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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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海に行く

「あなたの前にいるのはブラックワイバーンを倒した時より何倍も強くなっている男です。今のあなたには僕を倒せる想像が出来ないでしょうが、僕を倒せるかもしれないという想像ができるようになるまで努力してください。そうすれば、キュアノさんにも勝てるかもしれません」


「はぁ、はぁ、はぁ……。くっ……」


 マレインさんは僕の姿を見て、恐怖から失禁し過度なストレスが消耗した慢心な精神を砕いた。きっと以前挫折したころから治りかけていた心をもう一度壊しただろう。だが、二年間も治っていないのなら治療があっていない。何なら、心に罅が入っただけだったのかもしれない。だが、完全に砕いた。後は硬く太く治してもらうだけだ。


「キース、容赦なさすぎじゃない?」


「マレインさん、ちょっとかわいそうかも……」


「やりすぎくらいがちょうどいいと思ったんだ。僕の恐怖から立ち直れば多くの者に恐怖しにくくなるし、もう一度心が折れても治りが速い。僕がマレインさんを運ぶからシトラとミルは食事の準備をして」


「わかったわ」


 僕はマレインさんの下半身から水分を『無限』で飛ばし、まっさらになった状態で担ぎ上げる。そのまま、ぬるめのお湯に調節してあるお風呂に向かった。

 アイクさんと共にお風呂に入った記憶がよみがえる。師匠とのお風呂の時間はたまらなく楽しい時間だった。アイクさんのような人格者になるため、僕はアイクさんのような振る舞いをしている。まあ、僕をボコボコにしたのは藍色髪のリークさんなのだけど。


 僕はマレインさんと共にお風呂に入る。彼はお風呂に入ってから意識を取り持出した。


「うわっ! な、なんで俺はキースと風呂に……」


「マレインさんが気絶したので、その間にお風呂に連れて来たんです」


「そ、そうか……。いや、驚いた……。まさか魔力量であそこまでの差があるとは」


「僕は三原色の魔力を持っていませんし、ちょっと変わった生き物と一緒にいるので、魔力量が多くなっています。僕を見てどう思いましたか?」


「ば、化け物と言うのが一番に出て来たな。ブラックワイバーンの比じゃなかった……」


「ならよかった。その様子を見ると、心が折られているようですね」


「心をわざと折ってくる奴だとは思わなかったな……」


「マレインさんが強くなるためなので、許してください」


「別に、怒ってない。自分の弱さと情けなさに嫌気を指しているだけだ……。だが、有のキースに勝てる気が一切しない。どんな鍛錬を積めばあの領域まで行けるんだ」


「それを考え続けてください。そうすればおのずと道は開けます。でも、明日はお休みなのでしっかりと休んでくださいね」


「ああ、そうさせてもらう。一日中寝よう……」


 マレインさんはお風呂の中肩を全て付け、体の疲れを癒していた。


「じゃあ、僕は体を洗いますね」


 お湯から立ち上がると、マレインさんの目が丸くなる。視線の先は股間に当たり、彼の顔面は白くなり、そのままお湯の中に沈んでいった。僕はすぐさま彼を持ち上げ、窒息を防ぐ。


「か、神よ……、この白髪の男にどれだけ多くの恵みを与えたんだ……」


 マレインさんは先ほど僕が魔力で威圧した時よりも心が折れている様子だった。なぜ……。

 理由はわからなかったが、異性とお風呂に入るのと違った楽しさがあった。友達……と言う訳ではないが、近所のお兄さん? くらいの距離感で、心地よい。

 以前の彼なら絶対に話そうと思わなかったが、今は色々応援したくなる性格に変わっているので、沢山話し合おう。


 お風呂上りにシトラとミルが作った夕食を皆で得る。魚料理がほとんどで、ジビエと山菜が少々。メジさん達が取って来てくれた海の幸が沢山並んでいる。食費が浮いて仕方がない。


 マレインさんがいなければ、僕はミルと出会えなかったし、ブラックワイバーンも倒せなかった。そうなるとシトラも取り返せなかった。何だかんだ、僕の人生に拘わっている。彼にも幸せになってもらいたいので、出来る限りの援助をしよう。


 八月二六日。今日はシトラとミルの二人と一緒にデートに出かける。マレインさんは疲労からベッドの上で溶けたように眠っていた。留守番を頼んだので不法侵入される心配はない。


「はぁ~、やっとです、やっとキースさんとデートできる日が来ました~」


 ミルはお尻が見えてしまいそうなほど短いミニスカートと布を使用した胸当て、前髪を纏めて耳の間で止めたおでこ全出しの髪型は変わらず、ターバンのような薄手の布を頭に巻き、夏っぽさを強調していた。盗賊に見えなくないが、あまりに可愛い盗賊だ。


「ほんと、ずっと鍛錬していたから、今日が待ち遠しかったわ」


 シトラは白いワンピースを身に着け、麦わら帽子をかぶっている。清楚なお嬢様のような見た目で厭らしさはほとんどない。でも、僕に注がれる暑い視線と銀色の瞳の熱りからは猛獣の威圧感を得る。


 僕は長袖長ズボンだとさすがに暑いと思い、黒い長ズボンと白い半そでシャツだけにした。腰に白い杖とアダマスを掛け、ウェストポーチも一応持って行く。

 櫛で髪を梳き、蝋と軟膏を混ぜて作られた整髪クリームをつけ、見かけが悪くならないように纏める。ミルに愚痴を言われないように日焼け止めを顔に塗り、ブラックワイバーンの革で作った靴を履いて準備完了。


「あぁ、今日もキースさんが神々しく輝いて見えます……」


「ほんと、いつにもまして神々しいわね……」


「二人も神々しいよ。僕にとって女神だから、眩しすぎる」


「も、もう、褒めすぎです~」


「どれだけ褒めても、何も変わらないわよ」


 ミルとシトラは身をよじらせながら声を出した。そのまま、僕の腕に抱き着き共に家を出た。今日向かう場所は海と水族館。午前中は海で遊んで、午後は日差しが厳しいので、水族館で涼む。そう言うデート計画を立て、海に向かう。快晴で、海の波も穏やかだった。それだけで、気分がいい。


 海の近くの建物で水着に着替え、白い砂浜に出て来た。


「み、ミル、ちょっと派手過ぎない……」


「髪色と同じ金色です!」


 ミルは金色の水着を着ていた。攻めすぎな気もするが、彼女の見た目とあっており違和感がない。でも、派手な衣装だと周りの人の視界を集めてしまう。妻の水着姿が他の人に見られるというのは良い気持ちがしない。出来ればごく普通の水着にしてほしかった。

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