青色の勇者は愛される
「この前みたいにプラスさんを虐めるの、楽しそうですねー」
「み、ミルちゃんの舌、ザラザラしているから体を舐められるとぞわぞわしちゃうんだよなぁ」
三人は勝手に盛り上がっていた。仲がいいのはいいことだ。
キュアノの呼吸を感じ、彼女の拍子に合わせていく。一体感を得て、一つに繋がり愛を育む。
「す、すごい、こ、これが入っちゃうの……」
「ちゃんと解したから大丈夫だよ。痛みがないようにも出来るけど、どうする?」
「……ううん、痛みがあっても、それを感じられたら多分嬉しいと思う」
「そう、じゃあ……」
僕はキュアノとキスしながら抱き合い、一つに繋がる。
小さな体、冷たい魔力、だが心はどこまでも暖かい。
ベッドは高級なので、ギシギシという嫌な音は聞こえず、キュアノの口から無意識に出てしまっている甘い喘ぎが耳を擽り官能に響く。
「私、初めてなのに、初めてなのにっ、しゅごい、しゅごいっ」
キュアノは小さいながら肉体はやはり大人で、痛みはほぼ感じていない様子だった。
周りの三人の荒い息遣いが聞こえてくる。そろそろ構ってあげないと、狂暴化しそうだ。
キュアノの疲労が頂点に達したころ、いったん脇に置いて休ませる。
すると、三人が突っ込んできた。
我先に愛されに来る。慌てなくとも、まだ一時間しか経っていない。
「つ、次は私。私が一番、キースを癒してあげられるもの」
「い、いや、三カ月も抱かれていない私が先でしょ」
「ぼ、ぼく、ぼくがキースさんに食べられる番ですっ」
食に飢えた獣のような必死な形相。三人は理解していないらしい。
「みんな、焦らなくてもいい。今日の夜はきっと長いから……」
僕はシトラの顎下を左手で撫で、プラスさんに軽く口づけし、ミルの耳裏を摩る。
実際、今日の夜は長かった。
シトラとミルだけだと、両者の限界が来るのが早い。でも四名に増えると皆それぞれに休憩できる時間が生れ、長い間楽しめた様子だった。
でも、
「だ、ダメだぁ、よ、四人でもダメですぅっ。き、キースさんが強すぎて、ぼくだちじゃ、歯が立ちませぇんっ。にゃぁ、にゃぁっ、にゃぁあっ!」
体力と性欲に自信があるミルを最後に、四名は無意識の海に潜っていった。
皆、幸せそうなので、僕も満足だ。
四名をキングベッドに寝かせ、シーツを掛ける。
僕は『無休』を使って起き続け、冒険者服に着替えてから勉強机に向かう。
四人が起きないよう、最小限の明りで夜中、ずっと勉強し続けた。
「ん、んぅ……、あれ、私は……」
ベッドの上で上半身を起こしたのは軽く寝ぼけているキュアノだった。
長い青髪が胸を隠しているが、全裸である。そのことに気づいたのか、自分の服を探していた。
僕は自分が使っていたバスローブをキュアノに手渡した。
「キュアノ、おはよう。よく眠れた?」
「……お、おかげ様で泥のように眠れたわ。気分がすこぶる良いもの」
キュアノは僕のバスローブを身に纏う。だが、大きすぎて子供がバスタオルにくるまれているような状態になっていた。
「なにしていたの?」
「勉強。僕は、教育機関に通っていた経験がないんだ。なのに、貴族になっちゃって……、領地の開拓も任されてしまった。そんな僕に学がないなんて駄目だと思ったんだ」
「す、素敵過ぎない? こんな素敵な人が私の夫なの」
キュアノは青い瞳を輝かせる。
「勉強している範囲はまだ中等部までなんだけどね……」
「そうだとしても、仕事しながら勉強は中々出来ないわよ。私だって、大学を卒業して以来、一切勉強していないし」
「キュアノは大学を出ているんだ、凄いね」
「ふふんっ、もっと褒めてくれてもいいのよ。と言っても、飛び級しちゃうくらい、私が強くて優秀だっただけなんだけれどね」
キュアノは腰に手を当てながらない胸を張っていた。
そりゃあ、青色の勇者に成ってしまうくらいだから子供のころから凄い優秀だったのだろう。優に想像できてしまう。
「……キース、おはようのキス」
キュアノは長い髪を指先で弄りながら呟いた。
僕は彼女の言う通りにキスして、愛を深める。
「こんなに幸せになれるんだ……。人間って不思議ね。今までの苦労がやっと報われた気がするわ」
キュアノは首に掛けられているネックレスに触れて、優しく微笑んだ。
鬱憤が消えたら、とても素直な良い女性になれるのではなかろうか。
「これから、キースはどうするの?」
「冬場は王都に戻ろうと思ってる。カエルラ領の復興をずっと手伝うっていうのは、なんか違うかなと思った」
「キースはもう十分すぎるくらいカエルラ領に貢献してくれたから、別に王都に行っても……。って、キースが王都に行ったら、会えなくなるじゃない」
キュアノは気づいたらしく口をあわあわと動かす。
「キュアノが勇者の内は一緒に行動できないから、仕方ないよ。プラスさんだってそうなんだから」
「うぅ……、私より強い勇者が早く現れてくれないと、長い間キースと一緒にいられない。でも、私より強い奴なんて、このカエルラ領から出てくるわけがない。どうしよう」
「優秀な子を弟子にとって教え込めばいいんじゃない?」
「うぅ……、そういう手もあるのか。それくらいやらないと、本当に次世代の者たちの実力が弱くなってしまう」
キュアノは次の世代の者たちの指導にやる気を見せた。動機は不純だが、まあ、良しとしよう。
「私がキースの勉強を見てあげるわ」
キュアノは僕の近くにやって来て、僕の勉強を見てくれた。
ただ、正解するたびにご褒美と言ってキスしてくる。失敗したら、お仕置きと言ってキスしてくる。どっちなんだ。
ある程度終わったら、キュアノの欲求が溜まってしまったらしく朝っぱらから愛し合う羽目に。
たった一晩で、愛される喜びを知ってしまったらしい。
こうなると、非常にまずい。女性たちは愛に飢えているため、他の者が愛されたと知るや否や、私もと言い出す。
「キュアノ、するなら夜、皆と一緒の方がいい。あと、癖にならないよう時間を空けるんだ」
「た、確かに、嬉しくて気持ちよくて幸せになっちゃうし、完全に嵌っちゃうかも……」
キュアノも危険性に気づいてくれたようで、キスだけで済んだ。
家族が増えると、男の方も大変だ。
勉強に集中するため、キュアノにある程度離れてもらう。
ただ、僕の姿を見ながら微笑みを浮かべているのが、容易に想像できてしまった。
勉強を続けていると、シトラやミル、プラスさんが目を覚ます。




