15 腹黒女を追い込み尋問。
七羽視点。
腹黒女子を、追い込め! 回。
追いかけてきてくれた数斗さんに打ち明ければ、直接、腹黒女子の本性を暴くことにチャレンジすることとなった。
何それ、すごい!
ついつい、ワクワクしてきてしまった私は、呆れられてもおかしくないのに、数斗さんは噴き出して笑っては頭を撫でてくる。
新一さんも数斗さんも……私を許しすぎでは……? お心が広い……。
「……数斗さん。携帯電話、替えました?」
電話している最中に気付いたけれど、数斗さんの携帯電話は、前と違う。
出会った日に、持たせてもらって、自分の連絡先から生年月日まで打ち込まされたので、しっかり覚えていたもの。
それって、まさか……。
「あ、うん。俺も替えたくなったんだ。お揃い」
にこっと笑って見せる数斗さん。
私の携帯電話を弁償で買ってくれた時にも、数斗さんはそれを思っていたけれど、まさかの有言実行で替えるとは……!
「……私、誰かとお揃いを持つ度に、小学校の時に流行ったおまじないを思い出しちゃうんですよね」
「おまじない? 七羽ちゃんの学校で? どんなの?」
「いえ。小学生の流行だったはずですけど……男の子は、違いますよね。おまじないの本を回し読みしてて、その中の一つにあったんです。お揃いを持つと仲良くなれるという、とっても簡単なおまじない。何度も思い出しちゃうんです」
ホント、些細なおまじないを、お揃いの物を見る度に思い出してしまう。
「ふぅん……」
数斗さんは、私と一緒になって携帯電話を見つめた。
「いっぱいお揃いを持てば、いっぱい仲良くなれる?」
そう目を細めて笑いかけてきて、ドキリと心臓が跳ねる。
「そのおまじないの効果って、友情? 恋愛?」
「……どっち、も……です」
「そっか」
嘘がつきかけたけれど、正直に答えてしまった。
ニコニコした数斗さんは『どんなお揃いを買おうかな』と買うことを考えている。
私の背中を軽く押して、コンビニに引き返す。
「あ、あのっ。さっき新一さんの元カノのタイプとか言ってましたが……腹黒、だったのですか?」
尋ねても答えにくいかもしれないと思いつつも、つい、確認する。
「うん……まぁね。中三から付き合ってたんだけどね、高校に入って少ししたら……新一が少しだけ仲良くなった隣の女子生徒が、急に学校をやめてしまったんだ。そのあとすぐに、新一のカノジョが、学校の掲示板に悪口を嫉妬で書き込んで、炎上させたって知った」
『淫乱だとか、泥棒猫だとか……尻軽だとか。女の子には、酷い悪口だってことは、聞かせたくないな』
「もちろん、新一は怒ったし、学校側に訴えたけど、被害者側は苦情すら言わなかったからって、なんの罰も与えないってなっちゃって……だから、新一は自分の実名で掲示板に暴露してやったんだよ。元カノのツブヤキのアカウントを貼り付けて、炎上させた悪口のスレッドも貼って、潔白な子を退学に追い込んだ腹黒な性悪だってね」
「す、すごい、ですね……」
「でも、あの元カノは図太くてね。被害者ぶっては同情をもらって、なんとか高校生活を乗り切ってたんだ。新一はヨリを戻したがったその子を完全無視。数年後にいじめ問題でニュースが騒いだ時、警察に通報するべきだったって後悔してた」
『舌打ちをして心底悔しがってたな。ホント、誰かを貶める腹黒は嫌だよね……そんな奴のせいで、新一も恋愛が嫌になっちゃって……』
苦笑を零しては、数斗さんは私の頭を撫でた。
なるほど……。そんな過去が……。
「だから、坂田さんの時、警察に突き出すって、姿勢が強かったんですね」と呟くように言うと「そういうこと」と数斗さんは頷いた。
「じゃあ、ここにいてね。来たみたいだ。コールが来てから出るんだよ?」
「はい」
数斗さんの携帯電話が鳴った。
着いた、という合図らしい。
言われた通り、トイレの中で待つ。鏡を確認してみれば、目元がほんのり赤かった。
