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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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お金を落とす

「うん。皆さんにお世話になったし、気持ちを込めて贈ろうかなと思ってさ」


「相手が困るんじゃない? 良いものを貰い過ぎたら返すのに困ると思うし……」


「うーん、別に気にする必要無いと思う。だって、僕の気持ちだから」


「はぁ……」


 シトラとミルは何度もため息をついていた。どうも鬱憤が溜まっているようだ。

 今は夏場なので二名とも鬱憤が溜まりやすい。でも、いつもなら無理やり襲ってくるのに最近は僕の集中したいようにさせてくれていた。強い薬でも飲んでいるのかな。


「最近、僕は二人を可愛がれていないと思うんだけど、二人は夏場なのに発情していないね。あんまり強すぎる薬を飲んでいたら効きにくくなるからあまり飲まないでほしいんだけど」


「ああ、そのこと? 実はプラスさんに貰った品がすごく役立っているの。最近はキースがすごく忙しかったでしょ。だから、頼むのも悪いと思って……。鬱憤が溜まった時は毎晩使ってるわ。薬じゃないから癖にもなりにくいし、安全よ。まあ、本物とは程遠いけど……」


「ですです。本物の八万分の一くらいですけど、薬を飲むよりは気が楽なので使っています。多分、鍛錬にもなっているのでキースさんに負けないように我慢できるよう努力してます」


 シトラとミルは以前、プラスさんが作っている偽物の品を使って鬱憤を晴らしているようだ。それはそれで……なぜかムカッとする。シトラとミルが僕の知らない所で偽物の僕に奉仕していると思うと……いてもたってもいられない。


「もう、救助活動は終わったし、七月の半分は余裕がある。今晩は僕が二人を可愛がるから」


「……そう」


「はわわ……、な、なんか、キースさんが本気になっちゃってます……」


 今日は休日にして疲れを癒す。庭に植えていた回復草と解毒草はすくすくと成長しており、立派に育った。

 もう収穫時期なので、回収しておいた。薬屋に無償で渡したら残っている薬の中で好きな品を持って行っていいと言われた。……媚薬を選んでしまった。僕の方が鬱憤を溜めているらしい。もうすぐ一七歳だし、年相応の性欲と言う訳か……。


 僕はボロボロのウィリディス領を少しでも活気づけようと思い、こんな時期でもやっているお店に入り、お金を下ろして行く。

 シトラとミルに食べてもらいたいと思い高級な牛を肉を買い、プラータちゃんが欲しがっていた白い服も買い、アルブが欲しがる食べ物をかたっぱしから買って食べさせる。

 お金を使わない僕がここまで出すのも珍しい。沢山買い物をした後、プラータちゃんの家に向かう。彼女は学園の仕事を辞めフルーンさんに勉強を教わると決めたようだ。フルーンさんもプラータちゃんの熱に負け勉強を教えることにしたらしい。


「プラータちゃん、これ、良かったらまた着て」


 僕は綺麗に梱包してもらった服をプラータちゃんに手渡す。


「え……。何ですかこれ?」


「まあ、開けてからのお楽しみ」


「ええ……」


 プラータちゃんは恐る恐る袋を開ける。生地を見た瞬間、袋口を閉め、目を丸くしていた。どうも、想像していた品と違ったらしい。


「え、ええ……。な、なんでこの服が……」


「プラータちゃんにまた着てほしいと思って買っちゃった。少し大きめだから、プラータちゃんの体が大きくなっても着れるはずだよ」


「うぅ……、キースさん……。ありがとうございます!」


 プラータちゃんは僕に抱き着き、感謝してきた。彼女の体から薬草のにおいがふわりとした。しっかりと学んでいるようだ。


「じゃあ、プラータちゃん。出発するときにまた来るよ」


「え……、出発って……、また別の領に行くってことですか?」


「うん。僕たちの目的は領を旅することだからね。ウィリディス領をこのまま放っておくのも気が引けるけど、ずっとここにいるわけにもいかない。プラータちゃんにも思い出話が出来るように経験を沢山してくるよ。プラータちゃんも三年間、努力して頑張ってみて」


「は、はい! 頑張ります! キースさんに負けないようにもう一度、頑張ってみます!」


 プラータちゃんは両手を握りしめ、黄色い瞳を星以上に輝かせていた。


「良い顏だね」


 僕はプラータちゃんを抱きしめ直し、すっと離れる。


 プラータちゃんの家から自分の家まで戻った。


「シトラ、ミル、ウィリディス領にお金を落としてきた」


 僕は荷物を床に置く。肉や野菜、調味料、服、靴、魔導書などなど……。ざっと金貨八〇〇枚分は使ったかな。


「ちょ、買い過ぎ! キースはもうやりすぎってくらいウィリディスギルドにお金を寄付しているじゃない。わざわざ落とす必要あったの?」


「そりゃあ、あるよ。ウィリディスギルドに渡したお金が領民にすぐに還元されるわけじゃない。実際のお店にお金が入ればすぐに使えるでしょ。一店舗、一店舗にとっては微々たるお金かもしれないけど、無いよりは全然マシだと思う」


「そ、そうだけど……。そんな品まで……。もう、そんなに溜まっているなら早く行ってくれればよかったのに……」


 シトラはもじもじしながら頬を赤らめていた。


「あぁ~、キースさんがぼくたちをあの世に逝かせようとしてますー。薬なんかなくても死んじゃいそうになるのに、媚薬なんて飲んだらぼくたちはどうなってしまうんでしょうか」


 ミルはわくわくしすぎて両目を金色に輝かせ、星が舞っているようだった。口角をグーッと上げ満面の笑み。もう、輝く満月のような顔だ。まだ昼だというのに……。


「はは……、匂いでわかっちゃうんだ……」


 僕は媚薬が入ったガラス製の瓶をテーブルの上に置いた。やはり獣族の鼻は良く効く。


「今日は発情止めを飲んでいないから、媚薬なんて要らなかったのに……」


 シトラは鼻をスンスンと鳴らし、お酒を飲んだように目がほわほわしていた。


「ごめん、回復薬と毒消しを薬屋に売ったら好きな薬を持って行ってと言われて……。興味本位で持って来てしまった……」


「でもでも、キースさん。ぼく、もっと強力な媚薬をもう持っているんですけど……」


 ミルはブラックワイバーンの睾丸から作った超強力な媚薬が入った黒いポーション瓶を見せてきた。さすがにそんな品を使ったら僕達は死んでしまう。

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