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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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実家に暑中見舞い

「代わりに、二人が履いている下着を見せてもらおうかっ!」


 イリスちゃんはへへへっと笑いながら、両手を開き、シトラが着ているドレスのスカートをめくった。


「うぅ……。い、イリス様……、恥ずかしいです……」


「し、シトラ、すんごいの履いているんだね……」


 イリスちゃんはスカートを戻し、苦笑いを浮かべていた。すぐ隣にいるミルの方に視線を送ると、自らスカートをめくる。


「えへへ、ぼくの下着は……ぐへっ!」


 ミルはイリスちゃんに頭を叩かれた。


「ほぼ紐じゃない! そんなの下着じゃないわ!」


「うぅ……、そんなに強くぶたなくても……」


 三名の女子はやんややんやと騒ぎ、楽しそうに笑いあっていた。僕の存在感は限りなく薄く、影になってしまったのかと思うほどだ。


 夜遅くなってしまう前に王城を出た。そのまま、家に帰る。


「はぁー。イリスさんはやっぱり面白い方ですねー。あの人と生活したら飽きる日が来なさそうです」


「そうね。心が広いし、話しも面白い、元気いっぱいで、頼もしい方だわ」


 ミルとシトラのイリスちゃんに対する印象は凄くよく、皆、尊敬しあっているようだ。


 僕達は服を着替え、夕食の準備をする。肉や野菜、スープと言うシトラのお手製料理を堪能し、心から感謝した。


「キースさん、国王から何か貰ったんですよね。見せてくださいよ」


 ミルは興味本位で僕に訊いてきた。


「うん」


 僕は母さんの形見に通した黒い鍵と、杖用のホルスターに入れてある白い杖を取り出す。


「鍵と杖?」


「はぁー。なんで、そんな、よくわからない品を持ってくるのよ。もっとわかりやすいドラゴンを切った剣とか、オリハルコンの盾とかにしておきなさいよ」


「そんなこと言われても……。今更、交換してくださいなんて恥ずかしくて言えないよ。どちらも国宝だから、凄い価値があるんだ。僕達の家宝にするつもりだよ」


「鍵と杖が家宝ね……。そこら辺にある品と何も変わらないと思うけど……」


 シトラとミルが見てもただの鍵と杖にしか見えないと言う。僕としては良い貰い物だったのだが、もっと国宝っぽい品の方がよかっただろうか。


 お風呂に入り、体を清めた後に寝る準備をしてベッドに倒れ込む。シトラとミルを寝かしつけ、僕は勉強と鍛錬を繰り返した。

 八月八日で一七歳だ。来年で一八歳。再来年に大学進学できるように高等部の卒業資格を取るため、毎日勉強漬け。でも、別に嫌じゃない。

 他の学生たちはほぼ毎日学園に行って授業を受けている。日々の半分は勉強に当てているのだ。なら、僕達は勝つために日々の半分を勉強に当てないといけない。そんなことは仕事もしないといけない僕達にとって不可能だ。ただ、僕はアルブの力を使えば行える。

 子供のころは勉強なんてほとんどさせてもらえなかったが今は好きなだけできる。そう思うだけで、やる気が溢れ出してきた。昔出来なかった分、今、取り返すのだと。


 気づいたころに朝になっていた。あまりに早い八時間だった。朝の静かな時間は心を静めるための瞑想に当てる。


 朝、目を覚ましたシトラとミルにキスされ、僕も二人にキスを返す。


「今日はどこの家に行くんですか?」


 ミルは椅子に座りながら、訊いてきた。


「元実家に行くよ。スージア兄さんに暑中見舞いをわたしに行かないといけない」


「また、相手に気を使わせるわよ。もう少し真面な贈物にしておきなさいよ」


「そう言われてもなぁ……。他に用意している品はないし、せっかくなら持っていてもらいたい。なにがあるかわからないからね」


「そうね。スージア様に何かあったら私は耐えられないわ……」


 シトラは両手を握り、スージア兄さんの体を労わっていた。


「じゃあ、今日も正装をしないといけないと言うことですね」


「うん。今日は普通の下着を履きなよ」


「はぁーい」


 ミルは笑いながら手をあげた。本当にわかっているのだろうか。


 僕達は朝食を終えた後、勉強と鍛錬をして時間を過ごす。正装に着替え先日と同じ午後四時前にスージア兄さんの家に歩いて向かった。


 家の門に着くと黒い燕尾服を身にまとった知り合いが立っていた。


「これはこれは、キース男爵様、今日はどういった御用でいらしたんですか?」


「オーリックさんこんにちは。今日は暑中見舞いに来ました。スージア兄さんはいますか?」


「旦那様ならいらっしゃいますよ。いつもの書斎におられます」


「ありがとうございます」


 僕達は実家の門をくぐり、庭園の長い道を歩いて扉に到着。

 メイドさんに扉を開けてもらい家の中を歩く。


 使用人やメイド、執事などを見ると昔よりも獣族の割合が多くなっていた。加えて奴隷だ。僕が知っている顔のメイドや執事がほとんどいない。なんなら、沢山置かれていた高級な品もない。絵画に壺、花瓶、剣、鎧、その他諸々一切見当たらなかった。


「いったいどういうことだ……」


「きゃっ!」


 獣族のメイドは何かに躓き、運んでいた紅茶のカップを大きく空中に放った。決してわざとじゃないと思うが、僕の方に飛んでくる。


「主、杖を持ってこっちに向ってくるカップと紅茶に向けてください」


 僕の肩に乗っていたアルブは、呟いた。


「えっ……」


 僕は右腰に掛けていた白い杖を持ち、カップと紅茶に向ける。すると、紅茶とカップがふわりと浮いた。


「『無重力』の効果が発動しています。その杖を向けた先に特定の効果を付与することが可能になりました」


「え……」


 僕はカップを摘まみ、紅茶の下に止める。そのまま杖を退けた。すると、お湯が落ち、綺麗に入る。


「す、すみませんでした。いつっ」


 獣族のメイドは足首を痛めており、顔を顰める。


「じゃあ……」


 僕は杖先をメイドの足首に向けた。すると『無傷』の効果が発動した。


「す、すごい……。遠くからでもアルブの効果が楽に使えるようになったんだね」


「はい。その通りです。これで戦いもしやすくなりますよ」


「そうなの?」


 僕は疑問に思ったが、今は獣族のメイドの方が心配だ。


「足首は痛くない?」


「は、はい。もう、痛くありません。えっと、紅茶を掛けそうになってすみませんでした」


 獣族のメイドは頭を下げ、心から詫びてくる。


「足下に気を付けて運んでね」


 僕は紅茶を獣族のメイドが持っていた板の上に乗せる。


「はい。気を付けます」


 頭を下げ、僕が向かおうとしていたスージア兄さんの書斎に向かう。

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