表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/66

11 いい子は守らないと。(新一視点)


本日二話目更新。


新一視点。


短め。



 うっかりと、数斗が想いを寄せている女子の頭を撫でてしまった。


 妹枠として可愛がると宣言したものの、こうしてワケありな雰囲気で二人きりで話している時に、これはマズい。


 本気で、古川を想っている数斗が、誤解で嫉妬したら面倒だ。


 てか、ずっと視線が突き刺さってる気がするんだが。



 どうして、古川まで数斗が怖いとか言ったのかは、わからないけど、マジでウケた。


 いやだって。百人中百人の女子は、数斗を優しいって言うだろうから。


 数斗、何かやらかしたのか?

 心当たりがあるとすれば……あ、坂田の件か?

 見てて怒ってる姿が、わりと怖いとか思われたとか?


 お気の毒に、ぷくくっ。



「数斗、古川が……ちょっと」


 笑みを引っ込めたおれは、真剣な雰囲気に変えて、通りの向こうの自動販売機の前に、ポツリと立つ古川を指差す。


「お前と話したいって」

「……わかった」


 告白だとかという話ではないと、ぬか喜びさせないように、深刻な話だと雰囲気で伝えれば、不安げな表情の数斗はすぐに古川の元へ向かった。


「え。どしたの? 七羽ちゃん。てか、頭撫でたよな!? 何してんの!?」

「いや……可愛くて、つい」

「可愛くて、つい!? おれは我慢したのに! おれも撫でる!」

「数斗に殺されるぞ」

「なんでおれだけダメなの!? おれだって、妹ちゃんな七羽ちゃんを愛でたいんだけど!?」


 騒がしい真樹の隣に、腰を落として飲み物を飲む。


「田中くんが、女の子を可愛いって言うの、初めて聞いた! でもわかるなぁ~。七羽ちゃんは愛でたいよねぇ!」


 声を弾ませている沢田を、横目で見る。


 悪意、か……。


 そんなの、感じないんだけどなぁ。


 気のいい女友だち枠で、沢田の悪い話なんて一切聞いたことがない。


 おれは、苦手だけど……ホント、なんとなく。

 別に、女子全般が苦手というか嫌だから、疑問には思ったことなかったな。


 女の勘って、ヤツなのか。

 自分に向けられる悪意は、わかるもんだよなぁ……。



 一度、向き合って話をしている数斗と古川に、目を向ける。

 真剣に聞いている様子の数斗。


 どっちを信じるかな……。


 沢田とは、二、三年の付き合い。

 今日まで毎日電話とは言え、古川とは会うのは、これで三回目。


 気のせいじゃないか、とか、そう言って宥めるかな?

 古川が嘘を言っているとは、流石にアイツも思わないだろうけど……。

 おれだって、そうだし……。



 沢田を、また横目で盗み見れば。


 タ、タ、タッ。


 膝の上に置かれた手の人差し指が、イライラした様子で上下に動いていた。



 は? 何コイツ。

 めっちゃイラついてるじゃん。



 そう気付いてしまったら、あとは一転した。


 真樹と一緒に古川を褒める話をしても、薄っぺらい笑みにしか見えない。


 古川だって釣り合わないような話をされたと、言っていたから。


「お似合いかも~」とか笑う声が、胡散臭く聞こえてならない。


 だいたい、お前、さっき。兄妹みたいだとか、水差すこと言ってたじゃん。

 真樹から数斗のゾッコンぶりを聞いていたはずなのに。



 うっわー。

 そうなると……コイツ、かなり外面の厚い腹黒ってこと?



 ハッ! これだから、女は怖いんだよなぁ……チッ。


 反吐が出るぜ。



 こっちは何年も交流があったのに、気付かなかった……。

 会った瞬間にわかった古川は、すげーなぁ。


 複雑な家庭とか言ってたし……多分、再婚問題とか、か?

 弟達と歳が離れてるって話に、サッと話題を変えてたしな……。


 なんか経験して、人の顔色、かなり気にしてきたんだろう。



 あんな純真無垢で天真爛漫に見えても……傷だらけかもな。


 友だちの悪口を聞いて落ち込んでも、前向きになろうとしてた。

 頑張ってんのに……いい子すぎて、損していく。



 せっかく今日を楽しみにして来たっていうのに、朝からやせ我慢させられて、可哀想に。

 心からはしゃいで笑ってても、沢田の悪意の気配のせいで、台無しにされてたんだろうな……。



 ……。

 ……数斗は、信じてやれるだろうか。



 沢田はそんな奴じゃないって、そうアイツのことを庇ったら、きっと古川は信じてもらえなかったって傷付くはず。


 紹介してくれた女友だちを悪く言うなんて、古川も相当勇気を振り絞ってくれたはずなんだから。



 それなら、おれが守らないとな……――――。



 古川の小さな頭を撫でた手を見てしまう。

 それをギュッと握り締めて、かぶりを振る。



 数斗なら、大丈夫だろう。


 初めて。

 本気で好きになった相手だ。

 自分から手を伸ばしてんだから。

 きっと、な。



 



お兄ちゃんな新一を、完全に味方につけた!


七羽視点、戻ります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