表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第二章 シトラの為に……

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/656

祝いの席

「ドワーフの金槌を六時間……。はは……。そう言われると規格外の筋力でも納得できますね」


「あの重さを六時間も振ってたのか。俺も昔持たせてもらったが、一回持ち上げるだけでも、相当苦労したぞ」


 リークさんとエルツさんは僕を見て、いったい何者なんだといった疑いの目を向けてくる。


「おい、二人とも。今は食事の時間だ。あと、エルツ、この修繕費は出してもらうぞ」


「く……、わかった」


「ご、ごめんなさい。エルツさん、僕も半分出しますから」


「いや、俺は勝負に負けた。敗者が金を払うのは冒険者の仕来りみたいなものだ。だから修繕費は俺が出す。あと、さっきの力、すっげー痺れたぜ。いつの間にそんなに強くなったんだ」


 エルツさんは僕の下げている頭を笑いながら撫でてきた。


「あ、ありがとうございます」


 ――いったい何で勝てたんだ。僕に力が着いたのか。でも、見た目は全く変わっていないし、筋肉痛にもなっていない。

 自分が強くなったと勘違いするのは危ない。きっと何か別の原因があるはずだ。


 僕は要因を考える。

 ただ、思い当たる節が全くない。


 ――考えられるのは、黒卵さんしかないけど今は寝ている。魔力を使っている痕跡もない。じゃあ、何で僕の力がこんなに上がっているんだ。


 僕は疑問に思いながらも、別の席に移動しアイクさんの美味しい料理を頬張る。


「キース、明日も臨時休業だ。この状態で客は入れられない」


「そうですよね……。本当にすみませんでした」


「大丈夫だ。リークから家賃として一日の売上金を巻き上げるからな。あと今回の食事代も全部リークのおごりだ」


「ぶっ! ちょ、アイクさんそんな話は聞いていませんよ!」


 リークさんは貪り食っていた料理を噴き出して、アイクさんに近寄る。


「この中で一番稼いでいるのはリークだろ。加えて、フレイの情報で大金を儲けたそうじゃないか。その金は還元してもらわないとな」


「はは……、冗談がきついですよ、アイクさん。もう少し甘めでお願いしますよ」


「冗談を言っているつもりはない。まぁ、金を出したくないなら今からでも宿を取りに行くんだな。お前を家にいれていたら、どんな情報を抜き取られるか分かったもんじゃない」


「もう、僕って本当に信用度薄いんですね。情報屋は信用が命だと思うんですけど」


「なら、信用されるようなことをしてから、もう一度来るんだな。実際、今日の事件だってお前が絡んでるんだろ」


 アイクさんがリークさんを睨む。


「…………てへ!」


 リークさんは舌を出してバカっぽい人を演じた。


「燃やすぞ……」


 アイクさんは手から炎を出して、リークさんに向ける。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ。僕はただ盗み聞きしてただけですよ」


「盗み聞き……。それがどうして火事になるんだ」


「フレイの奴が僕の髪色に反応したんです」


「髪色……、藍色にか? お前、その時はフードかぶってなかったのか?」


「いや、そこの店は高級な飲み屋……、まあ風俗ですよ。顔の見えない客は相手してくれないじゃないですか。顔は変装してましたけど、藍色の髪は受けがいいので変えなかったんです」


「お前、仕事がてら楽しんでただろ」


「いや、まったく、べつに、全然、大きなおっぱいを揉みたくて行ったとかじゃありませんよ」


「……お前への信頼が全く上がらない」


「男なんですから、僕にだってそう言う時くらいありますよ」


「まぁ、この際どうでもいい。それで、髪色に反応したって言うのは本当か?」


「本当です。ここからは、この店に一泊させてもらえたら教えますよ」


 ――リークさんは情報を使って、お店で止まる権利を得るつもりだ。凄い、これが情報の力。


「ちっ、分かった。一泊だな。それで、続きを聞かせろ」


「焦らないでくださいよ、アイクさん」


「もったいぶらずに、さっさと言え。なんでフレイは藍色の髪に反応したんだ」


「黒髪、だそうです」


「黒髪……」


 ――く、黒髪……。ぼ、僕のことか。


「黒髪、何で黒髪なんて言葉が出てくるんだ?」


「さぁ、そこまでは分かりませんが。酔っぱらっていたフレイは僕を『黒髪』と言って赤色魔法を放ってきました。そのせいで髪が少し焦げましたよ。本当に黒髪になるところでした」


「黒髪がいったい何に関係しているんだ。勇者の伝説に黒髪の者が出てくるが、フレイはそいつに嫉妬心でも燃やしているのか」


「いたとしたら王国が放っておきませんし、と言うか生まれた時点で有名人ですよ。黒い目の人すらほぼいないんですから」


「だよな……。だが、フレイが無断で攻撃するとしたら、喧嘩を売られた時か、ののしられた時、強い者を見た時くらいだからな」


「確かに黒髪は最も魔力の質が高く強いと言われています。実在するのかもわからない架空の人物。そんな人物の髪色を言いながら攻撃してくるなんて、酔っていたとしても不自然です」


「ああ……。領主なら何か知っているのかもしれないが、俺達には教えられていないな」


 ――あの火事……。僕が原因だったのか。ああ、ごめんなさい娼婦の皆さん。

 フレイは未だに黒髪を敵視している。また今回みたいな事件を起こされると、僕の心が痛んでしまう。

 髪色が暗い人は中々いないから頻繁に起きたりはしないと思う。

 少ない回数でも、事件が起こったら死者が出るかもしれない。

 そうなったら、遠回しに僕のせいになってしまう。ただ、どうしたらいいんだ。フレイの記憶から黒髪を抜くなんて絶対に出来ないぞ。


「だが一つ言えるのは、リーク、お前はフレイの前で顔出すな。それだけだ」


「そうですね。今度からは自重しますよ」


 ☆☆☆☆


「それで~、ぼいんぼいんって、凄かったんですよ~」


「た~、俺も見ておけばよかった~。リーク、何でそれを早く言ってくれなかったんだ」


「だって~、僕が火の中から助け出して~、持ち上げる時に無理ない程度に触れるあの高揚感、もうたまらんですよ~」


「か~羨ましい奴め~」


「おい、お前ら飲み過ぎだぞ。もう少し大人の自覚をもってだな。このままじゃ、フレイの二の舞いになるぞ」


「も~、アイクさんは硬すぎるんですよ~、もっとふにゃふにゃになりましょう~」


「ふざけるな、俺はいつまでも硬いんだよ」


 アイクさん達は途中からお酒を飲み始めて酔っぱらっていた。


 僕はまだ飲む気にならないので、遠慮しておいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