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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
シトラを取り返すために身なりを整える

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店前は飲食店の顔

「アイクさん。別に悩まなくてもいいですよ。僕はアイクさんのお店で働かせてもらえるだけでとても嬉しいんです」


「キース……」


「魔法が使えない僕を雇ってくれる職場はありません。お金を稼ぎたい僕にとってアイクさんのお店はとてもありがたい存在なんです。なので、全力で仕事するのは当たり前」


「そうか。なら、無理に休めとは言わない。だが、休んでもいいということは知っておいてくれ。疲れたと思ったら無理せず休めばいい。分かったか?」


「はい、わかりました」


「あと、キースの時給を上げる。さすがに銀貨二枚で仕事してもらうには申し訳ない。銀貨三枚で様子を見て、あげられるようだったらもっとあげて行こうと思う。その分、仕事時間を減らして、好きなことをしたり、冒険者の依頼をこなしたり、自由な時間に当ててくれ」


「なるほど。僕、仕事の合間に冒険者の依頼をこなしてお金をもっと効率よく稼ごうと思います。そうすれば、格段に速く目標金額に到達できそうです」


「ん……。仕事を自ら増やそうとしている姿勢は尊敬するが……。無理するなよ。体調の悪い状態で仕事しても効率が悪いだけだ」


「理解しています。僕が自分の体について一番わかりますから、心配しないでください」


「そうか……。よし、今から夕食時だ。忙しくなるぞ。キース、夕食を早めに食べて接客する準備しておけ」


「了解しました!」


 僕は掃除用具をしまって調理場に向い、アイクさんの作った大量の夕食を得る。

 僕の元気の源だ。大豆の一粒も残さない。


 午後七時を過ぎて僕は接客する。


 アイクさんのお店に食べにくるのは冒険者の格好をした人たちと他の仕事をしている人たちだ。

 今日も大勢の人達で店内はにぎわっていた。

 昨日来た『赤光のルベウス』さん達がまた食べに来た。


「いらっしゃいませ。ただいま三〇分待ちとなっておりますがよろしいですか?」


 僕は入口でトーチさん達に接客する。


「え、キース君だよね? ここで働いてたの……」


 トーチさんは目を丸くして聞いてくる。


「はい、そうですよ。えっと、昨日言ってませんでしたっけ? 僕、アイクさんのお店におせわになっているんです」


「だから冒険者の仕事が副業って言ってたのね。やっと理解したわ」


「その通りです。仕事の合間を縫って冒険者の仕事をこなしてもいいと許しがもらえたので、またギルドで会う機会が増えるかもしれませんね。その時はよろしくお願いします」


「こ、こちらこそ。よろしく」


 トーチさんは何度も頭を下げていた。


『赤光のルベウス』さん達は三〇分待ち、僕が開いたテーブルに案内する。

 僕は昨日と同じ注文を受け付け、アイクさんに知らせた。

 昨日来て、今日もさっそく来てくれるなんて、きっとアイクさんのお店を相当気に入ってくれたのだろう。

 僕としてもアイクさんの料理を好きになってくれてとても嬉しい。


 僕は食堂を今一度見回して誰一人嫌な顔をしていない状況を確認する。

 このお店の凄い所は皆満足した表情で帰っていくのだ。

 僕もその表情を見ると仕事している甲斐があると思える。

 僕の目的はもちろんシトラを助けるためにお金を稼ぐことだが、その副産物として人の感謝がもらえるのだ。凄い励みになる。

 たとえ、ルフス領の領主が無理難題を押し付けてきても絶対に突破してシトラに合ってやる。領主と直談判してシトラを返してもらうんだ。

 それを根底に置き、僕の生活は成り立っている。


『赤光のルベウス』さん達は他のお客さんと同様に満足して帰って行った。


 午後一〇時ごろ。


「ふぅ~、キース。店前の掃除したら上がっていいぞ」


「わかりました」


 僕はお客さんが必ず通るお店前の掃除を任された。


 ――この場所は初めと最後に絶対に通るから、お店の中以上に綺麗に掃除しないといけない。アイクさんのお店の顔なんだ。完璧を目指して掃除するぞ!


 僕は箒と塵取りを駆使して石ころや砂、落ち葉などを徹底的に掃除する。

 明日の朝も掃除するのだが、まだ真夜中に仕事が遅くなって食べるのが遅れた人たちがお店にくる。気持ちよく入店してもらうため、僕は掃除を頑張った。


 三〇分ほど全力で掃除して僕は仕事を終える。

 店内に戻り、お風呂にすぐ向い、体を癒した。

 黒卵さんを抱きかかえながら温め、僕はお湯につかっている。

 体をしっかりと温めた僕は体を洗い、再度お風呂に入ってから風呂場を出る。

 服を着替えて調理場に向った。


「あ、キース君。お疲れさま。さっきアイクから聞いたんだけど、仕事の合間に冒険者の依頼をこなしてくれるってほんと?」


 調理場には仕事から帰ってきたミリアさんの姿があった。


「はい。そのつもりです。と言うか、もう聞いたんですか?」


「ええ、アイクも驚いてた。まさかここまで仕事が出来るようになるとは思っていなかったって。体力が着いたのはもちろん、色々と常人とかけ離れているって話してたけど、どこまで本当かにわかには信じがたいかな。でも、どうして冒険者の依頼を暇な時間に受けようと思ったの? 移動だけでも時間掛かるでしょ」


「僕、アイクさんの仕事のおかげで疲れにくくなりまして長い距離を走っても息切れしにくくなったんです。全力で走れば、ルフスギルドから赤の森まで三〇分程度で行けると思います。もっと早くなるかもしれません」


「さ、三〇分……。本当なの?」


 ミリアさんは目を見開き、うそだぁと言いたげな表情。


「はい。本当です。だから、移動後に薬草の群生地をすぐに回れば半日でアイクさんのお店に帰って来られるかなって思ったんです。もう、薬草が生えている位置は一回目に森を回った時に調べたので、以前よりも早く帰って来られるはずです」


「それが本当なら、ありがたい限りだけど……、キース君の体が心配。そんなに仕事を詰め込んだら体を壊しちゃうんじゃないの?」


「壊れそうになったらすぐ休みますよ。僕、体力が回復するのも結構早いんです。心配しないでも大丈夫ですから」


「そう……。なら、明日からギルドの依頼をお願いね」


「わかりました。アイクさんのお店の仕事を終わらせたらルフスギルドに行きます。何時になるかわかりませんけど、出来るだけ早く行きますね」


 僕はミリアさんにお辞儀して部屋に向った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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