機。七羽ちゃんが使うなら、買い替えようかな……。


 なんて、キッチンから七羽ちゃんの姿を、何度も確認する。

 殺風景な部屋に、可愛い七羽ちゃんがいるってだけで、ふわふわした気分だ。

 多分……これは、幸福感。


「終わりましたよ。何か、手伝います」

「お客様はゆっくりしてて。というか、もう完成したところ」

「いい匂い」

「カウンターで食べるかい?」

「はいっ」


 カニクリームで茹でたパスタを絡めたあと、お皿に盛り付けた。二人分を、カウンターの上に置く。


 ん? と、引っかかる。

 さっきも、テレビ通話中に、気にしていたような……?


「あれ? それは……コーヒーメーカーですか?」

「うん、そうだよ。食事の前にたまに飲んで…………七羽ちゃんも、いるかい?」

「いいんですか?」

「もちろんだよ。何がいい? エプスレッソ? カプチーノ? カフェラテ? お好みは?」

「では、濃いめのカフェラテを一つ、お願いします」

「かしこまりました。濃いカフェラテを一つですね」


 許可を得てから、カウンターそばの椅子に座ると、七羽ちゃんはルンルンした様子で待ってくれている。

 こちらも、気分が上がってしまう。居心地は、よさそうだ。安堵する。

 演技かかった風に、頼んでくれたから、それに快く応えた。

 マグカップ、買っておいてよかったな。早速、使用。


「あ、大きなスプーンもいいですか?」

「スプーン? いいよ、どうぞ」

「パスタをスプーンで食べるのは、お子様だけって聞いたことありますが、この方が好きでして。ソースも飛ばさずに食べれますし」


 七羽ちゃんは、カニクリームパスタを、スプーンに乗せて、フォークでクルクルと絡めて食べる。


「美味しいです」


 顔を綻ばせる七羽ちゃんの口に合ってくれたようで、喜んでくれていた。


「よかった」と、心から喜ぶ。


 俺の部屋で、七羽ちゃんが俺の作った料理を上機嫌に食べてくれているなんて。それだけで、味わえる幸福感。


 淹れたカフェラテを啜って、七羽ちゃんはカウンターキッチンを観察するように見た。


「七羽ちゃん。カウンターキッチン、気に入った?」

「あ。バレましたか……。一人暮らしに憧れていた時に、検索している時に、こういうのがいいなって思ってたんです。数斗さんの部屋はイメージ通り、大人びていて綺麗ですね」


 そうなんだ。

 気に入ってくれるなんて、よかったな。


「ありがとう。でも、殺風景でしょ?」

「出来る男の大人びた部屋って感じで、ぴったりですよ? 確かに生活感がないとなると……そうなってもしょうがないと思います」

「うん、七羽ちゃんの言う通りだね。七羽ちゃんの理想の部屋って?」

「私の?」

「そう。一人と一匹暮らしする部屋は、どんな感じがいいと思ってたの?」


 食べながら、俺の部屋を見回しつつも、その話題をした。

 猫と暮らしたかった一人部屋について。


「ん〜……猫ちゃんのためのキャットタワーや、上に乗って遊べることも出来る本棚や、壁にもひょいひょい登れる階段を取り付けたり……それで、レイアウトを決めたいかと」

「猫ちゃんのための部屋になるじゃないか。猫、本当に好きなんだね」


 七羽ちゃんは、猫を愛でるために暮らすのか。

 ……その猫になりたいな? 抱き癖のある七羽ちゃんに、ずっと抱えてもらえる?


