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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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簡単な依頼

「私、もう、キースに負けちゃったからなぁー」


「あれは僕の体質だったからと言うか、無色の魔力しかもっていなかったから勝てたと言うか……」


「謙遜なんてしなくていいのに。私、別に負けることが嫌いなわけじゃないし。身体能力じゃどう頑張ったってライアンに勝てない。魔法の打ち合いもフレイに負けてる。私、こう考えると結構負けてるんだな……。でも、別に嫌じゃない。まあ、めっちゃ悔しいけど、めっちゃ悔しいけど……。めぇ~っちゃ悔しいけどぉっ!」


 キュアノはどうやらものすごく負けず嫌いなようだ。


「でも、油断せずに戦ってここまで完敗するとは思ってなかった。やっぱり、上には上がいるんだね。というか、私に勝てるキースって何者……。私、勇者順位戦で四位なんだけど。勇者以外の者に負ける気しないし……。キースってどこの領出身なの?」


「僕は王都だよ」


「王都……。王都かー。なるほど……。じゃあ、勇者になる必要ないんだ。そんなに強いのに、勇者にならないってなんかもったいないね」


「白髪じゃ勇者になれないよ。そもそも勇者になる気なんて無い。勇者は他の領土に行って善意活動出来ないからね」


「なに……、キースって超聖人なの……。気持ちが悪いくらいに聖人すぎるんだけど」


「気持ち悪い……」


 キュアノとカエルラ領に戻った。カエルラギルドに行く。暇だから仕事をすることにしたと受付嬢に伝えると、ギルドマスターが勢いよく飛び込んでくる。


「きゅ、キュアノさん、今日は珍しいですね。午後にお見えになるなんて……」


「ええ……、こんにちわ。ちょっと暇だったから……、その何か出来る仕事があれば教えて……ください」


 キュアノはギルドマスターに対して敬語で話しかけた。魔法を使っていないのに、この場が一瞬で凍り付く。目の前にいる眼鏡をかけた青髪のギルドマスターも完全に氷結していた。やはり、キュアノがいきなり敬語を話したのが驚いた原因だろう。


「え……、えっと……」


 ギルドマスターは氷が解け、喋り始めた。資料をパラパラとめくりながらキュアノが出来る仕事を探していると思われる。

 差し出してきたのは『青の平野』にいる魔物の討伐だった。

 キュアノはその依頼を受け、カエルラ冒険者ギルドを出た。そのまま空を飛び、海と反対側にある東門を出て『青の平野』に到着。

 空を飛べる分、移動が物凄く早かった。


 平野を空から見ると冒険者達が列車の線路に魔物が飛び出さないように軽く駆除している。ルークス王国の内部と言えど、ものすごく広いので魔物を駆逐できているわけではない。領と王都の間は魔物が頻繁に発生する。外壁の外の方が魔物の数は多いものの村人や列車を襲うと危険なので、狩らなければならない。


「はぁ、ホーンラビットとの討伐とか、私がする必要なくない? あのギルドマスター、てんぱって新人に渡すようの依頼を選んだんじゃないでしょうね」


 キュアノはブツブツ言いながらホーンラビットの姿を探していた。空から探しても比較的小さなホーンラビットは見つけにくい。


「うーん、ここからじゃ見つけられないわ。面倒だけど、下りて探すしかないわね」


 キュアノは高度を下げ、平原に降り立つ。周りへの被害を考え、人がいない地域を選んだ。キュアノの魔法を不意に受けたら怪我じゃすまなそうなので、賢明な判断だろう。

僕は付き添いなので、手出しするつもりはないが……。


「いた! 『青色魔法:ウォーターショット』」


 キュアノの魔法は平原に生えている木をへし折り、土柱をまき上げさせる。ホーンラビットの姿はどこにもなく、絶妙に攻撃が当たっていないようだった。彼女はホーンラビットを倒すのに苦戦しないと思っていたのか、イライラが募っている。

 ホーンラビットを倒すだけと言っても、相手を見つけ的確に攻撃しないといけない。剣で倒すなら比較的簡単に倒せるはずなのだが、魔法だと素早く小さい的に当てるのが難しいらしい。いつも大技をぶっぱなして倒すのが癖になっているキュアノはちょこまかと動きまくるホーンラビットに対して鬱憤が溜まっていき……。


「あぁああっ! 面倒臭い! 『青色魔法:フリーズビーム』」


 キュアノさんは辺り一帯を凍結させながら、一羽のホーンラビットを倒した。一羽を倒すだけで半径一五メートル範囲の平野が凍結してしまった。ここら辺の草木は枯れてしまうだろう。そうならないよう、僕が無色の魔力を流し、堪えてもらう。


「はぁ、はぁ、はぁ……。よし、一羽確保。後、九羽凍らせてしまえば良いわよね」


「でも、凍らせたら解体が難しくなるから、出来る限り普通に倒して」


「はい? なんで、私が解体しないといけないのよ」


「相手に対して投げやりは仕事を適当に行ったのと変わらない。仕事を綺麗に終えた方がカッコいいし、感謝される。キュアノがそう言う姿勢を冒険者達に見せれば、少しでも意識が変わるかもしれないでしょ。相手に変わってほしいだけじゃなくて、自分も変わらなきゃ」


「うぅ……。確かに。そう言われてみたら、そうかもしれない」


 キュアノは渋々頷き、ホーンラビットを九羽倒すために半日使った。


「はぁ、はぁ、はぁ……。お、終わった……。な、なにこれ、糞みたいな仕事じゃない」


 キュアノは全身泥まみれになりながら汗を掻き、呼吸を荒げていた。慣れていない者からしたら、少し難しい依頼だったのだろうか。


「慣れれば今よりずっと簡単に倒せるようになるよ」


 血ぬきと内臓を処理したホーンラビットの肉と毛皮、角を手際よく分ける。


「え……、な、なに、魔法?」


「魔法じゃないよ。技術だよ」


「ぎ、技術って言っても、速すぎるでしょ。三分もかかってないんじゃ……」


「まあ、別の領にいた時、ホーンラビットばかり狩っていた時があったから、解体になれているんだ。キュアノも一緒に手伝って。方法を覚えたら、一人で出来るようになるよ」


「う、うぅ……、はい……」


 キュアノは渋々頷き、解体方法教わった。死んだ魔物に触れるのが苦手なのか、ものすごく辛そう。でも、その辛さを他の人が味わっている。感謝の気持ちを持って接する必要があるとわかるはずだ。

 手際が悪く、一羽を解体するのも一苦労。残りは僕が解体した。

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