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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
シトラを取り返すために身なりを整える

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冒険者になった理由

「えっと……。あまり見られると、恥ずかしいと言いますか、止めてもらってもいいですかね」


 僕が気持ちを伝えると、四人は改まった様子で頭を下げてきた。


「それじゃあ、僕は依頼達成の印を貰わないといけないので失礼します」


「あの! キースさん。私達もルフスギルドに行きますから、一緒に行きませんか!」


 ロミアさんに引き留められ、僕は後ろを振り向いた。


「そうですか。なら、一緒に行きましょう」


 僕は命の恩人であるロミアさんと初めて知り合った、トーチさん、マイアさん、フランさんの四人で構成されたパーティー名『赤光のルベウス』の人たちとルフスギルドに向った。


 ☆☆☆☆


 午後六時〇〇分ごろ、赤の森とルフス領の壁の間にある道。

 僕はルフスギルドが運営している馬車に乗り、移動していた。

 走ってもよかったのだが『赤光のルベウス』さん達が馬車を使わないのはあり得ない、と言ったので仕方なく乗っている。

 料金は銀貨一枚なので走った方がお得だ。


「皆さんは知り合い同士で結成したパーティーなんですか?」


「はい、私達はルフス領出身の幼馴染なんです。中等部までは一緒の学校だったんですけど、高等部から本格的にそれぞれの職種に合った講義を受ける必要があったので別々の進路に進んだんです。でも、皆、騎士になるのが嫌で再度集まって冒険者になりました」


 トーチさんが教えてくれたが、この四人はどうやら良い所のお嬢さんたちらしい。

 騎士を目指していたってことは親が騎士上がりの貴族だったりするのだろうか。


「騎士が嫌だった理由とか、聞いてもいいんですかね?」


「私は魔導士になりたかったんですけど、親が騎士になれとうるさくて……。どうしても魔導士になりたかったので親の反対を買って冒険者になりました」


 ――なるほど、トーチさん親との食い違いか。それはどうしようもないよな。でも、自分の信念を貫けるなんてすごい。


「私は貴族の許嫁にされるのが嫌で逃げてきました。本当にそれだけなので、ちょっと恥ずかしいですけど……」


 ――マイアさんは結婚するのが嫌だったのか。確かに、自分の嫌いな人と結婚するのは嫌だよな。


「私は一度騎士になったっすけど、騎士団の食材を食べ過ぎて解雇になったっす」


 ――騎士になったのに、解雇されるって相当大食いなんだな。いったいどれだけ食べるんだろう。確かにフランさんは体が大きいからよく食べそうだな。


「えっと……、私は騎士に全く向いていませんでした。団体行動が苦手、ドジ、頭が悪い。色々考えて、何で私は騎士の学校に通っていたか分からなくなっちゃったんですよね~」


 ――ロミアさんは……何となくそんな気がしていた。


「トーチさん。どこの騎士学校に通っていたかは聞きませんが、皆さんは高等部を卒業していると考えていいんですかね?」


「はい。一応皆、一七歳です」


「あ……、僕より二歳も年上の方たちだったんですね」


「二歳差と言うことはキースさんは一五歳ですか。でもなんか、キースさんの雰囲気は大人っぽいですよね。死線を潜ってきたような強者感があります。どうも、敬語を使いたくなっちゃうんですけど、ため口でもいいですかね?」


 トーチさんに雰囲気が大人っぽいと言われ、僕はちょっと嬉しくなってしまった。


「皆さんは年上なんですから、敬語じゃなくてもいいですよ。逆に気を使わせてしまって申し訳ありません」


 僕は皆さんに頭を下げる。


「ふぅ~。じゃあため口で話すことにするよ。キース君もため口でいいよ」


「いや……、僕は敬語で話しますよ。こっちの方が喋りやすいので」


「そう。なら別にいいんだけど……。それで、キース君は何の依頼を受けてたの?」


 トーチさんは食い入るように聞いてきた。


「僕はEランクの薬草採取です」


「薬草採取ね、懐かしい。私達、冒険者認定試験のお題の一つが薬草採取だったよ。一種類探すのもやっとでさ、今では生えている場所が何となく分かるけど、取れない時は一種類しか取れないから、あんまり効率がよくないんだよね。普通に働いたほうがお金儲けられるよ」


 トーチさんは経験談を語っていた。話し出すと止まらない性格なのかな。


「キース君は何種類見つけたの?」


「えっと、四種類全部見つけてきました」


「え! 嘘!」


 トーチさんは腰を浮かせそうになるほど、あからさまに驚く。


「しょ、証拠はあるの?」


 マイアさんも信じられないと言った表情で僕を見てきた。


「証拠というか、現物はここにありますよ」


 僕はウェストポーチを取り外し、四種類の薬草を見せる。


「ほ、ほんとに入っている……」


 トーチさん達は四人でポーチの中を見て唖然としていた。


「あの、何でそんなに驚くんですか?」


「いや、この四種類の生えている場所、全然違うでしょ。『赤の森』は結構広いから、移動するのにも結構時間掛かるんだよ。森の中には魔物もいるし、慎重に進まないといけない。そんな中、至る所を回って薬草を探さないといけないんだよ。冒険者に慣れてきた私達四人でも難しいのに、キース君は一人で四種類も集めちゃうなんて、凄いね」


「あの……、群生地はそんな疲れるくらい離れてましたっけ……」


「何言ってるんすか。薬草、一種類の群生地に向うのに二〇キロメートルはあるっすよ。キース君は四種類集めたってことっすから、少なくとも八〇キロメートル移動している計算になるっす。一日で八〇キロメートル移動するってわけがわからないっす」


 フランさんは何が起こっているのか分からないと言った顔を浮かべていた。


「え、でも……。ギルドの依頼は四種類集めて完璧な達成ですよね。一種類でも買い取ってもらえると思っていましたけど、依頼達成にならないと思って、頑張って探したんですけど」


「薬草採取は一種類でも見つければそれで依頼達成だよ。さすがに四種類全部集めてこいなんて、冒険者の少ないルフスギルドですらやらないよ。私なんて一種類も見つけられないのに」


 ロミアさんは悔しそうな悲しそうな表情で僕を見てきた。


「ま、まぁ……。人には得意不得意がありますから。僕はどうやら、薬草を見つけるのが得意みたいですね」


 ――最後の回復薬だけ、何カ所も群生地を巡ったという事実は内緒にしておこう。


「でも、そう考えるとロミアさんは相当遠くまで移動していたんですね」


「え、えっと……。本当はもっと入口近くにいると思っていたんだけど、入口の方角を間違えてたみたいで、反対方向に移動してたの。だから、凄い遠くの位置に一人取り残されちゃってたんだよ」


「す、すごいドジっていますね……」


「うぅ……」


 ロミアさんは年上の威厳などなく、猫のように頭をしゅんと下げる。


「でも、本当によかった。ロミアが無事で何よりよ」


 トーチさんはロミアさんの失敗を肯定するように、命がある現実を喜んだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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