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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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大人の対応

「へえ、じゃあ、借金を返しきったら」


「また借金だ」


「えぇ……、そ、そうなんですか?」


「当たり前だろう。初心者が借金を返しきったころには防具や武器がボロボロだ。

 いくら良い品と言えど、使い手が下手くそならすぐに駄目になる。せっかく借金を返しきったのに馬鹿な奴らは最初に買った品よりも良い品を買ってしまうんだ。なんせ、最初よりも大量の金を貸してもらえるからな。

 中級者になっても借金し、その借金が返せたら上級者。そこでまた借金してバカみたいに良い品を買う。そこまで来れる奴は一〇〇人に一人ってところだ。後は借金を返すためだけに働いて年老いて冒険者が出来なくなり、他の仕事で稼ぐしかなくなる。他の領土に行くことなんて考えられないから、そのまま死ぬまで借金を返し続ける奴隷が完成するわけだ」


 マレインさんの話を聴き、僕は全身に怖気が走った。冒険者ギルド側が冒険者を立てていたのはそう言う理由があったのかと……。

 領土に住んでいる者の贔屓をすることで、カエルラ領でしか住めなくさせる用の洗脳だなんて。

 しかも借金まで。返せてしまうのがカエルラ領に住む人々の誇りの強さを物語っているが、借金ばかりしていたら相手が儲かってばかり。多くの人を働かせて無理やりでも領土内総生産一位を取ろうと言うのか。どれだけ、ガメツイ領土なんだ……。

 そう考えるとやはり、マレインさんはものすごく賢い。今、借金を頑張って返している途中なのだろうか。でも、お酒を飲んでいるということは借金を返しきって余ったお金で楽しく暮らしているのかもしれない。


「ぷはぁ……。ああ、飲み切っちまった。話は終いだ。昔の俺のことは忘れろ。恥ずかしすぎて体が痒くなる」


「わかりました。僕は今のマレインさんを覚えることにします。でも、ミルを蹴ったことだけは許しません」


 僕は席を立ち、マレインさんのもとから離れる。


「ミル……、ミルって……、ちょ、おいっ!」


 マレインさんはミルと言う名前を聴き、立ち上がった。そのまま、僕の肩に手を置き、振り向かせてくる。


「そうか、そう言うことか……。お前、ミルと一緒に冒険者パーティーを組んでいた男だろ。なんで、今まで気づかなかったんだ。いや、雰囲気が変わり過ぎていて気付かなかったのか」


「ミルのことを覚えているんですね」


「当たり前だ。二年前、ルフス領でブラックワイバーンとロックアントの女王を倒したのは黒髪の冒険者と黄色い髪の猫系の獣族とか言う噂が立っていた。あの時、黄色い髪の猫族と言ったらミルくらいしかいない。両者共にどこに行ったのかずっと気になっていた。ミルは今どうしている? 本当にあのブラックワイバーンを倒したのか?」


「さぁ、どうでしょうね」


 僕は身をひるがえし、受付に向かう。だが……。


「ん……、あの色……、あの艶……、嘘だろっ!」


 マレインさんは僕の左手首を握りしめてくる。そのまま、ブラックワイバーンの革で作ったブレスレットを触り出した。

 彼の目の光はお酒のアルコールを吹き飛ばすほどに輝いており、僕は内心、やってしまったと天井を見る。

 彼はブラックワイバーンと対峙している。あの化け物の姿を見ていたら、革になろうとも感覚で分かってしまうようだ。


「お前か……。いや、そんな馬鹿な。白髪であのブラックワイバーを倒せるわけない。ブラックワイバーンの革が買えるほど儲かったのか。それともミルに分けてもらったのか! 頼む、俺にもブラックワイバーンの革を少しでもいいから分けてくれ……、いや、買わせてくれ!」


 マレインさんは僕の肩を握りしめ、目の下のクマが酷いのに、充血した目をかっぴらいてお願いしてくる。

 どうやら、彼が執着していたのはブラックワイバーン関連らしい。でも、分けてくれと言ったのに、途中で買わせてくれと言い換えたところに、彼の心の成長が見て取れた。今の彼なら、多少は話を聴く気になる。


「落ち着いてください。そんな、お酒を飲んで大声を出すと危険です。僕はお金を払わないと行けないので、少し待っていてください」


「金を払う……。なにに?」


「別荘です」


「べ、別荘……」


 マレインさんの顔がポカーンとなり、完全に酔いが覚めていた。彼に少し待っていてもらい、僕は受付嬢のもとに向かう。


「すみません、買いたい家が見つかったので、お金を払いに来ました」


「そうですか。では、資料を見せてもらえますか」


 受付の女性はようやく僕の顔を見た。そのまま、僕から資料を受け取る。買いたい資料を指定する。その後、色々資料を書かされた。火災保険、地震保険、などの大量の保険に入らないといけないと言われたのだが……。


「やめとけやめとけ、そんなぼったっくりの保険に入る必要はねえよ。ただの別荘なんだろ、永住する気がねえなら、別荘を気に入ってから保険に入っても遅かねえよ。前金だけでも家屋と同じ金をふんだくられるぜ」


 マレインさんは僕の肩に手を回し、受付嬢の冷たい視線を笑い顔で制する。

 僕はマレインさんの言うことにしたがう。すると、他領の者が家を持つと、それだけで税金が取られると言われた。すると、マレインさんが保証人と言う欄に自身の名前を書き、書類を受付台に叩きつける。

 どうやら、保証人でもカエルラ領の者が受けてくれた場合、他の領土から来たものでも税金が免除されるらしい。受付嬢がとことんお金をむしり取ろうとするのに、マレインさんはことごとく躱して行く。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ぶ、建物代、金貨三〇〇枚をお支払いください……」


 受付の女性は歯から血が出るんじゃないかと言うくらい噛み締めながら、黒い板を受付台にゆっくりと置く。

 僕は大金貨三枚を置き、鍵と交換してもらった。

 マレインさんのおかげで、僕が払うお金が金貨八〇〇枚ほど少なくなった。どうしたら、そこまでお金をむしり取れるのだろう。逆に怖い。


「この、役立たずが……」


 受付嬢の鋭い視線がマレインさんに向けられる。

 だが、痛くもかゆくもないといった表情のマレインさんは僕の肩を持ちながら、受付の前を颯爽と後にする。

 昔の爽やかでカッコいい顔ではないけれど、僕からすれば今の現実を知り、大人になった彼の方が何倍もカッコよく見える。

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