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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
シトラを取り返すために身なりを整える

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スライム討伐

 眠れなくなってから三日後。

 九月二六日、天候:雨、午前三時。


「すー、はぁー、すー、はー。うん……。いい感じだ。全く眠たくならない。ここまで眠たくならないと僕は人ではなくなったんじゃないかと思うくらいだよな……」


 僕は苦笑いしながら立ち上がる。


「でもまぁ、日々仕事漬けの毎日を送っている僕にとっては良い休憩時間になっているのは確かだ。寝てない分、他の人より少し多く時間を使えている気がするよ。ね、黒卵さん」


 黒卵さんからの返事はない。


「反応なし。ま、いつもと同じだ。問題ない」


 僕は黒卵さんを胡坐の中心に置いて共に瞑想していた。

 なぜ瞑想しているのかと言えば、特にすることがないからだ。

 魔法の練習と体づくりをしたあとは精神的に疲れてしまう。心を落ち着かせるためにも瞑想は良いとアイクさんに聞いたので行っている。

 アイクさんに聞いた通り、瞑想はとても効果的だった。


 今日はアイクさんの仕事はお休みなので、冒険者の仕事が一日できる。

 僕は冒険者の格好に着替える。

 この時間だとまだフレイがお酒を飲んで遊んでいる可能性があるのでアイクさんの朝の仕事を肩代わりしておいた。

 無償でもいいのだが、アイクさんはお金を払うと言い、僕に銀貨九枚を手渡してきた。


 僕は午前七時にお店を出て、雨具を着てからルフスギルドに向う。


「今日は昼に帰らなくてもいいから焦らなくていいな。アイクさんからお弁当と水筒を貰ったし、花畑で食べようかな」

 

 僕は雨具のフードを深く被り、視界に入る濁った空を見た。


「今日はあいにくの雨か。気分が落ち込む。でも、天気で気分が落ち込んでたら仕事は出来ないぞ。さ、元気にギルドの依頼を受けに行こう」


 僕は薬草採取をほぼ完璧と言えるまでに上達していた。

 ミリアさんからもどの冒険者より早いと言ってもらい謙遜しながらも嬉しくなっている。

 その為、今日は薬草採取と何か他の依頼を受けるつもりだ。

 もちろん、危険の少ない依頼にする。シトラに会うため、僕はまだ死ねない。


 僕はルフスギルドに到着し、受付に向う。


「すみません。薬草採取とあともう一つ依頼を受けたいんですけど、何か僕にでも出来る依頼はありますか?」


「そうですね……。キースさんの実力なら、これはどうでしょうか」


 僕はいつも朝早く受付にいるお姉さんから依頼書を受け取る。


「スライムの討伐。一〇〇匹で金貨五枚。つまり、スライム一匹討伐したら、銅貨五枚と言うわけですね」


「その通りです。スライムを倒すのは難しくないので、キースさんにでも出来ると思いました。薬草採取の間に行えば、依頼の同時進行も可能ですよ」


「いいですね。でも、スライムを倒したという証拠はどう提示すればいいですか?」


「ギルドから魔石を砕いた回数を記録するナイフをお貸しいたしますので、それを使い、スライムを討伐していただければ数が分かる仕組みになっています」


「なるほど。わかりました。その依頼も受けさせてもらいます」


「本当ですか。ありがとうございます。上限額が金貨五枚ですから、一〇〇匹以上倒しても報酬は増えません。ご了承ください」


「了解です。一つ聞いてもいいですか?」


「はい、何なりと」


「何で、この依頼も人気がないんですか? スライムを倒すだけなら、片手間でもできますよね」


「冒険者の方々はスライム討伐を初心者がやる仕事だと思っているんですよ。つまり、自尊心(プライド)が無駄に高いんですよね」


「プライドですか……」


「スライムを一〇〇匹倒すのなら、コボルトを一〇体倒す方が、需要があると思っているんです。どちらも大切な依頼なんですけど……」


「そう言う背景があったんですね。教えてくれてありがとうございます。僕は冒険者の初心者なのでこの依頼にはうってつけです。では今日も剣と弓矢を借りますね」


「はい。了承しております。キースさん、今日も本当にありがとうございます。ギルド一同大変助かっております。お気をつけて依頼を遂行してくださいね」


「そんなふうに言ってもらえて僕も嬉しいです。では、行ってきます」


「行ってらっしゃいませ」


 僕は武器庫から剣と弓矢を装備し、赤の森へ向かった。


 ☆☆☆☆


 午前七時三〇分ごろ。赤の森入口。


「えっと、キース君。今日は薬草採取とスライム討伐の依頼を受けたのかい?」


 僕は入り口前にいるルフスギルド職員の方に依頼内容を話し、記録してもらう。


「はい。今日は時間があるので二種類の依頼を受けました。雨なのが少し残念ですけど、危険のないよう、頑張りたいと思います」


「いや~。ほんと助かるよ。雨の日はスライムが異常に多く発生するからね。他の冒険者の方にも是非やってほしいんだけど、なかなかね……」


 職員の方も頭を悩ませているらしく、苦笑いしながら僕に依頼表を見せてくれた。


「スライム討伐を受けてる冒険者さん、全然いませんね」


「まぁ、見つけたら駆除してくれるんだけど、率先しては行ってくれないから、いつも職員が倒して回っているんだ」


「そうなんですか。大変ですね。僕も一〇〇匹目指して頑張りますね」


「ありがとう。そうしてもらうと、職員たちも助かるよ」


「では、依頼に行ってきます」


「よろしくお願いします」


 僕は『赤の森』に入る。すると、ずっちゅんずっちゅんと、耳がこそばゆくなる音が聞こえてくる。


「うわぁ……入ったとたんにスライムに合った」


 スライムは雨水を吸い、いつもの二倍以上に膨れ上がっていた。


「ナイフを核に突き刺してと!」


 スライムの弱点である核に刃渡り二〇センチメートルほどのナイフを突き刺す。すると、核が真っ二つに割れた。

 スライムは原形をとどめられず崩れた。


「これで討伐数は一匹になったわけか。よし、どんどん討伐して薬草も採取していくぞ!」


 午前八時三〇分頃、赤の森内部。


「ふぅ~、これで二〇匹。本当に雨の日はよくスライムが出てくるんだな。体感一時間で二〇匹か、あと四時間くらい討伐し続ければ一〇〇匹になるな」


 僕はスライムの粘液で濡れた右手を振って、水気を落とす。


「薬草も解毒草を採取できたから順調そのものだ。お昼時には二種類の依頼が終わってるかもしれない。そうしたら、今度からもう一種類増やせるかも」


 僕は順調に行きすぎて油断の色が見えていた。


「いやいや、今は依頼の完遂を目指して集中しないと。動物だって雨のせいで人のにおいが分からないから、人が近くにいても逃げない。最悪、クマにでもであったら大変だ。僕の方から警戒しておかないと……」


 僕はスライムを討伐しながら薬草を集めて行った。

 移動中に狂暴な魔物や動物に合わずに済み、ことなきを得ている。

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