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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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治療費

「う、うぅん……。ちょっと小っちゃかったかな……」


 シトラは僕の髪色と同じ白いビキニを着ていた。

 ふわふわで柔らかい大きな胸の側面や上面が布面積の少ない水着からはみ出ており、少し動いたらぽろりと大切な部分が見えてしまいそうだ。

 布は白くて見た目は清楚だが、なぜか厭らしい……。真っ白な肌と銀色の髪が綺麗すぎて目が焼けそうだ。


 ミルとシトラの艶やかな脚と丸いお尻、日の光を浴びて少し熱った頬。どうしよう、他の人の視線が可愛くて色っぽい二人に向いてしまう。そう、思っていたのだが……。


「う、うわ、あのイケメンやばい……」


「ほ、ほんとだ、顔と体、どうなってるの……。イケメンの神様?」


「あの無駄のない筋肉、高い背丈、誰もが羨みそうな甘い顔……。嫉妬する気も失せる」


「あぁ、そのバカ糞イケメンな奴の周りにいるのが獣族なのが嫉妬心をかき消してくれる」


「獣族の二人も超美人だが、近くにいるイケメンが相殺しちまってるんだよな……」


 僕たちの周りにいた人たちがスーッと離れていく。割けられているような感覚に陥り、やはり嫌われているのだろうなと解釈する。

 でも、近くに誰もいなければシトラとミルの姿をガン見されることはないため、行幸だろう。


「あぁん、キースさんの姿が他の女性を釘付けにしちゃってます……」


「この男、自分の魅力が周りより劣ってると思い込んでるのが玉に傷なのよね……」


 僕たちは暑い外と正反対の冷たい海に足を踏み入れる。

 靴は脱ぎ、手に持って涼んでいた。川とはまた違った心地よさ。広がり続ける海の大きさが、小さな悩み事なんてあまりにもちっぽけに感じさせる。

 森も良いが、海も良い……。初めて来たからそう思うのではなく、一回や二回、三回、四回……六千回見たってやはり海は良いと思うのだろう。

 自然の良い所は何年経っても滅多に変わらず、常にあり続け、当時と同じ輝きを放つところだ。今から五年後、一〇年後、一〇〇年後だってここに海はあり続ける。そのたび、今日と違った感情を抱くに違いない。家族が増えているかもしれないし、減っているかもしれないけれど、ここの景色は変わらない。そうあってほしい。

 海に入っていると、昨日水族館で見たクラゲがふわりふわりと浮いている。僕はぎょっとして、クラゲから離れた。よく見れば、そこら中、クラゲだらけ……。


「うわぁ~ん、痛いよ~っ!」


「く……、手、手足がしびれてきやがった……」


「や、焼き石を当てられてるみたいに痛いんだがっ!」


 クラゲに刺された者達が沢山おり、海の家と言われる場所に運ばれていく。苦痛の叫びが聞こえなかったのは海の家に運ばれていたからか。


「シトラ、ミル、クラゲに気を付けて……。え?」


「え……?」

「ん……?」


 シトラとミルはプルプルのクラゲを両手で持っていた。彼女たちにクラゲの知識が無かったのか、全身の血の気が引いていく。彼女たちの腕に触手がくっ付いており危険な状態だ。案の定、両者共にクラゲを落とし、電撃を受けたような表情になる。


 僕はとりあえずクラゲの小さな小さな毒針を手から抜くために両者の手と毒針の間を『無限』で広げて排除し『無傷』と『無毒』で完全に治す。


「う、うぅぅ……、ちょ、超痛かったですぅ……。なんですか、今のぶよぶよ……」


 ミルは砂浜に座り込み、泣きべそをかいていた。自由に動くようになった腕を大切そうに抱え、身を震わせている。


「もっと早く言いなさいよ……。気になって触っちゃったじゃない。即死の毒じゃなくてよかったけど、ものすごく痛かったわ」


 シトラは腕を組み、僕を睨む。確かに、知らなければ触りたくなってしまう見た目だ。キュアノさんに教えてもらっていなければ、僕も興味本位で触っていたかもしれない。


「クラゲの触手には毒を含んだ小さな針があって、触れると射出されるんだ。本当は魚を取るために使うらしいけど、人間にも効果がある強い毒らしい」


「あんな可愛い見た目しておいて、えげつないわね……。キースがいなかったら、どうなっていたのか……。怖くて身が震えちゃうわ……。あのクラゲに刺された人、大量にいるでしょ。可愛そうだし、治してあげたら?」


「そうだね。僕の力なら、すぐに痛みから解放してあげられる」


 僕は裸足のまま、海の家に向かった。木材で作られた吹き抜けの建物で広いテラスが見える。食べ物や飲み物が売られている屋台がある。

 その中に医務室があった。

 扉に近づくと、また誰かがクラゲに刺されたのか、担架で医務室まで運ばれてくる。『無視』で姿を消し、医務室に入ると青髪の屈強な男二名がクラゲに刺された者を担架ごとベッドに乗せる。近くにいた青髪の医師が体に大きなミミズ腫れが出来るほど重症な患者に向って……。


「はーい、もう大丈夫ですよー。金貨八枚で治療しますねー」


「き、金貨八枚っ!」


「はいー、クラゲの毒は種類によって放っておけば呼吸が止まって死んでしまうほど強力なんですよ。その治療に必要な薬品が結構貴重で高いんです。金貨八枚で命が助かるのなら、安いものだと思いませんか? 金額が下がるごとに辛さが増しますけれど、どうします?」


「は、払う、払うから、早く治してください! は、腹が焼けそうなんです!」


「かしこまりましたー」


 青髪の医師は手袋を嵌め、海水と思われる液体を腹にかけて残っている触手を洗い流し、軟膏薬を取り出して赤い水膨れをなぞるように塗っていく。多少なりとも痛みが減ったのか、観光客と思われる男性は騒がなくなり、穏やかな表情で簡易ベッドに移されて行った。

 次々と運び込まれてくる患者は痛みから解放されるために金貨八枚と言う治療費を払って治療してもらっていた。だが、回復魔法を使っているわけではないので、その金額にあった治療とはとても思えない。

 あの塗り薬だって、本当に効き目があるか怪しい……。でも、痛みが引いているのなら、効果はあるのか。

 ぼったくり価格な気がするのだが、領土ごとに値段は違うし、相手が医師と言うことも相まって旅行客は破格な金額を払ってでも治療してもらっている。

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