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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
シトラを取り返すために身なりを整える

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冒険者の初日

 九月一九日(晴)


「ん~。えっと、午前四時〇〇分。いい時間帯だ」


 僕は起きてすぐ、アイクさんが用意してくれた冒険者の服に着替える。

 毒虫や棘付きの花などが森に生息しているらしいので破れにくい革製の素材で出来た黒い長袖に長ズボン。

 長袖の裾はしっかりとズボンの中に入れて革製のベルトでずれないよう固定する。


 靴下を履いてブーツを履く。

 ブーツも革製で履きやすく動きやすい。

 足の大きさが靴に丁度合い、靴擦れはしなさそうだ。

 心臓を守る革製の胸当て。腰当て、肘当て、膝当て、を付けて関節を守る。


 次に深い緑色のマントを着ける。

 森に溶け込みやすくなり体温の調節にも必要らしい。

 最後に手を守る革製の黒い手袋を付けて冒険者(仮)の姿になった。


 僕はマントの下の背中に黒卵さんを当て、動かないよう縄で固定する。

 ウェストポーチを腰に付けて、着替えを完了した。


「よし、いい感じだ。調理場に行って朝食にしよう」


 僕は着替え終わった状態で朝食を得に調理場に向った。

 すると、アイクさんが既に朝食を作って食卓に並べてくれていた。


「アイクさん、おはようございます。えっとこんな感じでいいですかね? どこか間違っている部分はありますか?」


 僕は自分の衣装をアイクさんに見せる。

 どこか間違っていたら一大事だ。

 元冒険者のアイクさんに聞けば間違いないだろう。


「ああ、見た感じどこも間違っていない。俺が昔着ていた服が使えてよかった。大きさも直したから合っているな。遠目から見たら冒険者に見える」


「はは……。そうですか、ならよかったです」


「それじゃあ、こいつを渡しておく。ウェストポーチにでも入れておくといい」


 僕はアイクさんから緑色のガラス瓶を三本貰った。


「これはこの前飲んだ眠気覚ましと同じですか?」


「いや、それはちょっとした回復薬だ。多少の切り傷や刺し傷なら治る。毒を食らった時も体に回る速度を遅らせられるぞ」


「す、すごい……」


「解毒薬ではないから完全に消し去ることはできないが、危険地帯を抜ける体力は稼げるはずだ。何か起こったら迷わずに飲め。傷は速く治したほうが体力を削られずに済む」


「わかりました」


「加えてこれも渡しておく。護身用に持っておけ」


 僕は刃渡り三〇センチメートルほどのナイフを受け取った。


「これは……ナイフ、ですか?」


「ああ、冒険者御用達のナイフだ」


 刃は革製の鞘に入っており、柄は滑り止め用の革が巻かれていた。

 柄を持ち、鞘からナイフを抜き出す。

 ナイフの色は黒一色で、刃まで真っ黒だった。

 一方は研がれた刃、もう一方はギザギザとしており、のこぎりのようだった。


「えっと、どうしてこれを僕に渡したんですか?」


「護身用だと言っただろ。冒険中何が起こるか分からないからな。ルフスギルドに鈍らを持たされて戦闘中に剣が折れたりしたら一大事だろ。そのナイフは俺が冒険者時代に使っていた優れものだ。一級品だから簡単に壊れたりしない。左腕に付けておけ。最悪防御するときにも使える」


 アイクさんは僕の左腕にナイフの鞘を当て、鞘から出ている二本のベルトを締め固定してくれた。


「よし、これでいつでも取り出せるな」


「は、はい。ありがとうございます。でも、アイクさんって過保護だったんですね」


「バカ言うな。これくらい準備して当然なんだよ。遠足気分で冒険者していると死ぬぞ」


「ご、ごめんなさい。気を引き締めていきます」


「その意気だ。いいか、何かあったらまず逃げろ。足は速いだろ。だったら安全地帯にまで逃げて、危険な魔物はベテランの冒険者に任せておけ。新人は死なないことが最優先だ。冒険者の鉄則だぞ」


「はい、心得ています」


 僕はアイクさんに冒険者の話を聞いて自分への助言と考え、仕事に活かそうと思う。

 アイクさんと話していたら、午前五時まで残り一〇分を切っていた。

 すぐさま朝食を終えて外に飛び出そうとする。


「おい、キース。弁当と革製の水筒を持っていけ。昼に何も食べない気か」


「あ、忘れてました。じゃあ、行ってきます」


「ああ、頑張ってこい」


「はい!」


 僕は鉄製の弁当箱と水筒をウェストポーチに入れて、ルフスギルドまで思いっきり走る。

 地面の土を抉りながら速度を出し、午前四時五九分に何とか到着した。


「はぁ、はぁ、はぁ……。間に合った……」


 僕はルフスギルドの中に入る。だが、受付のお姉さん達以外誰もない。

 やはり朝早くから仕事をする人は少ないのかもしれない。それなら僕にとって好都合だ。

 他の人に睨まれる心配がない。


 僕はギルドの受付に向い、朝勤務のギルド員さんにギルドカード(仮)を見せる。


「ギルドカード、ありがとうございます。確認が済みましたので、お返しします」


 僕は受付のお姉さんからギルドカード(仮)を返してもらう。


「Eランクの依頼、赤の森に分布している薬草の採取。解毒草と回復草、解麻痺草、解熱草、を各五本ずつ集めてください。報酬は一種類につき金貨一枚です。取り過ぎは生態系への影響がありますので、必ず規定を守ってくださいね」


「わかりました。えっと、武器の貸し出しをしていると聞いたんですけど、かしてもらえますかね」


「了解しました。ではこちらのお部屋にお越しください」


 受付のお姉さんは立ち上がり、僕を案内した。

 僕が案内されたのはルフスギルドに完備された武器庫だった。


「この中から好きな武器を選んでください。ただ、壊したりなくしたりされた場合は弁償と言う形になりますのでくれぐれもご注意ください」


「わかりました」


 僕は自分の身の丈に合った質素な剣と練習しておきたい弓矢を手に取る。

 質素な剣は腰のベルトとズボンの間に差し込み、弓は左手で持つ。

 矢筒は腰当てに縛り固定した。


「よし。これで準備は万端だ。今すぐ『赤の森』に向うぞ」


 僕は『赤の森』がある方向に走り、ルフス領の辺境を守っている大きな壁に到達する。

 今の僕が走って一時間ほどかかったので少し前の僕なら五時間はかかっていただろう。


 ルフスギルドを出たのが午前五時三〇分。

 壁に到着したのが午前六時三〇分。

 まだまだ、早朝だ。

 その為、壁の見張りをしている兵士も眠たそうにしていた。


「すみません。通ってもいいですか」


 僕は眠たそうにしている兵士に話しかける。


「あ~、身分証明書を提示してください」


「はい。このギルドカード(仮)でいいですかね?」


「問題ありません」


 僕は兵士にギルドカード(仮)を手渡した。


 兵士は僕のギルドカード(仮)を『赤色魔法:ファイア』で燃やした。


「え……、何しているんですか?」


「本物かどうかを調べているんですよ。このギルドカードは仮ですから、ルフス領でしか使えません。別の領で使われると犯罪になるので、こうしてギルドカード(仮)を燃やして、ルフスギルドの物か確かめているんです」


「そうなんですか」


『ファイア』はしだいに消えていき、ギルドカード(仮)は燃えずに残っていた。


「確かに本物のギルドカード(仮)ですね。どうぞ、お通りください」


 壁の入り口が開き、外の世界に出る。


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