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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第二章 シトラの為に……

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街中での火事

「あの赤色の勇者が暴れ始めたのか。また、列車の事件みたいな悲劇がこの街で起こるかもしれない。……僕も行かなきゃ」


 僕は何を思ったのか、黒卵さんを持って借りている部屋に駆けていった。

 部屋の中に入り、机の上に置いてある包丁を手に取って懐にしまう。


「少なくとも何も持って行かないよりはましだ。実際、倉庫に置いてあった剣よりは頼もしい」


 僕はリークさんが言っていた高級娼婦があるという場所に向う。

 ルフス領の地形はアイクさんのお店のビラを配る際、ほとんど覚えていた。

 だが、一度も行った覚えがない場所だったので、たどり着けるか不安だった。


 お店を出ると、黒い煙が立ち上っていたのですぐに場所が分かった。

 僕の走る速度は一般人よりも多分早いので、人一倍先に移動できた。


「はぁはぁはぁ……。うわぁ……、大きな建物が燃えてる。アイクさん、大丈夫かな」


 僕は人ごみを縫うように進んでいく。

 進むにつれて赤い炎がまじまじと見える位置にまでやってきた。


「く……。熱すぎるだろ……。青色魔法を使える人がいないとルフス領が炎の海になってしまう」


 実際、僕が見た時には既に五軒から六軒の建物が燃えており、消火活動は行われていなかった。


「あそこまで炎が燃えてたら、普通の青色魔法じゃどうしようもないぞ……」


「『赤色魔法:ファイアストーム』」


 どこかで、聞き覚えのある声が聞こえた。その瞬間にたちまち炎が燃え上がる。


「うわっ! ま、また炎が上がった。ん? でも、なんか様子がおかしい……」


 炎の渦が燃えている建物を囲い、取り込んでいく。

 すると、建物を燃やしている炎がしだいにおさまっていき、最終的に建物だけが残っていた。

 六軒の建物が全て鎮火された後、炎の渦は消えてなくなり火事が治まった。


「い、いったい誰が……」


 僕は誰が火事を治めたのか気になり、危険を承知で燃えていた建物に近づいていく。


「はぁ、はぁ、はぁ……。さすがに、この広さは堪えるな……」


 人気のないところで、赤髪と燕尾服を靡かせていたのはルフス領の領主だった。

 イグニスさんが燃えていた建物に向って両手を広げている。魔法を使っていたのか彼だと思われた。


「酔ったフレイを縛っておいた。娼婦も全員無事だ。救助にかまけていたらいつの間にか炎が思ったよりも燃え広がっちまった。あんたが来て助かったよ」


 アイクさんは、のんきに寝ているフレイを縛り上げている。


「ほんと危なかったぜ! リークの『藍色魔法:空間移動』がなかったら、救助が間に合わなかった。よくやったなリーク。お手柄だぞ」


 エルツさんがリークさんの藍色の髪をぐしゃぐしゃに撫でまわしていた。


「いや……、ほんと……、この魔法凄く嫌い……。魔力を全部持っていかれました……」


 リークさんは地面に座り込み、大量の汗をかいていた。

 リークさんの後ろには数十人の娼婦たちが震えていた。きっと火事に巻き込まれたのだろう。


 どうやら、僕の知る男性四人が火事を治めたらしい。

 事の発端がまたしてもフレイなのが運命なのか、それとも必然なのか……。


 ――でもすごいな。酔っているとはいえ、赤色の勇者であるフレイを拘束できている。アイクさん達は凄い人なのかもしれない。

 それにしても、あの大火事を一人で止めた領主も凄いな……。こんなに多くの人を助けているんだ。


 僕は建物の陰から高級娼婦街を救った英雄たちを眺めていた。

 ただ、今回もフレイは裁判にかけられないんだろうなと……、考えてしまった。


「うわぁーん。アイク、怖かったよー」