泣いたものね……号泣しちゃったもの。
もう限界だって、泣きじゃくったのは、いつぶりだろうか。
数斗さんが冷やすためにポカリをくれたので、それでだいぶマシになったはず。
見苦しくはないと思ったので、化粧直しはやめておいた。
早くに携帯電話が鳴る。真樹さんからの着信。
すぐに出れば、目の前に新一さんと真樹さんがいた。
『え!? 七羽ちゃん!? 数斗をフッて帰ったんじゃないの!? なんでここに!?』
真樹さんはまだ知らされていなかったようで、ギョッとする。
私は、ペコッと真樹さんに頭を下げた。
『オッケーか?』と、新一さんは無言でジェスチャーする。
コクコクと頷く。
『じゃあ、行こう』と手招いて、新一さんは先を歩くので、オロオロした真樹さんと一緒についていった。
コンビニの前には、数斗さんの車が停まっている。
後部座席に座るように、新一さんが促すので、私が乗り込む。
新一さんのあとに、真樹さんも乗った。
『説明をくれ~!』
真樹さんの心の声。
でも、大人しく口を閉じて、状況を把握しようとしている。
ホント、空気が読める人だな……。
〔本当に、どうしたんだろうね。七羽ちゃん……〕
〔どうしたんだろう……本当に、心当たりはないの?〕
新一さんの携帯電話がスピーカーを大音量にしたから、数斗さんと沢田さんの声を響かせた。
『数斗さんと、マナちゃんの声……? え、ええぇっ……? 七羽ちゃんがここにいるってことは……怒っちゃった七羽ちゃんに何したか、マナちゃん本人から聞き出すってことか?』
むむ、と眉間にシワを寄せて、真樹さんはなんとか状況を把握した。
〔ちょっとぶつかっただけなんだよ、ほんのちょっと。それだけだったのに……意味がわからないよ。数斗くんは、大丈夫? すっごく怒ってたみたいだし、フラれたって……〕
〔うん……〕
〔わたしのせいなの?〕
〔君のことも、何か言ってたけど……わからないな。七羽ちゃんとは、何を話したの?〕
〔特別なことは、別に……。最初から、わたしが嫌いだったみたいだね……もしかして、邪魔だったのかな。数斗くん達だけで、居たかったのかも……。ほら、その……言いにくいけど、異性だけに、ちやほやされたいような、女の子、だったのかも〕
口ごもって言うのは、数斗さん達を独占したがった女子だったのかも、と。
『はぁああ?』
『え。七羽ちゃん、が? そんなわけないじゃん』
『数斗……まだ、キレんなよ』
新一さんが、スッと目を細めて冷えた雰囲気をまとう。
〔そんなわけ、ないよ〕
数斗さんの声が、震えている。
……怒りで、震えていたりしない?
〔でも、ほら……会ったばかりだし、そういう子だったんだよ……。残念だけど〕
〔……〕
〔数斗くんも、見たでしょう? 急に怒鳴って……手、痛かった……わたしだけに、怒ってて……怖かったよ〕
私が怒っていたのは、逆ハーを邪魔されたから、という理由にするとは……。
外面の厚さを保ってきたのも、伊達じゃない。
〔……そうか。ごめんね、今日は破局の傷心を癒すために来てもらったのに〕
〔あはは……数斗くんも、傷心になっちゃったね。わたしも、なんだか、ごめん〕
〔いいんだよ……〕
〔……ねぇ、数斗くん。どうして、あの子を好きになったの?〕
〔ん? あー……一目惚れだよ〕
〔一目惚れ? ああいう小さくて可愛い子がタイプだったんだね?〕
〔可愛いね、ホント。でも、そうじゃなくて……目が合った瞬間に、本当……なんて言えばいいのかな。目が綺麗だったんだ〕
目が……綺麗……。
今日、かち合った視線を思い出す。
とても、綺麗な黒い瞳だった。
『数斗。本人聞いてるぞ。わざとか? コレのついでに、口説いてるのか?』
『え? コレ、数斗は聞かれてるって知ってるよね? 聞かせてる? わざと聞かせてる?』
数斗さんの声が、なんとなく、元の調子に戻った気がする。
……本心で言ってる、気がする、のは……気のせいにしよう!
