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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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魔法の制御

「ただでさえ浸水して生活が困難だって時に、この化け物みたいにデカいクラーケンが現れるの。理不尽にも程があるわ……」


「理不尽かもしれないけど、相手の再生を阻害出来れば、勝機はある。なんなら、街を壊してもいいなら、クラーケンを空中に浮かせる」


「もう、クラーケンがいる場所は浸水しちゃっているし、別にいいんじゃない」


「でも、カエルラ領で、白髪の男がそんな荒事を起こしたら、責任問題を押し付けられそうな気がして」


「なくはないわね……。最悪、全部の罪をなすりつけられる可能性はあるわ。でも、あの化け物を倒せるような男がカエルラ領の領主に何か言われても怖くないでしょ。どうせ、あいつは責任ばかり押し付けて自分は尻尾巻いて逃げているわよ」


「なら、キュアノは僕を守って。クラーケンも軽々倒されてくれるような相手じゃない」


「仕方ないわね。青色の勇者が力を貸してあげる。光栄に思いなさい」


 キュアノは自分より大きな杖を持ち、杖の先端についている大きな魔石をクラーケンの方に向けた。

 それと同時、僕はクラーケンの方に白い杖の先を向ける。『無重力』でクラーケンの体を浮かせようとしたが……、


「ぐぐうぐぅぐ……、おっもぉ……」


 僕は『無限』で魔力が減らない状態。その状況で『無重力』を使っていたにも拘らず、クラーケンがあまりにも重たい。水に加え、吸盤が地面にくっ付き、浮かないようにしている可能性もある。全身に力を入れて魔力を込めているが、一向に浮かない。


「はぁ、はぁ、はぁ……、僕の実力不足なのか……。八本の脚が地面にくっ付いて全然浮かない。クラーケンの体を限りなく軽くしても、クラーケンの力がゼロになるわけじゃないのか」


「ちょっと、さっきから何力んでるの。こんなところで漏らさないでよね」


 キュアノは冗談交じりに言う。こんなところで漏らすのだけは嫌だな。


「キュアノ、あのタコ足を凍結させられる?」


「私を誰だと思ってるの。青色の勇者を舐めないでよね」


「なら、あの巨大な脚を切断するから、切断面を凍らせてほしい。そうすれば、再生される時間が稼げると思うんだ」


「なるほどね。白髪にしては頑張って考えたじゃない。でも、あんな巨大な脚、どうやって切断するのよ。私の何倍あるのか、パッと見じゃわからないわ。あと、ずっと空中にいたら、攻撃の的ね」


 キュアノが言うとクラーケンのタコ足が大量の水をまき上げて高波を起こし攪乱してくる。


「えっと、クラーケンは魔物の中でも特に賢いらしいわ。もしかすると人間よりも賢い可能性があるっていう研究者もいるくらい。あれだけ巨大だし、脳が九個もある。一度に九個の物事を考えられるってだけで、化け物よね」


 キュアノは巨大な波に杖先を向けた。あまりに突拍子もない動き。


「『青色魔法:フリーズ』」


 よく考えれば、彼女は魔法使いだった。杖先に魔法陣が浮かび、青色に輝いている。雪のような白い粒が大量の水に向って飛んで行く。


「そっちも自分の本領を発揮できるんだろうけど、こっちも大量の水がある場所なら、どの勇者にも負けない自信があるわ!」


 キュアノが叫ぶのと同時、大量の水が凍った。だが、その氷をクラーケンのタコ足は容易く破壊してくる。それでも、速度が落ち、攻撃を躱しやすかった。

 空中で止まっていた氷はバキバキに破壊され、水面に落っこちていく。建物の屋根に当たると簡単に粉砕し、水しぶきを上げていた。内部に誰もいないはずなので、問題ない。

 僕は『無反動砲』でクラーケンのタコ足を吹っ飛ばす。その威力を見て、キュアノは目を見開いていた。直径六〇メートル、長さ三〇〇メートルを超える巨大な筋肉の固まりを一発で吹っ飛ばす威力は相当なものだと、僕も思う。タコ足一本で一〇万トン以上の重さがあるんじゃなかろうか。それを弾き飛ばすんだから、どれだけの火力が出ているのか想像できない。


「貫通力を押さえれば、もう少し連発出来るかな……」


 タコ足を破壊する目的ではなく、弾き飛ばすだけなら八発以上放てそうだった。放出する魔力の調整なんて、練習してこなかったので加減が難しい。


「キュアノ。僕に魔法の制御方法を教えて」


「はぁ? あんた、魔法使いじゃないの? なんで、そんなこと聞いてくるのよ」


「僕、魔法使いじゃなくてどっちかと言えば、剣士なんだよ……」


「剣士……。剣士で、あのバカでかいタコ足を吹っ飛ばしたり、空に浮いているの……。どういう理屈? 空を飛べるなんて高度な技術なのよ。一部の魔法使いくらいしか使えないんだから」


「えっと、これは飛んでいると言うか、浮いているっていうのが正しくて……。いままで、魔法なんて真面に使ってこなかったから魔力の制御もままならなくてさ」


 アイクさんの教えによって、僕は魔法とほぼ無縁の生活を送ってきていた。魔法に頼らず肉体を鍛えてきて早二年。今なら、多少魔法の扱いを習っても問題ないのではないかと考えた結果、魔法使いのキュアノに聴いた。


「ただってわけにもいかないわね。多少なりとも、対価が必要よ」


「対価……。お金なら、結構な額が払えると思うけど」


「別にお金はいらないわ。逆にあなたに貰ってもらおうと思って」


「え……、報酬なのに、僕が何か貰えるの……」


「ええ、そうよ。この世界に一つしかない飛び切り凄い品なんだから」


「凄い品……。えぇ、全然想像つかないんだけど」


「まあ、あんたならそうでしょうね。よく、鈍感とか言われるでしょ」


「なんでわかるの……」


「でしょうね。だって、本当に鈍感なんだもの。バカなのか、お人よしなのか、まあ、今さらどっちでもいいんだけれど……」


 キュアノは前を向いていたが、僕の方を向き直した。ふわりと浮かんでいる丈の長いローブ。長い青色のツインテールも、巨大なクラーケンが腕を動かすたびに生まれる突風で揺れている。氷の上をスーッと滑るように僕の前にやって来て、抱き着くのかと思うほど近づく。耳元に口が近づけられ、


「貰ってほしいのは……私。誰にも手を付けられていない天然物なんだから、大切にしなさいよ」


「ふえぇ?」


 僕はキュアノがいきなり変なことを言い出すので理解が追い付かなかった。なぜ、魔法を習ったら、キュアノを受け取らなければいけないのか。そもそも、受け取るってどういう解釈をしたらいいんだ。

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