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ドラゴンの卵を孵して、大切な家族と王国一周旅行がしたい ~無職が無色で無双する~  作者: コヨコヨ
第七章 悲惨なフラーウス領

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考えるのをやめる

「わかった、じゃあ、一応動きやすい服を買いに行こう。服屋さんが空いているかわからないけれど」


 僕たちは仕事をこなすためにシトラの冒険者服を買いに行く。

 服屋は一応開いていた。食べ物ではないため、オルソプテラの被害に会っていないけれど服屋というか、鎧屋になっている。

 鎖帷子は丁度いいので三人分買っておく。冒険者服も少しだけど売っていた。シトラに見に纏ってもらい、大きさを合わせてもらう。

 いつもスカート姿のシトラがズボンを穿いていると、印象がガラリと変わる。


「あ、脚が太いからあんまり見ないで」


 たいして太くないと思うのだけれど、シトラからしたら嫌なのかもしれない。そういう恥じらいのある姿も可愛い。

 服装を整えたら、さっそく依頼を受けにフラーウスギルドに戻る。


「どんな依頼があるんですか?」

「本当に依頼を受けるんですか……」

「もちろんです。依頼を受けないと、食堂が使えないみたいなので」

「わ、わかりました。では、オルソプテラの駆除の依頼を受けてください。一キログラム辺り銅貨一枚です」

「なるほど。でも、倒したオルソプテラは燃やしたいんですけど、ダメですか?」

「魔物を燃やす……。少々お待ちください」


 受付嬢は席を立ち、誰かに相談しにフラーウスギルドの奥の方へと走っていた。受付嬢と共に目つきの悪いお姉さんがやってきた。


「おいおい、本当に冒険者が来たのかよ」


 粗い金髪を掻きながら、葉巻を吸っているガラの悪そうな女性。おそらく、フラーウスギルドのギルドマスター。

「あー、私はギルドマスターのバチルだ。そんで、オルソプテラを燃やすって、どういうことだい?」

「倒したオルソプテラは他の個体の餌になってしまうので、灰になるまで焼き尽くした方がいいと思いました。焼却炉で、燃やせるなら凄く楽なんですけど」

「そんなことで、減る数とも思えないが」

「今のオルソプテラたちは死んだら他の個体が食す影響で、魔力が循環しています。その循環を断ち切るために共食いさせる訳にはいかないんです。この場にとどまっているなら、今すぐ手を打つべきだと思います」

「ここまで、積極的な奴も珍しいな。まあ、何日で諦めるのか見ものだな。好きなだけ持ってくるといい。全部焼却してやる」

「ありがとうございます。好きなだけ持ってきます」


 僕たちはフラーウス領で初めての仕事を受けた。


「さて、出来るだけ、人気が少ない所で仕事をこなした方がいいよね」


 僕たちは街の北側から出て人気がない平原にやってくる。

 もう、そこら中にオルソプテラが、腐った肉から湧き出たウジのように発生していた。

 共食いしている個体が多く、食物などを食い漁りつくしてしまったのだろうと察する。


「じゃあ、早速仕事していくよ。シトラとミルは僕がオルソプテラを倒すまでアルブと一緒に待機していて」


 僕は『無視』を使い、オルソプテラに攻撃されるのを防ぎながらシトラとミルから距離を取る。

 体の中にある大量の無色の魔力を毛穴から排出するように意識すると大量のオルソプテラが僕の周りを飛び始めた。

 口を開いるだけで口の中に入り込んでしまうため、布で口や鼻、耳を覆っている。


「これだけいると、適当に振っても倒せちゃうな」


 僕はフルーファの柄を握りしめ、空中で飛び交うオルソプテラの群れを叩き切っていく。

 魔力を含んでいるため、フルーファがピーナッツを食べているのかと思うくらい少し喜んでいた。

 三〇分くらいフルーファを振り続け、地面に死骸が山のように積み重なっていた。


「き、キースさん、これ、全部持って帰るのは難しくないですか……」

「とりあえず手持ちの麻袋が無くなるまで入れて。後はアルブの食事にするよ」

「は、はぁーい」


 僕は場所を変え、生きている個体をおびき寄せるために魔力を放つ。すると、死体を食い漁ろうとしていた個体が、僕の方におびき寄せられる。

 その間にシトラとミルが麻袋にオルソプテラの死体を詰め込んでいった。もう、土を集めているようにしか見えない。

 シトラは泣きそうな表情だけれど、食事のためなら仕方がないといわんばかり。


 フルーファを振り続けている僕は剣の訓練ができて凄くお得な仕事だと思ってしまった。

 でも、三時間くらい働いてようやく思った。


「か、数が多すぎる……」


 当たり前すぎて考えから少し抜けていた。

 この無数にいる個体から、本体を倒すって可能なのだろうかと思ってしまう。パックスさんが苦笑いしていた理由がわかった気がした。


「それでも、やるしかない」


 フルーファを振り回し、オルソプテラを倒し続け、夕方がやってくる。ミルとシトラがお腹を鳴らし、集中力が切れていた。

 持って来た袋全てにオルソプテラを積めたけれど、死骸の山は砂場のように沢山出来上がっていた。


「アルブ、沢山食べていいよ」

「やったぁ~、いただきますっ!」


 アルブはオルソプテラが好きなようで、好きなだけ食べ進めた。ものすごい食欲で、死骸は綺麗さっぱり消える。

 今日だけで何匹倒したのかわからないが、減ってはいる。ただ、この調子だと何年もかかりそうだ。


 オルソプテラの死骸を大量に詰め込んだ麻袋を持ちながらフラーウスギルドに戻る。

 受付嬢に土嚢のような品を見せた。

 受付嬢が恐る恐る袋の口を開くと、ぎゃぁあー! と声を上げ、崩れ込んだ。どうやら、虫が苦手らしい。慣れないのだろうか。まあ、見るからに慣れていないのだろう。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。と、とりあえず、重さを図ります」


 八〇キログラムほどになっていた。一匹が一.五グラムだとすると五.五万匹くらい。

 僕たちが目標にしていた、個体数は一千億匹。

 あれ、やばなくないか。

 百万分の一しか倒せていない。そもそも、一千億匹ですら全体の一二〇分の一だから……。

 あぁ、計算するのはやめよう。


「銀貨八枚くらいか。まあ、十分かな。問題は、これが氷山の一角というところ」

「そうね……。もう、これで終わってほしいくらいだけど、まだまだなのよね」


 シトラは長い長い先のことを考えているのか、気分が滅入ってしまっているように見える。

 僕としても、長い戦いになりそうな予感がしていた。一個体の暴力ではなく、数の暴力は計り知れない。

 感じた覚えのない恐怖だ。

 どうすれば、解決できるのか、今は見当がつかない。

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