酔っぱらってないよ
「わかったわ。軽く媚薬でも飲ませておく。その方が緊張しないと思う」
「えへへ……、ぼくもちょっと媚薬を飲んじゃおっかなぁ……」
「無理に飲ませないように。あくまでもキュアノの気持ちが大切だから」
両者はコクリと頷いた。
「じゃあ、僕は先にあがるよ」
四名より先に、アルブを抱いて風呂場を出る。
体を布で拭き、バスローブを羽織る。パンツだけは穿いておく。ミルはこれを脱がすのが好きらしいから……。
歯をしっかりと磨いて寝室に向かう。冬場なので部屋の温度を暖める魔道具を使い、二八度ほどにあげておく。
加湿する魔道具にアロマオイルを数滴入れて香りもよくしておく。
照明を薄暗く調節し、避妊具を見えにくい所に隠しておいて、準備完了。
アルブに迷惑が掛からないように『無音』で音を遮断。眠りの邪魔はしない。枕の上に乗せ、小棚の上に移動させておく。
部屋の中に葡萄酒が保管されている棚があり、大地震があったのに割れていなかった品々が保管されていた。
僕が飲んだお酒は、食事の時にグラス一杯だけ。お風呂に入って少し酔いが冷めていた。
「アイクさんみたいにカッコよく飲めているだろうか……」
僕は棚から葡萄酒が入ったグラスを手に取り、コルク抜きを使って開け、ガラス製のコップに少しそそぐ。
すっかり暗くなった外を眺めるため窓際に立つと、少しずつ復興されているカエルラ領が見えた。
地上に魔道具の明りが、ちらほら見える。
昔はもっと明るかったが、今は虫の光のように消えかかっている。でもそれが、妙にしっくり来た。
僕が葡萄酒を飲んでいると寝室の扉が三回叩かれる。
入って来たのは氷の像かと思うほどカチコチになっているキュアノだった。
青白いランジェリードレスを身に纏っており、オリーブオイルでもぬっているのかと思うほど艶やかな青髪が滝のようにきらめいて見えた。
「な、なにこれ……。ちょ、え、はうえぇ!」
キュアノは手と脚が同じ動きになっており、極度の緊張状態だと思われる。
グラス二杯分の葡萄酒を飲んだ僕は、丁度いいくらいに酔えていた。そのためか、キュアノがいつもの八割増しで可愛く見える。
「えっと……、ここに来たってことは、そう言うつもりで来たってことでいいのかな?」
僕はグラスを木製の丸テーブルに置き、キュアノの方に向って歩いていく。
彼女は緊張しすぎて声が出ないようで、赤面しながら小さく頷くのみ。
「キュアノは僕より年上なのに、子猫みたいに怖がっちゃって……」
僕はキュアノの青色の髪を指先で耳に優しく掛ける。首元にドルフィンのネックレスが付いていた。やはり、よく似合っている。
「緊張しなくても大丈夫。全部、僕に任せてくれればいい」
「わ、私……、その、他の皆より、体が貧相だから……、キースが満足できるか、わからないけど……、頑張るから……」
キュアノはしどろもどろな口調で、呟いていた。
「キュアノ、体を気にしていたんだ」
「あ、当たり前でしょ。多分、ミルより子供っぽい……。獣族より体力が持つと思えないし、私……、初めてだし……」
「怖い? それとも恥ずかしい? 楽しみ? 期待してる?」
「……怖くはない。見られるんだから恥ずかしいに決まってるでしょ。でも、興味はあったから楽しみではある。期待もしてる」
「ふっ……、律儀に答えちゃうキュアノ、可愛い」
「なっ! こ、子供扱いするなっ!」
キュアノはぷんすかと怒りだし、緊張を少し和らげることに成功した。緊張していたら怒るのも難しいはずだ。
キュアノと軽く話していると、扉が叩かれすぐに開かれる。髪を下ろしたプラスさんが入って来た。加えてシトラとミルも。
皆、それぞれスケスケの色っぽい服を身に纏っている。
「あぁっ! シトラさん、見てください。キースさん、おい酒しちゃってます!」
ミルは葡萄酒の方に指先を向ける。
「キース、グラス、何杯飲んだの?」
「二杯くらいかな。大丈夫、全然酔ってないから」
僕は背後を向いていたキュアノにそっとかぶさるように抱き着き、右手を股、左腕を胸に巻き付けるように当てる。
吸血鬼が美女に噛みつくときのように首にキスしてみる。
「ちょ、ちょっと、な、なにこれぇ。た、助けて」
キュアノは両手を伸ばし、三名に助けを求めていた。
「あぁ……、キース、完全に酔ってる……」
「キースさん、酔っちゃうと色気倍増するんですよね……」
シトラとミルはキュアノを助ける気がなさそうだ。
「キュアノが満足できるように、僕、頑張るよ」
僕はキュアノをお姫様抱っこして、ベッドの上に移動させる。
そのまま、覆いかぶさるように彼女を見下ろした。
シトラとミルがいうように酔ってきているかもしれない。でも、思考はちゃんと出来る。問題ない。
キュアノの小さな手を握り、壁に釘を打ち込むようにベッドにグッと押し付ける。
獰猛な肉食獣が、草食獣を地面に押さえつけて逃げられないようにするのと同じ。
首筋、耳裏、耳と言う具合にキスを繰り返して行くと、キュアノの声がしだいに甘くなっていく。
キスしたいという気持ちを少しでも高ぶらせ、盛大に焦らしていく。すると、始まって間もなく。
「き、キース……、キスしたい……。大人の、エッチなキスがいい……」
「喜んで」
僕はキュアノの唇に貪りつく。同じように彼女も僕の唇に貪りつく。前は津波の時にした。あの時は必死過ぎてキスの味なんて、ほとんどわからなかった。
でも今は、ずいぶんと甘い味がする。
「あぁ……、キース君と私もキスしたい……」
「きょ、今日はキュアノさんが主体ですから、我慢です……」
「うぅ、ぼくも脳が溶けるキスされたいですー」
三名がベッドの周りで集まり、口々に呟いていた。今はキュアノの方に集中しているので、あまり構ってあげられない。
僕とキュアノは互いに海に深く潜っているかのような濃密な時間を過ごした。
いつの間にか生まれたばかりの姿になっており、キュアノにとって自信がないという小さな胸に触れる。
ほのかな柔らかさ。でも、乾度良好。特に問題ない。
病気や深い傷跡がない。それだけで十分じゃないか。
股の方は茹で卵かと思うほどつるつるで、穴は念入りにほぐさないと痛みを感じるかもしれないと思うほど狭い。
小指が入るのがギリギリ……。
時間をかけるため、他の三人は鬱憤が溜まっていく様子。
「三人は各々で準備しておいてもらえると助かる」
「はぁー、仕方ないわね……」
シトラは僕の発言を聞き、プラスさんとミルの三人で体を解し合うのを提案していた。




