ウィリディス領と別れ
「それでそれでー。こんな仲です」
プラータちゃんは僕の首に手を回し、ギュッと抱き着いてくる。
「えぇ、な、仲良しなんだね」
プラスさんはプラータちゃんと僕の間に手を入れ込み、すーっと引きはがす。そのまま僕の手を取って引っ張った。
「き、キース君、さすがに未成年に手を出すのは……」
「手を出していませんよ。僕だってそれくらいの知識はあります。だから安心してください」
「あ、安心してと言われても……。未成年に手を出したら犯罪だからね」
プラスさんは念入りに言って来た。僕は未成年に手を出すほど落ちぶれていない。
「そんなに心配してくれてありがとうございます。でも、僕は犯罪を起こす気は一切無いです。これからも妻ともどもゆったりと生活していきます」
僕はミルとシトラに視線を向けた。
「主、私もいるんですけどー」
左肩に乗ったアルブは頭の角で頬を突いてくる。
「ああ、ごめん。アルブもいたね」
僕はアルブの顎下を優しく撫で、少しでも和ませる。そのまま頬にキスをして許してもらった。
僕達は駅まで馬車で移動する。プラスさんがいると多くの人が助けを求めてしまうので周りから見られないようにするための配慮だった。
ウィリディス領の駅に移動し、王都行きの列車が来る八番ホームまで歩いていく。
「じゃあ、私達はここまでだね」
プラスさんとプラータちゃんは通路の途中で立ち止まった。
「私も一緒に行きたいですけど、勉強しないといけないのでついていけません」
プラータちゃんは少々落ち込み、視線を下げる。
「プラスさん、プラータちゃん。また、会えるよ。これからのウィリディス領をお願いね」
「うん。任せておいて。ウィリディス領は私の生まれ故郷だもん。なにがなんでも守って見せるよ。キース君も旅を楽しんでね。ミルちゃんとシトラちゃんを泣かせちゃ駄目だよ」
プラスさんは僕にぎゅっと抱き着く。僕もぎゅっと抱きしめ、力をもらった。
「私、ウィリディス領が大好きなので、絶対この場所でお花屋さんを開きます。キースさんにも来てもらえるような立派なお花屋さんを作ってみせます!」
プラータちゃんは夢を再確認し、大きな声を出して宣言した。
「プラータちゃんなら出来る。絶対に出来るよ」
僕はプラータちゃんをぎゅっと抱きしめる。
「キースさん……」
プラータちゃんは僕の頬に軽くキスをして来た。子供ながらに頬を赤らめており、黄色の瞳がおろおろしている。
僕は微笑み、プラータちゃんのおでこにキスをした。
「二年前は別れの時に顔を見れなくてごめんね。でも、今はしっかり見てまたねと言えるよ」
「キースさん……。うぅ……。な、泣かないって決めてたのに……」
プラータちゃんは瞳を潤わし、目尻からつーっと一筋の透明な液体が流れた。僕は親指で流れを止め、泣かせない。
「プラータちゃん。辛い時があったら周りに助けを求めるんだよ。きっと誰かが助けてくれる。僕が近くにいれば、なにがなんでも助けるから」
「はい。私、キースさんにもう、三回も命を救われてしまいました。私もキースさんを救えるように頑張ります」
プラータちゃんは苦し紛れの満面の笑みを浮かべ、僕に元気をくれた。
僕は彼女から元気ややる気を何度貰っただろうか。数えきれないほどプラータちゃんにお世話になっている。彼女の未来が明るいことを願って僕も笑った。
すっと離れ、立ち上がる。
「プラータちゃんだけいいなー。私もキスしてほしいなぁー」
プラスさんはブツブツと呟き、僕のもとにやってくる。
アルブが翼を広げ、僕とプラスさんがキスをしている場面をプラータちゃんに見せないように配慮してくれた。
「うぅ~。二人して何をしているんですか! もしかして、キースさん、プラスさんも落としちゃったんですか……」
プラータちゃんはわなわなと震えながら僕の方を見ていた。
「えっと、プラスさんが勇者を辞めた時に僕以上の男性が現れたら関係はそれまで。でも、現れなかったら……、関係は深まる」
「そ、そんなの、キースさん以上の男性が現れるとか、ありえないじゃないですか!」
プラータちゃんは僕に抱き着きながらぽこすかと殴ってくる。痛くないが、心に響く……。
「プラータちゃんも安心して。大人になった時、その気があるなら僕が面倒を見るから」
「むぅう~っ! 私はキースさんのペットじゃないんですよ! もう、怒りました! 私、大人になってキースさんをメロメロにしてやります! キースさんの方から求婚をしてくるくらい美人に成長してやりますよ!」
プラータちゃんは物凄い剣幕を発しながら目を燃やしていた。
「じゃあ、僕は大人のプラータちゃんが惚れるくらい良い男になってくるよ」
「い、今以上にいい男になっちゃったら、世の中の女子全員がキースさんに落とされちゃいます……。で、でも、望むところです。私もキースさんをウハウハ言わせるくらい良い女になってやります!」
プラータちゃんは元気よく叫び、腕を組んで心を熱くさせていた。
「望むところだ」
僕はプラータちゃんの戦線布告を受け取る。
「じゃあ、プラスさん、プラータちゃん。また会いましょう」
「うん。絶対に会おうね」
「私はキースさんと会う時まで全力で生きることを誓います!」
プラスさんとプラータちゃんは大きく頷く。
「えっと、キース君。これ、プラータちゃんと一緒に作ったの」
プラスさんは細長い黒い糸を何十にも編み込んで作った品を手の平に出した。全部で五本ある。
「これは何ですか?」
「これはミサンガって言うお守りだよ。これを手首や足首に付けて切れるまで待つと願いが叶うっていうちょっとした品。アルラウネの髪から作ったの。凄く丈夫だから長い長い年月をかけて切れると思う。もしかしたら切れないかもしれない。だから凄く難しいお願いをしたらいいかも」
「なるほど。ありがとうございます」
僕は三本受け取った。残りの二本はプラスさんとプラータちゃんが手首に付ける。
僕はシトラとミルに一本ずつ手渡した。
「じゃあ、もうそろそろ行きますね」
「うん、呼び止めてごめんね。どうしても渡しておきたかったから」
プラスさんとプラータちゃんは僕達に手を振って見送ってくれた。
僕とミル、シトラ、アルブは王都に向かう列車の八車両目に乗る。最も高い車両でまるまる僕達が使える。ベッドや手洗い場、トイレ、軽いお風呂場もある部屋だ。この場で八日間ほど列車で過ごすことになる。
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