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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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カエルラ領で雑用の仕事

「シトラ。えっと……今朝はごめん。信じてほしいなんて自分勝手なことを言って。そんなこと言わなくても良いくらい、安心できる男になるよ。じゃあ、行ってきます」


「うん……。行ってらっしゃい。気を付けて」


 シトラは銀色の瞳に涙を浮かべ、頷いて僕たちを見送ってくれた。

 僕とミルはアルブの脚を持って飛行しながらカエルラ冒険者ギルドに向かう。


「うひゃぁ~、高いですね~。ここから落ちたら、絶対痛いですよね」


「今は『無重力』で浮いているから絶対に落ちないよ。それより、カエルラ冒険者ギルドの獣族への対応が厳しいだろうけど、僕が守るから」


「ぼくだって、去年の橙色武神祭で準優勝を果たしているんですよ。日頃の鍛錬も怠っていませんから、心配無用です」


「はは、頼もしい」


 僕たちはカエルラ冒険者ギルドにやって来た。大概がシアン色の髪の冒険者さん達だ。夏場に熱そうな鎧を着こんでいるが、魔法で鎧と体の内側を冷やしているのかそこまで苦しそうではない。


 僕たちお得意の報酬は良いのに、多くのものが嫌ってできない位の低い仕事を請け負う。

 ルフス領では薬草採取、クサントス領ではロックアントの討伐、ウィリディス領ではマンドラゴラの討伐と言った具合だ。その領土が抱える問題を解決するのが冒険者の仕事である。


「海辺の危険な海洋生物の駆除」

「海辺のゴミ拾い」

「レンガ・木材の運搬」


 仕事は沢山あった。どれも冒険者らしくない仕事だが、困っている者が多い仕事なのは間違いない。僕とミルは簡単な仕事から片付けることにした。すぐに終わってしまうと時間が余るので、目に付いた依頼を数種類取って受付に向かう。


 あまり良い顔はされなかったが、大量に上がってきていた依頼を受けたからか、嫌味を言われることはなかった。


「さて、海辺の危険な海洋生物の駆除って書かれているけどクラゲだよね」


「デスシャークとかも含まれるんじゃないでしょうか?」


「海辺だから、そんなに遠くに行く必要はないんじゃないかな?」


 僕たちは海に向かった。

 今日も観光客が多い。だが、同じくらいクラゲに刺されている者が大量に存在した。今日は綺麗で質が良い海を取り戻すため、仕事をさせてもらおう。


「クラゲ、バカみたいに沢山いますね……。こんな海の中で泳いでいたら、刺されるのも無理ないですよ」


 ミルは浜辺で海に漂っているクラゲの姿を見ながら苦笑いを浮かべていた。


「さて、クラゲをどうやって駆除するか」


「昨日、水族館で見た時、クラゲは水分が九七パーセントもふくんでいる生き物って知りました。ですから、クラゲの体から水分を抜いちゃえば死ぬんじゃないですか?」


「なるほど」


 僕は白い杖を持ち、浜辺いったいを範囲に指定。無色の魔力が行き届いたら『無限。対象、クラゲの体と水分』と呟いた。

 その後『無重力』で浮かせる。干からびたクラゲが海中から無数に上がった。大きめの麻袋に干からびたクラゲの残骸を入れていく。この状態でも毒針に刺される可能性があるため、細心の注意を払う。

 三〇分もしない間に、クラゲの姿が見えなくなった。沖の方を見ると、まだ、沢山いるので波に流されてやってくるかもしれない。

 全て狩りつくしたら絶滅してしまう。大げさかもしれないが、大量発生しているだけで実際は希少種かもしれない。


 クラゲの駆除を行った結果、多くの観光客が安心して海に入れるようになった。クラゲに刺された患者を診ていた医師たちはお金が稼げなくなり、顔に憤怒がにじみ出ていたが、患者が減るからクラゲを駆除するんじゃねえと怒ってくる者はいなかった。


 一つ目の依頼は終え、すぐに二つ目の依頼に取り掛かる。海から波に漂って、流木や木製の箱、洋服などがゴミとなって溜まっていく。あまりにも大量に運ばれてくるので、駆除が大変で、後方に集められている場所があった。燃やしてしまいたいが、水分を含み、簡単に燃えない。大量の煙が出て回りに迷惑をかけてしまう。


 僕たちが取った行動は『無限』で海水を全て弾き飛ばし、からからに乾かしたあと木材と布に分けていく。巨大な流木は内部まで海水が染みておらず、薪や木材として使える可能性が十分あった。

 一定の長さに切り、縄で結んで材木屋に運ぶ。案外いい値で売れた。カエルラ領に木材が少ないためだと思われる。


 海のゴミの処理も終え、木材やレンガの輸送の依頼もこなしていく。大量の材料を指定された場所に運ぶと言う簡単な依頼だが、普通の人なら一日以上かかる。力仕事なのは間違いない。

 依頼が滞ると建物の修繕や増築、建設が滞ってしまうので重要な仕事なのだが人手不足なのだと言う。

 獣族を雇えばいいのにと思いながらも、お金を払う側として許せないのかもしれない。依頼主がミルの姿を見た時に怪訝そうな表情を浮かべたので、獣族が嫌いなんだろうな。

 まあ、仕事を三時間ほどで終わらせ午後二時までに三種類の仕事が全て終わってしまった。仕事をやり終えたら残った時間は好きに使っていい。


 カエルラ冒険者ギルドに戻り、依頼達成の正印が押された依頼書を受付嬢に見せると、死にかけの魚のように口をパクパクさせながら依頼書に書かれたお金をぷるぷると黒い板の上に乗せ、差し出してくる。

 危険な海洋生物の駆除金貨一〇枚。海のゴミの処理金貨二〇枚。木材とレンガの運搬二〇箇所で金貨四〇枚。

 合計金貨七〇枚の働きだが、僕は他領の人間なのでその一割をギルドに渡して金貨六三枚を受け取る。デスシャークを売るよりも文句を言われなかった。

 どうやら、他の領土の冒険者は魔物や素材の採取より、雑用の仕事を受けた方が被害が少ないらしい。一割引かれるだけなら、手数料程度と考えられる。

 依頼達成書が僕たちのしっかりと働いた照明になってくれるらしい。雑用の依頼が得意な僕たちは堂々と冒険者活動が出来そうだ。


「しっかり働きましたし、そこそこ良いお金がもらえて行幸ですね」


「うん。やっぱり、僕たちは遊んでいるより、仕事していた方が生活が上手くいくみたいだ。何かお菓子でも買って家に帰ろうか」


「はーいっ!」


 僕たちはお菓子屋さんに行って品を買おうと思ったが、門前払いを受ける。仕方がないのでメジさんが教えてくれた獣族のお店が並ぶ裏路地でお菓子屋さんを探した。

 すると、獣族がお菓子を作っているお店を発見する。子供や女性に人気で出来栄えも、人間が作った品と大して変わらない。独学で作ったのだとしたら、凄い執念だ。

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