〔あぁ~! 目は心の窓って言うしね! それで、心が綺麗な子だって思っちゃったんだね……〕
〔うん、そうだね〕
〔……ねぇ、数斗くん。わたしの目は……どうかな?〕
甘ったるい声を出した沢田さんは、仕掛けてきたらしい。
真樹さんが「ヒュッ」と喉を鳴らす。
顔色を悪くして、私と新一さんと携帯電話を順番に見ていく。
私は両手を振って、宥めるジェスチャーを送った。
『え、ええっ……嘘だろ、え? マナちゃん、数斗を狙った? でもおれ、ちゃんと数斗が、七羽ちゃんにゾッコンだって……応援するって言ったのにッ……! 嘘!? つまりそういうこと!?』
『古川……冷静だな。今、数斗に沢田の奴が、接近してるはずなのに』
修羅場を悟った真樹さんの隣で、新一さんが私をチラッと盗み見る。
数斗さんに迫っていると思うと、そりゃあ少なからず、モヤッとはするけど…………。
数斗さん、沢田さんに殺意しか抱いてないからなぁ……靡くという心配をする要素が、一切見付からない。
〔沢田の目は、真っ黒に濁っているようにしか見えないな〕
〔……えっ?〕
『数斗~~~っ!?』
『クッ……! 数斗っ……限界か』
心の中で絶叫する真樹さんと、噴き出すことを堪える新一さん。
私も、ズバッと言い放ったことに、目を点にしてしまう。
〔え? い、今、なんてっ?〕
信じられないのだろう。
外面が完璧だから、そんなことを言われるはずないって、自分の耳を疑ったに違ない。
〔七羽ちゃんと違って、真っ黒な心しか見えないって言った〕
『容赦ないな、数斗。別にいいけど、古川が聞いてるって、忘れてない? あんまり怖いって思われないようにした方が……いや、怖いとかもう思われてたな? こういうところか?』と、新一さんは気付く。
〔ひ、酷いよっ。なんで、なんでそんなこと言うのっ? 数斗くん? 変だよ!〕
〔事実を言っただけだよ。七羽ちゃんの方が、沢田より百倍は可愛い。沢田なんて、その辺のゴミクズじゃない?〕
〔は、はぁイ?〕
今、”はぁ?” とか言いそうになって、無理矢理、”はい”に言い換えた。
流石、外面が厚い腹黒女子。
でも、声、上ずってる。
『ボロクソ! 数斗が、ボロクソ言った! あのマナちゃんに、ゴミクズって!』と、震え上がる真樹さん。
〔だって、心が綺麗な七羽ちゃんが、怒って大っ嫌いだなんて言うくらいだよ? 相当心、汚いんでしょ?〕
〔な、なんでそんなっ! 変だって、数斗くん! じゃあ、あの子を信じるから、わたしが悪者ってこと!? 酷いよ! わたし達、友だちだと思ってたのに!〕
〔うん、正直、信じられないんだ……〕
〔だ、だよね!〕
〔沢田の方がね〕
〔えっ〕
〔七羽ちゃん、自分が悪く言われても、我慢するタイプなんだ。この前、坂田に絡まれた時だって、俺のために勇気を振り絞って言い返してた。他人を傷付けることなんて、普段なら言えるような子じゃないんだ。だから、沢田に大っ嫌いって言ったのが、精一杯だったんじゃない? そんな七羽ちゃんに、大っ嫌いって言わせてさ……何したの? 君〕
手汗握る流れだ。
ドキドキ。
追い詰められる? 白状させられる?
『……なんか、心なしか、古川が……楽しんでないか?』と、新一さんにバレた。
え、だって。サスペンスドラマみたいでは!?
ここはもう駆け引きが、クライマックスに向かっている……!
