『生活魔法』と『無色魔法』
「人間は皆、魔力を持っていますよ。キース君が持っていないのは三原色の魔力です」
「魔力と三原色の魔力って何が違うんですか?」
「ん~。簡単に言うと、キース君の魔力は空気みたいなものです」
「空気?」
「人は息を吸わないと死にますよね。それと同じです。人の体は魔力が流れていないと死んでしまいます。なので人間は体の中で魔力を常に作り出しているんですよ。足りない時は大気から取り入れたりもします。他種族は例外ですけどね」
「へぇ……」
「逆に三原色の魔力は産まれてくる僕たちに神が与えた副産物と言われています。人間はひ弱ですから、ただの魔力だけでは大昔の時代を生き残れないと考えたんでしょうね。三原色の魔力の特徴は普通の魔力を原色の魔力で塗り替えられるところにあります」
「え……、どういう意味ですか?」
「ただの魔力だけでは七色のどの色にもなりません。ですが三原色の魔力を混ぜることで普通の魔力を三原色の魔力にして使えるようになるんです」
「つまり、使い道のない魔力を使い物にするのが三原色の魔力と言うことですね」
「その通りです。キース君は理解力も速いんですね」
「い、いや……。普通ですよ」
「なので白髪のキース君にも体の中に魔力があるんです。大変かもしれませんが生活魔法はきっと使えるようになるはずです。練習してみたらどうですか?」
「でも、魔法に頼るのはよくないってアイクさんが言ってましたし……」
「生活魔法に頼るような人間は誰もいない。なんせ頼りなさすぎるからな」
アイクさんは腕を組みながら僕の発言を否定した。
「キース君。今、僕が見せましたよね。『メラ』で何が出来ますか?」
「火起こし……です」
「そう。生活魔法は頼りがいの無さすぎる魔法。三原色の魔力を使わなくとも使える魔法なので『無色魔法』とも言われますね」
――『無色魔法』黒卵さんが使っていた魔法と同じだ。もしかしたら、同じ類の魔法なのかも。
「『無色魔法』ってなんか僕にぴったりの魔法ですね! 早速練習に付き合ってください! リークさん!」
「ちょ、ちょま!」
僕とリークさんは再び、裏庭に向った。
「リーク、死ぬなよ~」
「ちょ! アイクさん! 助けてください! 僕、これ以上魔力を使ったら死にます!」
「お前はさぼり癖が着いてるから多少の魔力は残っているだろ。たまには限界ギリギリまでつかってみろ」
「そ、そんな! 厳しすぎる! 誰か飴を僕にください!」
「今日のお礼に僕がリークさんに飴を買ってあげますね」
「そ、そう言う意味じゃ……」
結局僕はリークさんが魔力切れで気絶するまで『生活魔法』の練習を続けた。
☆☆☆☆
「はぁ……、はぁ……、はぁ……。し、死ぬかと思いました」
リークさんは料理台に頬をくっ付けてグデ~っと伸びていた。
「ご、ごめんなさいリークさん。僕がお願いしすぎたばかりに目の下にくまが出来るほど疲れさせてしまいました」
僕はリークさんに頭を下げる。
「あ~いいよ、いいよ、たまにはいい運動になったから……」
リークさんは何とか動かせる右手を持ち上げて小さく振る。
「本当に申し訳ございませんでした。これは、さっき露店で買ってきた金平糖です。お納めください」
僕は手物の小瓶をリークさんの差し出した。
「苦しゅうないぞ……。何てね。ありがたくいただくよ」
僕は以前リークさんから貰った金貨一枚を使ってリークさんに甘い金平糖を買ってきた。
――実際、還元しているだけだ。でも、リークさんに色々教えてもらったから、夜中にでも練習が出来る。
少しでも生活を楽にするために生活魔法を使えるようになろう。
沢山やることが増えたな。シトラ、僕がシトラに会うときは全く違う男になっているかもしれない。少しでも頼りがいのある男になるから。待っていて!
僕はシトラに念をとどけるように心で強く誓った。
その後、僕とリークさんは遅めの夕食を得てお腹いっぱいになった状態で少し苦しい思いをしながらお風呂に入り体を洗う。
リークさんとお風呂の中で雑談して少し仲を深めた。
僕達はお風呂から出たあと歯を磨き寝る準備を整える。
その頃ようやくミリアさんが帰ってきてふらふらになりながら倒れ込むところにアイクさんが支えに入って背負いながらお風呂に向った。
「おじゃまな僕達はさっさと寝ようか」
「そうですね。僕達がいたら本音で話せませんから」
僕とリークさんはアイクさんを避けるように動き、自分たちの借りている部屋に向う。
部屋に着いた僕は紙に金貨二〇〇枚と書いて部屋で目に一番着く場所に画鋲で張り付けた。
開いている窓から空に向って神様に祈ったあと、ベッドに飛び込んで目を瞑った。
黒卵さんを抱き寄せて明日の仕事を全力でこなすと決めた。
そのまま僕は眠ろうとする……。
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