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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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青色の勇者と友達になる

 キュアノさんは空中で大量の霧を発生させ、濃霧地帯に変えてしまった。範囲が広く、魔力視に映るのは全て青色の魔力のため、キュアノさんを見つけられない。

 僕たちは目隠し状態で戦っていることになり、どうにかして敵の位置を探る必要がある。


「このままじゃ、らちが明かないわよ! どこにいるの! 姿をさっさと現しなさい!」


 僕は青色の魔力で生み出された霧を体内に取り込み左目に集める。キュアノさんの体はシアンとマゼンタの魔力を持っている。青色の魔力を左目で透かして霧の中を見ると青色は同化して彼女のマゼンタの赤っぽい色がうっすらと見える。

 ほんと、青の空に浮かぶ一つの赤い星のよう。無視を使いながらアルブに無重力を使ってもらい、僕は空を飛ぶ。しきりに当たりを見渡すキュアノさんの背後に着くと、包み込むように抱きしめた。


「捕まえました」


「……嘘でしょ」


 キュアノさんは意表を突かれたような声を出し、俯いた。そのまま、耳までじんわりと赤くなっていく。


「あり得ない……。あり得ないわ……。この私が白髪に負けるなんて……。攻撃も放たず優しく抱きしめてくるなんて……」


 キュアノさんはプルプルと震えながら呟いていた。彼女の魔力は僕の体と触れあっていることで一定を保ち、魔力暴走に至っていない。そのまま、僕の腕を小さな手で握り少しでも気持ちを静めようとしている。

 僕が離れようとすると……、


「駄目……、離れないで……」


 キュアノさんはよわよわしく呟いていた。魔法の杖を消し、空中で振り返る。僕にギュっと抱き着いてくる。腕の中ですっぽりと納まってしまう。ミルよりも小さく、成人していない少女に思えた。でも、すでに成人してい女性なので、あまり失礼なことは言えない。

 いったいいつまで彼女に抱き着いていればいいのだろうか。また、ミルやシトラに怒られそう。そもそも、なぜ僕は彼女と戦っていたんだろう……。


「なんで、私に魔法を撃たなかったの……」


「僕、攻撃する魔法が一種類しかないんです。それが飛び切り危険で、キュアノさんに放つなんて出来ませんでした」


「私に攻撃しないで、捕まえるなんて完敗も良い所だわ……。勇者順位戦でライアンと戦った時より悔しい……。でも、これで私はあんたに意見できなくなった……。聞いてやるわよ、あんたの話し」


 キュアノさんは僕が話した内容を実行してくれると言う。具体的に言えば、挨拶と感謝の気持ちを伝えると言うもの。朝、昼、晩、挨拶は基本中の基本だ。その後、何か助けてもらったら感謝、してもらったら感謝、ありがとうと言う言葉はとても使い勝手がいいので、ぜひ使ってもらいたい。


「にしても、ほんと心地いいわ、ここ……」


 キュアノさんは僕に抱き着きながら呟いた。子供に抱き着かれているようで困るが、キュアノさんが満足しているのなら、別にいいか。

 早速、僕はキュアノさんに手を指し伸ばす。


「僕と戦ってくれてありがとうございました。凄く良い経験が出来ました」


「……わ、私の方こそ、オルキヌスと会わせてくれて、あ……、ありがとう。半ば無理やり戦いを挑んでごめんなさい……。えっと、その……、あの……、わ、私と友達に……なって」


 キュアノさんは頬や耳、なんなら手先まで真っ赤にしながら僕の手を握ってくる。とてもいじらしい。ずっと嫌われていた猫に手を舐められたかのような感覚が生れる。

 僕も少しは信頼してもらえるようになったのだろう。


「キュアノさんの友達になれて嬉しいです。これから、よろしくお願いします」


「え、ええ。こちらこそ……。友達になったんだからその堅苦しい喋り方は止めて。私が勇者とか思わないでいいから」


「わかった。じゃあ、キュアノって呼ぶよ」


「……」


 キュアノは名前を呼ばれただけで、目を見開き、体から大量の魔力があふれ出ていた。普段、名前を呼び捨てにされることが無いのかもしれない。


「じゃ、じゃあ、私はキースって呼ぶわ」


「うん、かまわないよ。友達の僕になら溜口でも構わないけれど、目上の人とか、年上の人には出来る限り敬語を使った方が良い。嫌っていたとしてもね」


「そうね……。わかったわ」


 キュアノは小さく頷き、僕の手を放した。空中に浮いていた僕たちはそのままカエルラ領の方まで戻っていく。その最中、友達のよしみでマレインさんについて訊いてみた。


「キュアノはマレインさんって知ってる?」


「マレイン? 誰それ」


「マレイン・マルチネスっていう貴族の長男なんだけど……」


「あぁー、聞いたことあるような……、なんか、息巻いてた子供みたいな人だったかな?」


「まあ、昔はそんな人でした。あまり聞くのもなんですけど、社交界であった経験は?」


「んー、覚えてないわ」


「そうですか……。そうなると、ブランカさんの方なのか……」


「なによ、何を考えているの? お姉ちゃんとマレインって言う人が何かあるの? ねえ、ねえねえねえっ!」


 キュアノさんは僕と友達になった手前、ものすごく距離が近くなった気がする……。まあ、気兼ねなく話せるようになって気は大分楽だ。マレインさんが一人だけしっかりと覚えているのに、キュアノさんが全く覚えていないのは少し考えずらいので十中八九、マレインさんが恋している相手はブランカさんの方だと思われる。それで、違ったらマレインさんがただただ可哀そうな人と言うことに……。


「今、マレインさんはキュアノを倒そうと必死に努力しているんだ」


「へ? なんで」


「その……、青色の勇者より強くなって自分の強さを好きな相手に知らしめたいと思っているんじゃないですかね……」


 当初はキュアノを倒せば結婚相手として認めてもらえるとかなんとか、言っていた気がするが、すでにキュアノの可能性が低くなったので強くなる必要は無くなってしまった。でも、キュアノに勝てるほど強くなれば、ブランカさんを守れるようになるわけだ。良くも悪くも強くなることに問題はない。

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