〔なっ、何もしてないってば! なんでなの!? ど、どうしてッ! どうしてわたしを信じてくれないの!?〕
〔君のこと、信じる価値ないからだよ〕
〔なッ……!〕
〔知ってて来たよね? 俺が七羽ちゃんを口説くって。それなのに、ランチで、兄妹みたいって……サラッと恋愛対象外にしようとしてさ。酷いな〕
〔そ、それはっ! ただ、思っただけで!〕
〔そうなの? そうなんだろうね。七羽ちゃんからも聞いたよ。俺が七羽ちゃんのお兄ちゃんみたいだねって、言ったって。……傷付いたよ〕
サッと、新一さんと真樹さんが、私の顔を見た。
……傷付いた、のは多分、数斗さんのことかと……。
おず、と顔を伏せて、新一さんの携帯電話を見つめた。
〔ご、ごめん! だ、だって、本当に……仲のいい兄妹に見えて、悪気があったわけじゃないの!〕
〔まぁ、わかるよ。七羽ちゃん、可愛いしね。妹みたいに可愛がっちゃうんだよ、新一も、真樹もさ〕
〔う、うんっ! そうなんだよ! ちっちゃくて可愛いから! わたしだって〕
〔嘘つくなよ。そんなこと思ってないくせに、そうやって平然と嘘を吐くんだな? だから目の中、真っ黒に濁ってるんだよ〕
〔はっ……?〕
ズバッと、数斗さんが両断しては、また言い放つ。
〔何を言っても、嘘にしか聞こえないよ。七羽ちゃんが天使みたいに心が綺麗だって表現するなら、沢田は悪魔みたいに心が濁っているってことかな。いや、悪魔にも失礼かな? ドブみたいに濁ってるんだろうね〕
〔ひ、ひどい……わ……笑えない、よ……〕
〔俺、笑ってないけど?〕
私は『ひえぇえっ』と真樹さんと凍えるような寒さを感じて、震え上がった。
今、沢田の前にいる数斗さん……人を、視線で凍らせられるのではないか……?
〔ねぇ、なんで俺の恋路を邪魔するのさ。わざわざ俺が誰かを想ってる時になんて…………何? 誰かのモノを盗りたいっていう悪癖持ちだったの?〕
〔ち、ちがッ! 違うのッ! 本当は前から、ずっと! 片想いしてて、諦めきれなくてッ! だから〕
〔ハッ。このタイミングで? 横恋慕って……どう足掻いても、悪女じゃん〕
〔違うっ、違うって〕
〔いいから、その演技。もう、うざい。七羽ちゃんは、素直で純真無垢で天真爛漫なのに……同じ女として、どうしてそこまで汚れられるのさ?〕
す、凄まじいッ!
数斗さん! めっちゃ私を持ち上げて、沢田さんを落とすだけでは飽き足らず、ゲシゲシッと踏み潰しているッ! 容赦ない!
『古川……自分が褒められていることより、この話の行方しか気にしてないような……?』と、新一さんに、またもやバレている。
いや、もうっ!
数斗さんの猛攻に、あの外面がどこまで耐えれるか、気になって気になって、しょうがないでしょ!?
〔女子が女子に可愛いって言うのは、本心とは限らないってのは理解してるけど……心の中で自分のこと、本気で七羽ちゃんより可愛いって思ってる? 鏡に、ヘドロが映らなかった?〕
〔い、いや……嫌……いやっ……なんで? 本気で”あんな子”、可愛いって思ってるの?〕
〔そう言ってるだろ。”あんな子”って何さ? 貶さないでくれる?〕
お! ボロ出してきた!?
〔いやいや、おかしい、おかしいって数斗くん。子どもみたいに小さいから、庇護欲で可愛いって思うだけで、異性としての魅力とは違うって。よく考えてみてよ〕
〔ハハッ。逆に、自分には異性の魅力があるってこと? どこ? ヘドロにしか見えないって〕
〔へ、ヘドロって!〕
ヘドロ……! 煽る煽る、数斗さん!