 どんな猫が好きかと尋ねれば、黒猫が一番好きだとは言うが、猫なら大抵、大歓迎だとか。

 七羽ちゃんに飼われる猫になりたいなぁー、とずっと考えてる間に、食べ終えた。

 七羽ちゃんが皿洗いをすると言うけれど、お客様だからいいと背中を押して、ソファーに座らせる。


 手早く、食器を洗ってから、七羽ちゃんの隣に腰掛けた。


「七羽ちゃんが言ってた映画とドラマはどれ?」

「昨日話したのは確か……」

「あ。マイリストに入れてくれるかな? 七羽ちゃんが好きな映画もドラマも、全部」

「全部!?」

「うん。全部観たい」


 ギョッとする七羽ちゃんに、またコントローラーを持たせて、任せる。


「本当に好きなもの、全部マイリストに入れますよ?」

「いいよ」


 望むところだ。

 ポチポチと、七羽ちゃんはボタンを押して作業をした。ちょっと悩んで、首を捻る。スルーしては、またポチポチ。


「んー……ホラーばかりになってしまいます……」

「ホラー映画、好きなんだね。しかも、洋画だけ」

「いやぁ……面白くて、つい。ホラーアクションなら、なお好きですね。ほら、あのホラーゲームの実写映画が、多分好きになった始まりです」

「あれね。怖くないの?」

「倒せるモンスターなら、なんとか。ちゃんと、ビビりますけどね」

「え? 倒せるか倒せないか、なの? ちゃんと怖いんだ?」


 絶叫マシンは、俺達と同じく好きだし、結構怖いもの知らずかと思ったけれど。


「除霊が出来ないような幽霊は、特に……ひたすら恐怖が終わらないじゃないですか」

「それは……一理あるね。倒せたら終わりで、安心出来るから」

「そうです」

「……家でもお絵描きしながら、映画レンタルして観るって言ってたよね? 一人でホラー映画を観たりするの?」

「……初見のホラー映画の時は、母と妹に頼んで、一緒に観てもらってます。二人も好きなんで」

「……くっ付いて観るの?」

「……なるべく、そばにいてもらってます」


 本当は、くっ付いて一緒に観てほしいのか。

 今度、一緒に観たら、くっ付いてくれるかな……。


「あれ? それは?」

「これですか? 海外のベストセラー小説の実写映画でして、ヴァンパイアラブものです。イケメンヴァンパイアと美少女の純愛ストーリーです」

「へぇ、小説の? 見たことある気がするな……この女優さん」

「あぁー確か、一番稼いだ女優ってことで、ニュースになってましたよ。これ、大ヒットしたので」

「なるほど、それで見たかもね。ヴァンパイアラブものかぁ」


 イケメンヴァンパイアと美少女か……ラブファンタジーだ。


「海外ではブームでしたよ。若い女の子が全米で熱狂したとか。別のドラマまで大ヒットしてましたもん。日本でも、ヴァンパイアラブのドラマがあったのですが……あれは、不況でした」

「詳しいね?」

「実は……物凄く、ハマってしまって。その映画もドラマも、母と妹も巻き込んで観ました。他にもヴァンパイアラブものがないかと、常にアンテナ張ってました」


 かなり好きだってことがわかった。

 全然知らなかったけれど、よほど七羽ちゃんの好みだったんだろう。照れ笑いして、答えてくれる。


「純愛だって?」

「はい。イケメンヴァンパイアは、百年の孤独から、愛で救われるというストーリーです。日本語翻訳の小説も、読んでました。授業中にも」

「えっ? 七羽ちゃん、授業中にそんなことを?」

「なんですか? そんな真面目ちゃんじゃないですよ? 机にラクガキも、しょっちゅうでしたもの」


 意外だと笑ってしまったが、七羽ちゃんはケロッと言い退けた。


「そんなに夢中だったんだ? 気になるなぁ、今日はこれを観ていい?」

「あ。言いそびれてましたけど、長編映画ですよ? 全部で五本です」

「大作なんだ? いいよ。観る」


 七羽ちゃんのマイリスト登録作業を一時中断してもらって、俺はその映画を観させてもらおうと、コントローラーを渡してもらう。

 それで、再生ボタンを押した。


「じゃあ、私はイラストを描きますね。チラチラと観ながら」

「うん。寛いでね」


 七羽ちゃんは、もうタブレットを取り出している。

 専用のタッチペンも持っていて、本格的だと思った。


「……七羽ちゃん。すっごく漫画や小説、それから映画まで好きだよね? 自分でも創作するなら、その職業とか目指さなかったの?」

「はい? ええーと……小学生の時に、将来の夢として、漫画家になりたいとは言いましたが、ただの憧れですね。職業にするほど上手くないですよ? 技術も足りませんしね……趣味のままの方がいいと思います。仕事にすると、義務にもなりますから、自由気ままにやる創作活動がいいかと」

