冒険者初の依頼料
「そ、そうだよ。ロミアがいないと前衛がいないんだから、勝手に死なないでね」
マイアさんもロミアさんを慰めていた。
「出来るなら、私が見ているところでドジってほしいっす」
フランさんは心に思っている言葉をこぼす。
「うぅ……、みんな」
――へぇ。パーティーメンバーがいると、仕事中に助け合えるのか。
ソロだと気は楽だけど、全部自分の責任になる。依頼が達成できなくても自分の技量が足りなかったから。
でも、パーティーならパーティー全体で総括するから、一人の負担を分けられる。その分、依頼料は分割されるのか。ん~、一長一短だな。そう考えると、僕は今のところはソロでいいかな。
「逆に『赤光のルベウス』さん達はどんな依頼を受けていたんですか?」
「私達はゴブリンの討伐よ。以来の目標数は一〇体だけど、途中でロミアがはぐれちゃったから、今日は七体どまりだったの。目標達成よりも、皆の命の方が大事よ」
トーチさんは手引きに書かれている通りの対処をとった。
それは素晴らしい行動かもしれないが、僕は少し気に食わない点もあった。
「でも、トーチさん、マイアさん、フランさんの三人が、ロミアさんがはぐれたと気づいた時、すぐにでも探していればロミアさんは死にかけずに済んだんですよ。そう思いませんか?」
「そ、それは……」
トーチさんは下を向き、言葉を詰まらせる。
「僕はちゃんと冒険者になったわけじゃないので分かりませんが、手引きに書かれている説明が全てではないと思います。ちょっとした臨機応変さも大切なんじゃないでしょうか?」
「き、キース君の言う通りだと思う。私達がもっと早く動いていればよかった」
「そうだね。私達はゴブリンを倒す依頼にばかり気を配ってた」
「ほんとそうっす。パーティーなのに、仲間を見てなかったっすよ」
「み、皆は悪くないよ。私がバカでドジなだけ……」
――ど、どうしよう。僕、またお節介な発言をしちゃったかもしれない。まさか、こんなに悪い空気になるとは思ってなかった。僕は集団行動が向いてないかもしれないな……。
僕達の乗っている馬車の中がどよ~んとした空気に包まれる。
その発端は僕のお節介な発言なので、どうにかして僕がこの空気を払拭しようと試みる。
「あ、あの~。皆さん、僕、安くて美味しい料理を大量に食べられるお店を知っているんですけど、興味ありませんか?」
「え……。安くて」
「美味しくて」
「たくさん食べられる」
「お店……」
下を向いていた四人は僕の言葉に頭を動かされ、顔を上げる。
「「「「行きたい!」」」」
『赤光のルベウス』さん達は顔を見合わせた後、皆で同じ発言をした。
「は、はい……。行きましょう」
僕はその迫力に気圧されてたじろぐ。
☆☆☆☆
午後七時頃。僕たちはルフス領の外壁に到着した。
馬車で移動したら、一時間かかってしまった。
まぁ、その間に『赤光のルベウス』さん達と色々な話が出来たのでいい時間だったと思う。
馬車は門を通過してルフスギルドに向う。
三〇分後ルフスギルドに到着した。
午後七時三〇分ごろ。ルフスギルド前。
――この時間は赤色の勇者である、フレイがギルド内にいる確率が高い。
依頼報告しないと。ただ、見つかるのも嫌だしな。まぁ酔っぱらっているはずだ。絡んでこないよな。
「じゃあ、キース君、依頼報告のあと、ギルドの入り口で落ち合おう」
「わかりました」
トーチさん達は先にルフスギルドに入っていった。
僕はフレイがギルド中にいないか確認してから向かう。
どうやら今日はまだいないみたいだ。
「よし、今のうちにぱっと報告してしまおう」
僕はルフスギルドの受付に向う。
受付の一角にミリアさんが座っていた。
『赤光のルベウス』さん達は別の受付さんに向ったらしい。
僕は一番早く終わりそうなミリアさんのもとに走る。
「ミリアさん。出来るだけ速く終わらせてもらってもいいですか。フレイが来てしまいます」
「分かった。それじゃあ、ギルドカード(仮)と取ってきた薬草を見せてくれる」
「すぐに出します」
僕はウェストポーチからギルドカード(仮)と四種類の薬草を受付台に出す。
「え、薬草を四種類とも取ってきたの……。初めてなのに凄いね」
「自分ではよくわからないんですが、凄いんですかね?」
「見つけるのは慣れればそこまで難しくないけど、移動距離が長いから人気がない依頼なの。四種類も見つけてくるなんて、上級者でもめんどうくさがってやらないよ」
「そうなんですか。僕はビラ配りで毎日走り込んでますからそこまで苦じゃなかったですよ。魔物の被害も少し受けそうになりましたけど、何とか回避しました」
「ほんと……、アイクさんの言った通りね。キース君、冒険者の素質があるかも。ソロの冒険者で四種類の薬草を一日だけの依頼で見つけてきた人は初だと思うよ」
「なんかうれしいです。走り込みの成果ですね。でも、この依頼は一種類だけなら凄く簡単な依頼ですよね。なのに何で余っているんですか?」
「皆、魔物討伐の依頼ばかり受けるから、こういった地味で必要な依頼が沢山残っているの。薬草はポーションや薬になるからとても必要なんだけど、報酬が低めだから依頼を受けてくれる冒険者が激減しちゃって……。もっと報酬を上げたいんだけど、特にこれといった技術がいる訳じゃないから金額を上げるのが難しいのよね」
「なるほど……。逆に技術を持っていない僕からするととても受けやすい依頼なので、これからも受けさせてもらいますよ。魔物も、僕が気を付ければ被害を最小限に抑えられそうなので」
「ほんと! すごく助かるよ。今度から薬草採取と別の依頼も併用して受けてもらってもいいから」
「わかりました。来週は簡単な依頼を合わせて受けます。今日の日給は金貨四枚なので悪くありませんし、依頼も慣れれば早く終われそうです」
「無理しすぎないよう、頑張ってね」
「はい。分かっていますよ」
ミリアさんは僕と話しながらも薬草の状態を見て、金貨の準備していた。口と手が全く違う動きをしている。
――凄い器用な人だな。別々のことをいっぺんにできるなんて……。僕には絶対できない。
「はい、お待たせしました。今日の報酬、金貨四枚と銀貨七枚、銅貨五枚ね。あと、ギルドカード(仮)もお返しします」
「え……、なんか多くないですか?」
「『赤光のルベウス』のロミアさんから三体のゴブリンを倒したとの報告を受けましたので、一体につき銀貨二枚と銅貨五枚、三体で銀貨七枚と銅貨五枚を今回の依頼料に合わせました」
「あ、なるほど……」
「まさか、初の依頼でゴブリンまで倒しちゃうなんて、キース君やるね」
「二体は不意打ちですけどね」
「でもすごいよ。よく頑張ったね」
「ありがとうございます」
僕は受付でお金とギルドカード(仮)を受け取り、ルフスギルドからすぐ出ていく。
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