〔普通におかしいでしょ! あんな子より、わたしが可愛いって!〕
〔どうして? どこが?〕
〔数斗くんは、珍しい小動物に夢中になっているだけなんだよ!〕
〔小動物ならともかく、珍しいって何? それなら、猫被りがとんでもない悪女の方じゃない?〕
〔悪女じゃないって! あんな子! ちんちくりんなだけじゃん!〕
ギシ、と軋む音がした。
ん? となんの音かと、三人で不思議に思ったが、会話の方に意識が戻る。
〔ちんちくりんな珍獣! 素直で純真無垢? ただのあか抜けなくて、子どもなまま年を重ねただけのイマイチすぎる子なんだよ!? ナチュラルメイクって聞こえはいいけど、ただ下手なだけで童顔で誤魔化してるだけ! あんな子、数斗くんに釣り合わないよ! だから兄妹にしか見えないって思っちゃうんだよ!?〕
おお! かなりボロを出した! すごい!
でも、兄妹発言を正当化するために言ったみたいに修正をする! 本当に、やり手な腹黒女子だ!
『この子、貶されてるのに、全然ダメージ受けてない気が……』と、また新一さんが私を盗み見る。
真樹さんも貶した言葉に口をあんぐりさせては、矛先の私を気にしていた。
いや、釣り合いって言葉は、もう今日は散々吐かれたので、今更です。
〔釣り合わない、ね……。で? 沢田なら俺に釣り合うって、言いたいわけ?〕
〔そ、そうだよ? 変じゃないでしょ? わたし達〕
〔どう考えても、人間とヘドロは釣り合わないよ〕
ヘドロぉおお!
バッサリと言い放つ。
あんな腹の中はともかく、美人な女子に向かって、ヘドロ連呼!
数斗さんの情け容赦ない毒吐き!
〔ヘドロ、ヘドロって……いい加減にしてよ! どうしてそこまでわたしを貶すの!?〕
もう限界だと甲高い声で叫ぶ沢田さん。
〔意趣返しかな。七羽ちゃんも、いい加減にしてって叫んでなかった? それに自分が一番わかってるくせにって、言ってたよね。自分でわかってるんでしょ?〕
〔だぁかぁらぁ! あんなチビブスに、何もしてないってば!!〕
私のための意趣返し。
トドメになったのか、ついに定着していた私の呼び名を叫んだ。
〔数斗に釣り合わないって、ダサいって、遠回しには話してたけど! でも全然許容範囲だから! 親切に優しく言ってただけだもん! あの子だって、釣り合わないからって、頑張って努力しても、足りなくて、最後にはボロボロになるって! あんなヒステリックに叫んで逃げたんだから! 正しかったじゃん! 親切でしょ!?〕
親切、か。
確かに客観的に見れば、無害な会話だった。
本当に客観的に見れば、だ。
彼女の言う親切は、ドロドロの真っ黒な腹から出されて、綺麗に着飾っただけの言葉。
それを聞きつつも、その真っ黒な腹の真の言葉を聞いていた私には、親切の薄っぺらい皮を被ったどす黒い悪い人でしかなかった。
〔親切なわけないだろ、このヘドロ。七羽ちゃんは、ずっとお前のその悪意に気付いてて、我慢してたんだよ〕
数斗さんは、強く吐き捨てた。怒りを孕んだ声。
急に、プツリと切れてしまった。
新一さんの電話画面には、通話が終わったという表示がある。
「えっ? ど、どうしたんですか!? か、数斗さんはっ!?」
「大丈夫だ。終わったってことだろ。すぐに数斗が戻ってくる」
『あとは、古川に聞かせたくない言葉で罵るんだろうから、切ったんだろうな』
ふぅ、と新一さんは息をついた。
慌てふためいた私も、私には聞かせたくないほどの激しい罵倒をしたいのだと受けて止めて、新一さんと同じく肩を下げて力を抜く。
……殺す、とか言ってたけれど、本当にしないよね。
怒りを表した心の声であって、有言実行されるわけがない、はず。
「……もう……事情、聞いていいっすか?」
ポッカーンと唖然とした真樹さんが、詳しい事情を話してほしいと、声を絞り出した。
外面完璧腹黒女子の本性を、ちょびっと録音完了!
こうやって悪い人と戦えることに、
七羽はちょっと尊敬の意を抱いたり。
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2023/02/17