「そっか……そういう考えなんだね」


 上手いと思うんだけどなぁ……。

 七羽ちゃんのタブレット画面に、今まで描いたであろうイラストが見えたけれど、それは全部、趣味の範囲なのか……。

 俺は創作活動を一切したことないから、そういうものかもしれない。


 映画のオープニングが始まった。

 でも、どうしても、七羽ちゃんを横目で観てしまう。

 結局、持参したクッションを使って、膝を立てた姿勢で描いている。

 猫のぬいぐるみは、真横に置いていた。

 なんか、俺との間にあるから、壁にされている気がしたので、俺の膝の上に移動。



「……数斗さん。映画、観てます?」

「あ、うん。ごめん。イラストが気になって、つい……」


 ついつい、七羽ちゃんの真剣な横顔を見つめたくなってしまうのだ。

 視線に気付いている七羽ちゃんは、それでもペンを止めなかった。


「大丈夫、観てるよ? このイケメンヴァンパイア、ミステリアスだね。……俳優もイケメン。七羽ちゃんの好み?」


 そういえば、七羽ちゃんのタイプって、どんな顔立ちだろうか。

 人気者のイケメン同級生を、今まで好きになっていたとは聞いたけれど……。

 七羽ちゃんの大きな瞳が、テレビ画面に向けられた。


「はい。かっこいいですよね」


 ……好みなんだ。この俳優の顔が、七羽ちゃんは好き……。


「……数斗さんは、()()()()()()()、どう思います?」

「え? ああ……このイケメンヴァンパイアが持っている特殊能力だっけ?」


 じっと俳優の顔面を見つめてしまったけれど、七羽ちゃんに問われて、意識が逸れた。


 ()()()()()()()()()()……?

 ヒットした長編映画だけあって、ヴァンパイアってだけじゃなくて、面白い設定が盛り込まれているんだなぁ。


「それって……欲しいとか? そういう意味の質問?」

「欲しいですか? 彼、かなり苦悩してますけど」

「んー、まぁ、そうだね。それで、さらに孤独感が増しているのかな……。ヒロインの考えだけ、が読めないのは、なんで?」

「あー、それはちゃんと設定がありまして……ネタバレになります」

「ん~、そうかぁ……。惹かれる相手だからこそ、考えが読みたいな」


 七羽ちゃんの考えが、読めたらいいな。

 欲しいものは全部与えるし、望むものも叶える。

 深い傷を、癒せる言葉をかけたい。


「失望するかもしれませんよ? 全ての考えを読んでしまうと」

「丸ごと全部、愛したいと思える相手だからこそ、惹かれると思うよ?」

「……数斗さんって……失礼ですが、相手を美化しすぎかと」


 呆れてしまったのか、ちょっぴり、七羽ちゃんは苦笑した。


 それって……今想っている七羽ちゃんを、美化しすぎてるってこと?

 考えを読んだら、心変わりするかもしれない……だなんて、思ってる?



「どうして? この映画って、純愛ストーリーなんだよね? 百年の孤独から救ってくれる愛の話なら、想いを貫くんでしょう? そういう話が好きなんじゃないの?」



 この純愛ストーリーが好きなんだろう。

 運命的な出会いによる愛。


 自分には無縁だと思ったりするのだろうか。

 七羽ちゃんこそ、そんな愛を受け取るべきだし、愛されるべきなのに。



「数斗さんったら。好みの恋愛ストーリーと現実の恋愛は、違うじゃないですか」



 そう現実には、運命的な愛がないみたいに言うのに。


 七羽ちゃんは、柔らかく微笑む。

 綺麗な瞳を細めて、俺を見つめる。


 おかしいって、笑っているのかな。

 それとは、ちょっと違う。

 穏やかだ。


「……現実に起きてほしくない?」


 そういえば……自覚してなかったけれど。

 今朝からの不安や期待によるハラハラやドキドキが、今はない。


 七羽ちゃんと会ってから?


 この部屋に七羽ちゃんがいることに、高揚を覚えていた。


 でも、穏やかだ。

 今は本当に、穏やかな気分。


 七羽ちゃんが隣にいてくれると、落ち着く。

 どうしてだろうか。安心しきっている。


「じゃあ、()()()()()()()()()()()()()、どうするのですか?」

「俺の考えを読んで、失望されたら……それまでかな。……いや、好きになってもらえるように最善を尽くすよ。俺の方がどれほど想っているか、包み隠さず、伝わるっていいと思う」


