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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第二章 シトラの為に……

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戦闘経験を積む

 ――リークさんと手合わせか。彼の力量が全然わからない。エルツさんみたいに筋骨隆々でもなければ、アイクさんみたいなしなやかな筋肉でもない。

 僕から見たら体の芯が細そうに見えるんだけど。でも、戦闘経験が積めるのは大きいぞ。藍色の髪の人と戦える機会は滅多にない。少しでも何かを吸収しよう。


 僕は腹をくくり、リークさんの待つ裏庭に向った。


 ☆☆☆☆


「いい広さだね。これくらい広ければ、戦闘経験がそこそこ詰めそうだ」


 リークさんは腕を高く伸びして、体を解している。


「リークさんは戦闘経験が豊富なんですか?」


「職業柄ね。情報を奪うのも命懸けだから、戦う場面は結構多いよ。命を守れるのは自分しかいないから、結果的に戦闘経験がものをいう時があるんだ」


「ですよね……」


「ん~、まずは素手の殴り合いから、やってみようか」


「は、はい!」


 僕とリークさんは八メートルほど離れて向かい合っている。


「じゃあ、一回目は素手のみの戦闘。僕がコインを上に投げて地面に落とすから、地面についた瞬間が戦闘の始まりの合図ね」


「分かりました」


 僕は黒卵さんを背負い、落ちないように紐で結ぶ。


「準備はいいかい?」


「大丈夫です」


「なら、始めるよ!」


 リークさんは金色の硬貨を親指で弾き、上に放った。

 硬貨は弧線を描き、重力によって地面に落ちる。

 地面に硬貨が落ちると、甲高い音が鳴った。


「ふっ!」

「はっ!」


 僕はリークさんの手口が分からない。だからこそ突っ込んだ。リークさんの攻撃を待っていたら、自分が的になってしまうと思ったのだ。


 ――リークさんは僕が様子を見ると読んでいたはず。なら、僕は初速で一気に間を詰めて殴り掛かる。


「いい判断だ。キース君、戦闘の才能あるかもね」


「えっ……、何で僕浮いて……、ぐはっ!」


 僕はいつの間にかリークさんに手頸を掴まれており、視界の上下が逆さまになっていた。

 視界が反転したまま、顔面から地面に落ちる。


「い、いったい何が……」


「キース君が殴り掛かってきた威力を使って、キース君の体を持ち上げて空中でくるっと回しただけだよ」


 リークさんは平然とした顔で今の一瞬に起こった出来事を説明する。


「その行程を一瞬で行うなんて……。全然見えませんでした」


「僕も、キース君の初足は全く見えなかったよ。ただ、キース君が僕に殴りかかって来た時、殺気がだだ漏れだったから、どこ狙っているのかすぐわかった。そのお陰で攻撃をかわせたんだ」


「殺気ですか……、確かに殴り掛かる時は強気でいるかもしれません」


「よし、どんどんやろうか。僕の戦闘訓練にもなりそうだ」


「よ、よろしくお願いします」


 僕はすぐに立ち上がって、深くお辞儀する。


「次は近距離から始めるよ」


「はい!」


 僕とリークさんの距離はざっと二メートル。

 足を一歩踏み出せば攻撃の間合いに入る程短い距離だ。


「脚でも拳でも好きな攻撃を仕掛けてきて」


「わかりました」


 僕は右手を握って、拳を作る。一歩踏み出してリークさんの鼻を狙い、真っ直ぐ殴り掛かった。


「ほいっ、ほいっ、ほいっと」


「ぐはっ!」


 僕はリークさんに三発の打撃を食らわされ、後方に殴り飛ばされる。


「い、痛い……」


「キース君。今、僕がナイフを持っていたら、君は死んでるよ」


 キースさんはどこに隠し持っていたのか分からない小型のナイフを手に持ち、脅してきた。


「そ、そうですよね」


 ――リークさんの動き、全然見えなかった。見えない攻撃をどう回避すればいいんだ。


 僕は考えながら起き上がる。


「ほいっと!」


「え……、ふぐっ!」


 僕は起き上がり際にリークさんの回し蹴りを顔面に食らい、蹴り飛ばされる。


「起き上がりに注意。隙だらけだったから思わず蹴りこんじゃった」


 僕は薪が積まれている壁に衝突し、薪が数個ほど頭に落ちてくる。


「そ、そんなこと言われても……って、うわっ!」


 リークさんは僕が座り込んでいるにも拘らず、僕に向って飛び蹴りを繰り出してきた。


 僕はすぐさまその場を移動し、呼吸を整えてから拳を構える。


「よしよし、ちゃんと僕の話は聞いていたね。吹き飛ばされても相手は待ってくれないよ。魔物ならなおさらだ。相手は容赦なく止めを刺してくる。倒されてものんきに起き上がってたら殺されるからね」


「は、はい!」


「うん、いい構えだね。基本の構えだけど、一番殴り掛かりにくいよ」


 僕は右手を少し前につき出し、左手を脇の横に近づける。

 膝は軽く曲げて、いつでも動けるよう準備しておいた。


 ――リークさんはとんでもなく速い攻撃で僕に殴り掛かって来てる。勝つためにはリークさんの動きを止めて、渾身の一撃を放つか、カウンターを狙うしかない。

 どっちにしろ待っていても僕の戦闘経験にならない。強い人にはどんどん殴られて体の動きをしっかり見ないと。


 僕は初めと同じように直進してリークさんに殴り掛かる。

 今回は大降りではなく、小さく引いた右拳を前につき出した。


「ふっ」


 案の定僕の拳はリークさんに躱され、空を切る。だが、大振りにしなかった分、体の小回りが利いた。

 回避された方向に、体を向け次の攻撃を放つ。

 右拳を出す際に引いておいた左脚をリークさんの脇腹目掛けて振り抜いた。

 リークさんは僕の左脚を受け止める気なのか、右手で脇腹を守っている。


「はっ!」


「これは受けたら駄目なやつだっ!」


 リークさんは僕の蹴りが腕に当たる瞬間、背を逸らせながら、僕の脚を棒に見立てて飛び越えるように躱した。


 僕は左脚が躱されてしまった。流れを止めないために、勢いの付いた動きに乗せるように右足の踵をリークさんの側頭部目掛けて蹴る。


 リークさんは頭を少し後ろに動かして右足も躱したあと、僕の右足が空中にある間に掴みねじって、体を回転させられた。


 僕は空中であり得ないほど回ったあと地面に背中から叩きつけられる。


「ぐはっ! はぁ、はぁ、はぁ……。あ、当たらない……」


「いや~、ひやひやするわ~。多分僕、キース君の攻撃を一発でもくらったら致命傷になっているよ。だから全部かわさざるをえなかった。一回受けてみようと思ったけど、全身の骨が折れる錯覚を見たいね」


「そ、そんなに僕の攻撃力が高いんですか……」


「そうみたい。でも、当たらなかったら、威力の高い攻撃でも致命傷を与えられない。キース君は本当に戦闘経験ないの? 所々でいい動きをするから、死地でも潜ってきた冒険者みたいだったよ」


「そ、そうですかね……」


 ――確かに死地はニ回くらい踏んでるな。フレイと領主に殺されかけたけど、何とか生き残っている。それが戦闘経験になっているのなら、死にかけた甲斐があった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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