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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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暑い王都

「はぁ~、ウィリディス領の旅も楽しかったですねー。でも、最後の最後で大変な目に合いました」


 ミルは後頭部に手を当て椅子に座る。心地よい感情が強いのか、どこか垢ぬけた雰囲気になっていた。


「そうね。でも、大金をはたいて買った家と土地が無事でよかったわ。建物が壊された者達はほんと可哀そうよね」


 シトラは窓からウィリディス領の建物を見る。

 線路はすでに復旧しており、走れる状態になっていた。


「でも、ウィリディス領の夜明けはもうすぐだ。きっとこれからは晴れた景気が続くよ」


「そうね。良くも悪くもアルラウネの仕業で景気が回復するでしょうね。キース達が倒したブラックワイバーンを売って経済を回したルフス領みたくね」


 シトラはブラックワイバーン製のブレスレットを見せてくる。加えて反対側に付けられたアルラウネのミサンガもはっきりと見せてきた。


「そうだね。きっとアルラウネの経済効果はブラックワイバーンと同じくらいあるはずだ。少しでもウィリディス領が潤ってくれるといいな……」


 僕は右手首にミサンガを付けた。


「キースさんはどんなお願いをするんですか?」


 ミルも右手首に付けながら訊いてきた。


「そうだなぁ……。なかなか叶わない夢が良いと聞いたから……、国が平和になりますようにとか?」


「不可能なお願いをしても意味ないでしょ……。そうねー。私だったら、キースが伯爵になりますようにとか、侯爵になりますようにとか、なんなら公爵になりますようにとか」


「それも無理があるでしょ……」


「じゃあじゃあ、キースさんの子供を一二人産むとかはどうですか? これなら頑張れば現実可能ですよね」


「そ、そんなに子供がいたら育てるのが大変だと思うけど……」


「ブラックワイバーンやアルラウネと戦うより簡単ですよ~。多分ですけど……」


「甘いわね。子供の世話は驚くほど辛いらしいから簡単じゃないって思っておいた方が良いわよ」


 シトラはミルに鋭い視線を送った。


「こ、怖いこと言わないでくださいよー。まあ、確かに世の中の者が一〇人も子供を産んでいないと言うことはそいう言うことなんでしょうね……」


 ミルは考え込みながら、呟く。


 僕達は列車の窓からどんどん離れていくウィリディス領を見つめ、王都を目指す。

 列車に乗っている間、仕事をすることはできない。つまり、することは鍛錬と勉強、趣味に絞られる。朝に勉強、疲れたら鍛錬、昼過ぎまで鍛錬と勉強を繰り返し、午後三時のおやつを終えたら自分の好きなことをすると言う決まりを作った。すると、しっかりと集中して物事に取り組むことができるようになり、学力と筋力が同時に付いていると実感できた。


 夕食は列車の中にいる料理人が作った品が運ばれてくる。量を多めにしてもらい、お腹を満たした。

 主菜が肉料理と魚料理で一日起きに変わり、料理の種類の数も多く満足が行く列車の旅だった。食事の後はシャワー室で汗や汚れを落とし、眠る者と勉強する者で別れる。四日に一度だった愛し合う日は、距離が近いこともあってシトラとミルの感情が抑えきれず二日に一度に変わりベッドが壊れないかと思うほど激しい夜を耐える。


 相手をずっと愛することがとても大変だと痛感した八日間だった。それでも僕はシトラとミルを愛せている。そんなことをシトラに言うと臭いと呟かれるので、態度で示す。


 八日間の移動を終え、暑さが強い王都に戻って来た。七月二四日に王都に到着し、冬のころと打って変わって日差しが眩しい景色が広がっていた。

 ウィリディス領がどれだけ瞳に優しい景色だったかわかる。王都はレンガや黒塗りのお店が多く、日の熱を吸収し、王都全体の温度が上昇しているようだった。


「はぁー、暑いわねー。ウィリディス領の方が過ごしやすいわ」


 シトラは王都の駅に降り立ち、首元をパタパタと仰ぎながら汗をぬぐう。メイド服を着ていたらそりゃあ、熱いよな。


「日差しはお肌の天敵ですーっ!」


 ミルは白い肌を守るため、日焼け止めクリームを顏や腕、脚など、素肌が見えている部分に塗り手繰っていた。服装は冒険者服で、小さめの上着にお尻が隠れきれていないショートパンツ。薄手のローブを羽織って日差しを遮っていた。


「じゃあ、カエルラ領行きの切符を買っておこう」


 僕はカエルラ領行きの切符を購入した。どうやら八日後に到着するらしい。つまり、シトラの一七歳の誕生日は王都で迎えるようだ。


「いったん家に帰ろうか。荷物を置いて家の掃除をしてからそれぞれの自由にしよう」


「そうね。こんな人が沢山いる場所にいたら疲れちゃうわ。さっさと帰りたい」


「はぁー。寒い場所は嫌ですけど、暑い場所も嫌ですよね……。ぼくはどっちも苦手なので、気温が丁度いいウィリディス領の方が好きです」


 ミルは手で顔を仰ぎ、汗を気化させていた。


「もう、皆さん、貧弱ですねー。ドラゴンの私は全く問題ありません」


 アルブは翼を羽ばたかせ体に風を当てて涼んでいた。僕の頭部から風が来るので僕も涼める。


「家に帰れば冷房があるから早歩きで帰ろうか」


 僕達は王都の街中を早歩きで移動し、家に帰る。三カ月ぶりに帰って来た王都の我が家はウィリディス領の家と比べると凄くみすぼらしい。でも、家の中に入ると僕達が住んでいた生活臭がする。ふと懐かしい気持ちがうかんだ。なんせ、ウィリディス領の家より王都の家の方が長い間住んでいたので、その分の思い出が詰まっている。


「三カ月くらい開けていても家の中は綺麗だね」


「スージア様が定期的に家を綺麗にしてくれているはずよ。もう、掃除をする必要がないくらい綺麗だわ」


 シトラは辺りを見渡し、綺麗な広間を歩く。


「なんか街中を外れると案外涼しいですね。周りに大きな建物が少ないからですかね?」


 ミルの言う通り、家の中は案外涼しかった。王都の駅は王都の中央辺りに位置しておりとても暑かった。でも僕達の家は王都の外側付近にあるので建物が密集しておらず、風が通るため涼しいらしい。窓を開けるだけで充分生活できる。


「じゃあ、正装に着替えて王城に暑中見舞いを出しに行こうか」


「今の時間ちょっと早いんじゃない? 夕方くらいがいいと思うわよ」


「そう? じゃあ、午後四時くらいに行こうか。僕は冒険者ギルド支部に行って暑中見舞いを出してくるよ」

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