 一瞬後ろ向きなことを言ったけれど、でも自分が運命の相手だと思うなら、そこで諦められないよな。

 そう思って、前向きなことを答えた。


「ふふっ。数斗さんって……自信過剰だったんですか?」

「え? 今のでどうしてそう思うの?」

「自信家。まぁ、その魅力はお持ちですもんね」


 七羽ちゃんが噴き出して笑うから、どうして、と苦笑して俺は、首を傾げた。

 自信家? 魅力があるって言ってもらえるなら、それでいいけれども……。

 皮肉に笑っているわけでもなく、愉快そうに笑っている。


 そんな七羽ちゃんも、すっかりリラックスしているんじゃないかって気付いた。

 俺と二人きり。リビングのソファーで並んで座っていても、緊張なんてすることなく、心を許してくれている。



「数斗さんに愛される人って、幸せになりますね」



 七羽ちゃんのその言葉に、息を止めた。


 失言したとばかりに、七羽ちゃんは目をまん丸に見開いたあと、サッと顔を伏せてしまう。


 それって……俺が、今、七羽ちゃんを想ってるって、わかってて言ったよね?

 俺の愛で、人を幸せに出来ると言った。ただただ、思ったことを零したみたいだ。本心を。


 自分を完全除外した発言じゃなかったようで、七羽ちゃんは顔を赤らめていた。



 ――――いいの?


 俺の愛を受け取ってくれるなら、君は幸せになれる?



 踏み出していいのか。

 歩み寄っていいのか。



 俺に、君を――――愛させてくれる?



 流石に、ドキドキと胸が高鳴る。

 けれど、恍惚感すら覚えてしまう。


 心地のいい、高鳴りが、幸福感を溢れさせるような――――。



「数斗さんっ。あのっ。カフェラテを、もう一杯いただけませんかっ!?」


 グッと、ソファーの上を滑らせて、近付けていた手を握り締めて、引っ込めた。

 七羽ちゃんからのストップ。


 ……だめだったっ……っ!


「う、うん……わかった。さっきの濃さでよかったかな?」

「はい……お願いします」

「待ってて。あ、一時停止して」

「はい」


 ソファーから立ち上がって、頭をポンッと軽く叩いてあげる。


 大丈夫……七羽ちゃんに合わせるし、今日はそんな下心はなしだ。

 ただ、七羽ちゃんと楽しく、まったりと過ごす。


 カフェラテを作りながら、ちょっと、さっきの幸福感に驚く。


 ……ヤバいな。


 本当に、七羽ちゃんは一緒にいるだけで、俺を幸せにしてくれる。


 今の一瞬ですら、恍惚な幸福感。


 俺は――――愛を受け取ってもらえるだけで、幸せになれる。



 俺に愛される人が幸せになるなら、七羽ちゃんは幸せになれる?

 七羽ちゃんが俺の愛を受け取ってくれるなら、幸せになれるよ。

 何それ。素敵な愛の形じゃないか?



 もう。

 君が俺の運命の相手だ、なんて。

 今すぐにでも、告白してしまいたい気持ちを、堪え切った。



「……はい、どうぞ」

「ありがとうございます。……とても美味しいです」


 まだ恥ずかしげな七羽ちゃんは、一口飲んで、はにかむ。


 うん。今は、ただ。

 これで、満足しよう。


 友だち以上の想いを抱える恋人未満な関係。


 今日は、七羽ちゃんに、安らぎを――――。



 そう心掛けたおかげなのか。

 七羽ちゃんは、ソファーのひじ掛けに頭を乗せて、うたた寝してしまった。


 ……寝てしまった。


 俺はやはり、七羽ちゃんにもっと危機感を覚えるべきだと、諭すべきだろうか。


 俺にこんなにも無防備になってくれていることに喜ぶべきか。


 それとも、それほどまでに、疲れていたのに連れ出したことを反省すべきか。



 …………。

 ……とりあえず、この寝顔を撮っておこう。



 ……寝顔も、天使みたいに可愛い。



 どこまでも、俺を惹き付ける魅力がある天使の寝顔を、いつまでも眺めてしまいたかった。



 



某ヴァンパイアラブストーリーのイケメンヴァンパイアヒーローと同じ特殊能力を持ってしまった七羽ちゃん。

わりとバレないので、ついでに話題に出す。


心が読まれたなら、開き直って攻めるという考えの数斗は、嫌いじゃない。


次は、うっかりうたた寝した七羽ちゃん視点に戻ります!

いいね、ポイント、ブクマ、ランキング、ポチッとお願いします!

2023/02/28

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