「ちょ! 抱き着くな! 他の人が見ているだろうが!」


「だって、だって、死んじゃうかと思ったんだもん」


 顔に煤がついて黒くなっているミリアさんがアイクさんに抱き着いている。

 フレイが冒険者なので、きっと冒険者を纏めているギルドに連絡が入ったのだろう。

 ギルド職員であるミリアさんがフレイを止めに行くのもおかしい話ではない。


「それじゃあ、俺はこの馬鹿を連れていく。迷惑をかけてすまなかったな。あと、この件は娼婦の店の調理場が爆発した火事として処理する。皆、よろしく頼むぞ」


「ああ、わかっている」


「了解だ」


「僕は情報屋なのでお金を貰ったら話したかったんですけど……、やはり止めときますね」


 イグニスさんは『赤色魔法:フレイムハンド』でリークさんの首元を縛り上げていった。


「情報屋、あんまりこいつに係わるな。ろくな事にならない」


 イグニスさんは鋭い眼光をリークさんに向ける。


「そう言われましても、僕も仕事なんで……調べたりはしますよ。そうしないと職を失ってしまうのでね」


「それくらいは大目に見てやる。だが、情報を公開したら、ただじゃ済まさないぞ……」


「わかっていますよ。相手をちゃんと選んで仕事してますから」


「そうか。腕のいい情報屋だな。なら最後に、空間転移の魔法陣を開いてもらおうか。領主邸までだ」


「はぁ……、金貨八枚」


「金貨四枚だ」


「金貨六枚」


「金貨五枚」


「はぁ……、金貨五枚でいいですよ。『藍色魔法:空間転移』」


 リークさんが手を合わせると、イグニスさんの前に藍色の魔法陣が出現した。


「ほら、金貨五枚だ」


 イグニスさんはリークさんに金貨らしき硬貨を投げる。


「確かに」


 リークさんが硬貨を受け取った後、イグニスさんと縛られたフレイは藍色の魔法陣に入っていった。


「ミリア、娼婦たちの身の安全を確保しつつ、ギルドで保護しておけ」


「わかっているわ。もう手配してあります」


 ミリアさんは胸を張って仕事が出来ると言いたげな表情。


「そうか」


 アイクさんはミリアさんに構わず、そっぽを向く。


「それにしても、今回は酔っぱらいまくっていてよかったな。もし、理性がある場合だったら、リークくらいしか太刀打ちできなかったんじゃないか?」


「エルツさん、勘弁してくださいよ。それ絶対髪の色で判断してますよね?」


「仕方ないだろ、藍色は優秀な者の象徴だろうが」


「藍色だからって何でも出来る訳じゃないんですよ。フレイの方が三原色の魔力の質が高いですから戦いになりませんって」


「ま、謙遜も聞き飽きた。さっさと帰るぞ。キースが待っている」


「ちょ、アイクさん。僕は謙遜していませんよ!」


「ねえ、アイク。私も帰っちゃダメ……」


 ミリアさんはアイクさんに抱き着き、胸元を指先でなぞる。


「今日、お前は徹夜で仕事だろうな。まぁ、頑張れ。夜食くらいなら持って行ってやってもいいが」


「うぅ……、私だけ仲間外れ……」


 その後も、そこにいた僕の知り合いたちはフレイが暴れたのはいつものことみたいに話していた。


 ――皆、今回が初めてじゃないのか……。じゃあ、日常茶飯事でフレイが暴れてるってこと?

 それなのに平然としているのには何かわけがあるのか?

 僕はあんまり知らない方がいいかも。


 フレイと出来るだけ関わりたくない。もう、散々だ。


「って、ヤバイ! 速く帰らないと皆が、お店に向っちゃう」


 僕は建物の陰から勢いよく走り出してアイクさんのお店まで一気に戻った。


 ☆☆☆☆


「はぁ、はぁ、はぁ……。間に合った」


「間に合っていないぞ。キース」


「あ……」


 僕はお店の扉の前に息を切らして立っていた。

 だが、僕の後ろにはアイクさん達が平然と立っていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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