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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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街の中に魔物

 ある程度終わったら、家の中に戻る。料理を作り終えたシトラとミルの姿が見える。

 未だにマレインさんは帰って来ていない。なにしているかわからないが、彼が簡単に死ぬわけがないので気にしすぎないようにした。

 逆にマレインさんがいない夕食は久しぶりで、シトラとミル、アルブの四名で静かな夕食を楽しむ。魔石の照明は今も使える状態だったので、暗闇の中で食事する心配はなかった。


 焼けた魚をナイフで丁寧に切り、フォークで口に運ぶ。濃いめの味付けで疲れた体に沁み渡る。パンをかじり、お腹を満たす。お酒も軽く嗜み、歯を磨いた。シトラとミルをベッドに寝かせた後、僕は勉強に勤しむ。

 僕達が一八歳になった後、学園に通うために他の生徒達と同じ学力を身に着けておかなければならなかった。どこの学園に入学するかどうかなど決めていないが、イリスちゃんの夫になる貴族が学園も出ていない男だと文句を言われかねない。

 有名な学園じゃなくとも、卒業資格があって損しないはずだ。

 シトラとミルが勉強できない時間帯に僕が勉強することによって両者よりも知識を先に身に着け、両者の手助けに回る時間を作れるように心がけている。


 まあ、実際のところ勉強は一種の逃げ道になっていた。僕が勉強しなければ、両者は毎晩毎晩愛を求めてくる。夫婦なのだから何も問題ない。僕の体力も半永久的に持つ。ただ、欲に塗れた生活は人間を堕落させてしまう。適度な距離感が必要だ。


 勉強に集中していると、時間がどんどん過ぎていき朝日が昇り始め、暗い海を照らし出す。ただ、街の中は未だに浸水又は水没しており、高い建物の上に非難している者で溢れている。今の季節が冬なら、多くの者が凍え死んでいてもおかしくない。まだ、冬じゃなくてよかったと安堵していると、何かしら不吉な雰囲気がぬぐえない。

 浸水した土地と海が繋がっている状況は決して良いと言えない。なんせ、海にすむ大型の魔物がすでに海岸に近づいていたというのに、今の海岸がカエルラギルド付近になっているため、そこまで海洋の魔物が侵入できてしまう。

 そう考えていた矢先、恐怖を叫ぶカエルラ領の人々がいた。海にすむ魔物は軟水でも生きていられるのか、はたまた海と軟水が混ざってギリギリ生きられているのか、わからないがデスシャークが建物内にある食料目掛けて突っ込み、家を破壊していた。

 その影響でぐらつく建物。屋根に非難していた領民の恐怖は底知れないだろう。なんせ、今、水の中に落ちたら人を食い漁るデスシャークの群れに襲われるのは間違いないからだ。

 この場合、人を助けるべきか、魔物を倒すべきか。どちらが合理的なのだろうか。人を助ければ確実。でも、デスシャークが街の中を蔓延るのは変わらない。デスシャークを倒した方が人も助けられて、その後の被害も防げるか。


 僕は白い杖を手に持ち、デスシャークに狙いを定める。『無重力』でデスシャークたちを浮かばせる。そのまま、アダマスで首を切り取った。黒い血が海に落ちると多くの魔物をおびき寄せてしまう可能性があるので、アルブにすぐ魔力に変えて食べてもらう。

 八頭ほどのデスシャークを駆除して屋根の上にいる人を浸水又は水没していない場所に移動させる。

 助けている間、文句しか言われない。どこ触っているのとか、もっと早く来なさいよとか。やはり、カエルラ領の人達は自分中心にしか物事を考えられないようだ。


 僕は心を無にして、怒りを消す。いや、別に怒っているわけじゃない。実際、僕よりもカエルラ領の人々の方が大変な気持ちになっているのはあきらかだった。

 大量の灰で、真面に仕事できず、何らかの原因で街が冠水。もう、真面な生活なんて、十月に入ってから遅れていないだろう。その影響で、多くの者達に鬱憤が溜まってしまうのは仕方がなかった。

皆、苦労しているのだと考え、僕は無になる。


「『青色魔法:フリーズバレット』」


 真っ青な長髪を靡かせ、浮かんでいる少女が僕の視界に入った。海中にいるデスシャークの群れを氷の塊で打ち抜いている。その際、デスシャークの体は凍結し、血は流れ出なかった。周りの海も凍らせるが、家を安定させ、人々が歩ける足場になっている。


「キュアノ、おはよう」


「ええ、おはよう。海と沈んだ街が繋がっちゃったから、魔物が人におびき寄せられて街の中に入って来ちゃってるわ。最悪の状況よ。私だけじゃ手が回らないし、キースも力を貸しなさい」


「もちろん。人助けより、魔物の駆除の方が今回は精神的に良いかな」


「……カエルラ領の領民に何か言われたの」


 キュアノは視線を反らしながら、呟いた。


「えっと……、素直に感謝してもらえないから、気持ちがぶれちゃって。そんなこと考えずに四の五の言わず人助けするのが冒険者なら、僕は冒険者失格だ」


「じゃ、じゃあ……、今日、私の手伝いしてくれた後、報酬としてキースにキスしてあげる」


 キュアノの突拍子もない発言に僕は面食らった。キュアノの顔や耳がみるみる赤くなっていき、


「だ、黙ってないで、早く行くわよ!」


 キュアノは話を強引に進め、僕は冗談だとふんで彼女のあとを付いていく。カエルラ領に入り込んだ魔物をかたっぱしから駆除していく。


 僕とキュアノが手を組むと、恐ろしく早い討伐が可能だった。


 僕がデスシャークを浮かばせ、キュアノが凍結する。それだけで、冠水した街に入ってきていたデスシャークはあらかた駆除出来た。おそらく、八〇頭以上いた。キュアノが売れば金貨六〇〇枚以上貰えるだろう。

 デスシャークを駆除した後、屋根の上に残っている領民の避難を手伝った。僕に触れられるのが嫌だとさっき言われたので、ゴンドラを引っ張って来て多くの避難者を乗せ、水の上を走りながら引っ張って移動する。

 一人一人抱きしめて運ぶより明らかに効率的だった。空からキュアノが警戒に回り、力仕事は僕が請け負う。魔物の被害を受けないまま、避難者を水没していない陸地まで運び続け、いつの間にか昼になっていた。

 僕たちの行きつけだった路地のお店も完全に水没してしまっている。いったん家に帰る、又はカエルラギルドで昼食を得る。どちらかだな。

 僕が空中で悩んでいると同じく浮いているキュアノが近づいてきた。

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