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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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暑中見舞い

「わかったわ。気を付けてね。中身が知られたらキースがどんな目に合うか……」


「はは……。ちゃんと梱包されているから大丈夫だよ。ライアン、アイクさん、リーフさん、ドリミアさん用の手紙とエリクサーが入った紙袋を持ってと」


 僕は四袋を持ち、冒険者ギルド支部に歩いていった。


「すみません。贈物です」


 僕は冒険者ギルド支部の受付に紙袋を四袋持って行った。


「相手のお名前と領土、住所、ギルド番号がわかる場合はお書きください」


「わかりました」


 僕は手紙を送る相手を間違えないようにしっかりと調べ、クサントス領に住んでいる橙色の勇者ライアン、同じくクサントス領に住んでいる森の民で日ごろからお世話になっている品(避妊具と発情止め)を作ってくれているリーフさん、ルフス領に住んでいる僕の師匠のアイクさん、同じくルフス領に住んでいるアダマスや指輪を作ってくれた鍛冶師のドリミアさんに手紙とエリクサーが入った箱を紙袋に入れ、紙袋に荷札を巻きつけギルド経由で配達してもらう。

 割れ物注意と記載しておき、最も安全に確実に配達してくれるが、値段が張る配達方法をお願いした。割れたら笑い事じゃすまない。


 全て出し終えた頃、時刻は午前一一時を回っていた。もう昼食が迫っている。家に食料が無かったので市場で軽く買い物を済ませてから家に帰った。


「うわ~、負けました」


「やっぱりね。キースはこういう男なのよ」


 ミルとシトラが何か賭け事をして遊んでいた。


「どうしたの?」


「キースさんが帰ってきた時に買い物をしてくるか来ないかでぼくは買い物をしてこない方に賭けたんですけど、シトラさんに負けました」


「何その賭け……。まあ、丁度昼頃だったし、食材も家に無いと思ったから買って来たんだ」


「くうぅーっ! シトラさんの読み通りじゃないですか!」


 ミルはシトラに完全敗北したようで、テーブルに突っ伏していた。


「まー、これくらいは余裕よ。ミルちゃんはまだまだ甘いわね」


 シトラは腕を組み勝ち誇った表情を浮かべている。

 シトラは椅子から立ち上がり、僕が買って来た食材を使って料理を作り出した。ミルも手伝い、シトラと共に料理を作る。


 僕はアルブの体をピカピカに磨き上げた。彼女のおかげで力が使えているので感謝の気持ちを伝え、態度で示す。


 シトラとミルはオムレツを作り、僕に差し出した。シトラのオムレツは黄色でつやつや。ミルの方は少し焦げが見え、形がいびつだ。でも、どちらも美味しい。


「シトラ、ミル、ありがとう。凄く美味しいよ」


「そう、よかったわ」

「ぼく、もっと料理が上手くなりますね」


 両者は椅子に座り、神に祈ってから料理を食べ始める。昼食を終えた僕達は軽く勉強をして三時のおやつを楽しみ、午後四時前になった。


「よし。正装に着替えてから王城に行こうか」


 僕は椅子から立ち上がり、冒険者服を脱ぐ。


「そうね。そろそろ準備しましょうか」

「イリスさんに会うの楽しみです~」


 シトラとミルも服を脱ぎ、以前、クサントス領で買った藍色っぽいドレスと黄色のドレスを身につける。上からローブを羽織り、髪型を整え化粧を軽くして誰の前に出ても恥ずかしくない見た目になる。


 僕も髪と服装を整え、フルーファは家でお留守番してもらい、アダマスを左腰に掛け、準備を終える。荷物を持ち、王城に向かった。


「こんにちは」


 僕は王城の入口で門番をしている騎士の男性に話しかける。


「ん? これはこれは、キース男爵こんにちは」


 騎士は礼儀正しく僕に頭を下げてきた。


「今日はどういったご用件でしょうか?」


「王様とイリス王女に暑中見舞いを持ってきました。手渡ししたいんですけど、今、王城におられますか?」


「はい、現在、国王はお仕事中でございます。イリス王女は……勉強中かと」


 騎士の男性は扉を開け、僕達を中に入れてくれた。僕がイリスちゃんの婿だからか、待遇が良い。

 初めに国王の仕事場に向かった。国王の部屋の前にも騎士が立っており、警備が厳重だ。


「こんにちは。お仕事中すみません」


「キース男爵、滅相もございません」


 二名の騎士は踵をびしっと合わせ、胸を張りながら僕を立ててくる。彼らも貴族だと思うのだが、そこまで敬意を払われると困るな。

 二名の騎士は王の間の前から離れる。

 僕はアダマスとアイクさんから貰ったナイフを騎士に預ける。持ち物は紙袋に入ったエリクサーのみ。シトラとミルは部屋の外で待っていてもらうようにお願いした。


 扉を三回叩く。


「どうぞ」


 国王の声が聞こえたので、扉を引いて中に入った。


「国王様、お久しぶりにございます」


 僕は部屋に入ってから床に膝をつき、首を垂れる。


「あぁー、そんな堅苦しくせんでもいい」


「では、失礼ながら、立たせていただきます」


 僕は立ち上がり、高級な革製の椅子に座る国王の姿をみた。ギラギラした服装ではなく、仕事人のような燕尾服を見に纏い、眼鏡をかけて書類仕事をしていた。


「今日は暑中見舞いに参りました」


 僕は左手で紙袋を抱え、包装されている木箱を右手で取りだす。左手に持ち替え、右手で紙袋をたたんだ。国王が紐をほどきやすいように正面を向け、手渡しする。


「お体にお気を付けください」


「ああ、ありがとう」


 国王は木製の箱を手に取り、紐の間に入っていた花を抜き取って花瓶に入れ替えた後、紐をほどいて箱を開けた。


「ん? こ、これは……」


 国王は椅子をひっくり返す勢いで立ち上がり、木製の箱を抱きかかえるように持って西日に当て、液体を透かす。


「この色艶、魔力の含まれ具合、厳重な包装……。エリクサーか?」


 国王は苦笑いをうかべながら、訊いてきた。


「はい。クサントス領の旅行中、アルラウネと交戦し、倒して得た素材を使って緑色の勇者に作ってもらった出来立てほやほやのエリクサーです」


「は、はは……。まいったな……


 」国王は開けた箱を閉め、椅子にゆっくりと座る。


「では、僕はイリス王女のもとにも暑中見舞いに行ってまいります」


「わかった。その後、もう一度顔を見せなさい。イリスも連れてくるといい」


「わ、わかりました」


 僕は頭を下げ、部屋を出る。そのまま、イリスちゃんがいる部屋に向かった。イリスちゃんの部屋の前に騎士はおらず、不用心だった。扉の前に向かうと中から声が聞こえてくる。


「ん、んぁ……。キース君……、だめ……、そんなところ弄っちゃ……」


「……」


 僕達は間が悪かった。暑中見舞いに来ると言ってから伺うべきだったな。

僕は扉を三回叩き、イリスちゃんを呼んだ。


「ちょ、なにしに来たの! 今、取込み中なんだけど! って、イリスちゃん?」


 イリスちゃんは騎士に呼ばれたと勘違いしたのか、大きな声を出したが、すぐに察し、扉を開けた。

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