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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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戦いの痕

「と、とりあえず、ウィリディスギルドに報告しないとな……」


 フルーンさんは今回の兼を疲れている僕たちに変わって報告しに行ってくれた。


「う、うわあああんっ! キースさんっ!」


 プラータちゃんが大泣きしながら僕のもとに走って来た。僕にぎゅっと抱き着き、これでもかとしがみ付いてくる。


「うぅう……。キースさんが死んじゃったかと思ってずっとずっと泣いてました……」


「ごめんね、プラータちゃん。怖がらせてしまって。でも、僕はこの通り、生きてるから」


 僕はプラータちゃんの手を握り、涙をぬぐう。


「私、このネックレスを握りしめて神様にずっとお願いをしていたんです。キースさんを助けてくださいって。もう、握りしめ過ぎてネックレスがびちょびちょです……」


 プラータちゃんはネックレスの飾りを開き、一昨日撮った写真を見ていた。


「なに、滅茶苦茶楽しそうな写真じゃない。どういうこと……」


 シトラはプラータちゃんの写真を覗き込み、僕の方を見てくる。


「むむむ……。ぼくとシトラさんがいない時にこんな楽しそうなこと……」


「あの時はシトラとミルはプラスさんと一緒に勇者邸にいたでしょ。その時、プラータちゃんと二人でデートしていた時に撮ったんだよ。まあ、その後、アルラウネが来ちゃったんだけど」


 僕はプラータちゃんの泣き顔を笑顔にしたくてムギュっと抱き着く。


「はわわ……。き、キースさん、困ります。心臓が……ばんって、爆発しちゃいます!」


「むぐぐ……、あの時、あんな品に惑わされていなければ……」


「ぐぬぬ……。ほんとです……。あれはあれで凄かったですけど、やっぱりプラータちゃんが物凄く羨ましいです!」


 シトラとミルはプラータちゃんの写真付きネックレスが大変羨ましいようで、握り拳を作っていた。二名は質が良いネックレスを持っているんだから、別にいい気がするけど……。


「二人共、気持ちは一緒だよ。だから、嫉妬する必要は無い。僕たちは領土を回るし、他に思い出も作れる。プラータちゃんは成人するまであと三年あるし、勉強に集中しないとね」


「うぅ……。三年間、長いです。でも、頑張ります!」


 プラータちゃんは握り拳を作り、三年間、勉強を頑張ると誓った。きっと三年も経てばウィリディス領も復興しているはずだ。綺麗な花を売っているプラータちゃんの姿が優に想像できる。


「私達も自分磨きをしないと、プラータちゃんに負けちゃいそう……」


「そ、そうですね。頑張らないと」


 シトラとミルもなぜかわからないが、やる気を出してくれた。


 アルラウネの襲来によってウィリディス領の中はハチャメチャになっている。でも、アルラウネを倒せたことによって領土の活気は戻り、プルウィウス王国も前より平和になったはずだ。イリスちゃんに面白い手紙が書けそう。もう七月だし王都に暑中見舞いでも持って行かないとな。行けない場所や相手には送らないと。


 僕は長い間戦っていたこともあり、自分が思っている以上に疲れていた。そのため、家に帰ってすぐに眠り、次の日の朝に目を覚ます。


「ふぐぐー、はぁ~」


 僕は両手を高く伸ばし、そのまま脱力する。近くにミルとシトラの姿があり、二名も疲れていたのでしっかり眠っていた。


 朝起きて、窓からウィリディス領の景色を見ると以前の美しい姿とは程遠い状態になっていた。

 建物が大きな根によって壊れ、巨大な地震が起こった後のようになっている。でも亡くなった方は今のところいないらしい。ウィリディス領の多くの者が回復魔法を使える緑色の魔力を有しており、怪我を治癒できたのが理由だ。

 だが、他領の者の盗難事件が頻発しており、すでに多くの美術品が盗まれたのだとか。今のウィリディス領に犯罪者を取り締まる力は無く、建物に閉じ込められている人々を助けることが最優先事項だった。


 僕たちの家は森の中にあり、根の影響を大きく受けなかったため、無傷で残っていた。しっかりと眠って体力を回復させたので、僕たちもウィリディス領の復興を手伝う。


 七月なので、日差しが照り付け、温度が高い。だが、人々は瓦礫や壊れた木材を集めていく。どうも、壊れた瓦礫や木材から別の資源を生み出すと言う。瓦礫は再度砕き、焼いて瓦やレンガにするのだとか。木材は砕かれ、紙に生まれ変わる。例え壊されても資源は無駄にしないという考えのもと、恐怖から解放された者達のがんばりようは目を見張る光景だった。


「最弱と言われていた緑色の勇者様がアルラウネを倒してくれたんだ。俺達が頑張らないでどうする!」


「戦うことなんて苦手だった緑色の勇者様が私達を守ってくださったのよ。今度は私達が緑色の勇者様を支える番だわ!」


「僕も緑色の勇者様みたいに強くなる!」


「私もっ!」


 ウィリディス領に住む男性女性、子供達は皆、プラスさんを尊敬していた。次は自分達の番だと言って汗水たらし、復興を頑張っている。やはり、不況だったとしてもウィリディス領の人々の心は未だに熱い状態だった。これから盛り返すという気持ちがひしひしと伝わってくる。


 三日三晩救助活動を続け、重軽傷者は多かったが、死者はゼロ。以前、アルラウネが攻めてきた時は万単位で亡くなった方がいたそうだ……。その時に比べたら破格の数字になっている。やはり、即死の叫び声を封じたのが大きかった。あの攻撃がウィリディス領全体に響き渡っていたらどうなっていたのか。考えただけでも恐ろしい。


 僕は救助活動のし過ぎで体調を少々崩し休養を取る。その後、ウィリディスギルドのギルドマスターであるベルデさんが僕たちの家を訪ねてきた。わざわざ来てもらって申し訳ない。


「この度は誠にありがとうございましたっ! 領民一同感謝の気持ちでいっぱいです!」


 ベルデさんは広間で僕に頭を下げ、感謝してきた。服装はいつもの燕尾服の上に白衣姿ではなく、しっかりと決めた燕尾服だった。

 緑色の長い髪を後頭部で結び、清潔感が溢れている。ただ、頭を下げると眼鏡がずれ、少々間抜けな姿になっていた。

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