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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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大食いの実

「こ、こんなデカい木の根をどうやって止めろっていうの……」


「『緑色魔法:根畑(ルートガーデン)』で押し合ってください!」


「無茶言わないで!」


 プラスさんもアルラウネのように根を操る攻撃が可能だ。彼女も完璧な緑色の魔力を持っている。アルラウネとの差は魔力量の違いでしかない。


「今のプラスさんなら出来ます! このままだと、体力がなくなってこちらの負けです!」


 僕はフルーファを振りながら木の根を破壊していくも、相手の再生速度が速すぎて攻撃に移れない。先ほどと同じように近づいて攻撃しても木偶人形が本体を守ってしまう。


「く……。わかった! やってみる!」


 プラスさんは覚悟を決めて叫び、地面に手を当てた。


「『緑色魔法:根畑(ルートガーデン)』」


 地面からアルラウネとまではいかないが巨大な木の根が八本生え、アルラウネの根をがっしりと掴む。そのまま、ギチギチと音がしそうなほど震えながら、両者の木の根が止まった。


「グうぐぐぅうう……。こ、これ、絶対に負ける綱引きじゃんっ! もう、負けそう! 早く攻撃して!」


 プラスさんの額や腕に血管が浮き出て全身に力を入れていた。大量の魔力を消費し、一時的だが、アルラウネの行動を押さえてくれていた。


「シトラ、ミル。今のうちに胚珠の中に居る本体を倒す!」


「ええ、わかってるわ!」


「ぼくの拳に溜めまくった獣拳を叩き込んでやりますよ!」


 僕達は三方向から中央にいるアルラウネに向って走る。中央にいる木偶人形は一体しかおらず、攻撃手段の根はプラスさんが引き止めてくれていた。僕達の眼はアルラウネの即死攻撃が見える。アルラウネが僕たち三人を止める手立ては今のところ無い。確実に攻め時だ。


「うーん、面倒臭いなー。ほんと、私はただ仲間を増やそうとしているだけなのに」


 アルラウネの念話がブツブツ呟かれると木偶人形が一体から三体に増えた。そのまま、止まっている根の上を走り、僕達のもとに迫ってくる。


「皆、死んじゃえ~」


 アルラウネの念話が聞こえると目の前に走ってくる木偶人形の口が開き、緑色の魔力を溜めこんでいた。そのまま、玉のような魔力が勢いよく大量に吐き出された。

 僕はフルーファで魔力の玉を切り裂く。やはり、魔力の攻撃なのでフルーファは美味しそうに食した。本来は音の広がりによって耳から頭を狂わせる攻撃だが、今は音が使えない状況なので対処しやすい。でも頭に当たれば僕とプラスさん以外即死攻撃だ。


「ミル! シトラ! 緑色の魔力の攻撃は絶対に躱すんだ!」


「わかってます! もう、肌感でやばいってわかります!」


「ポンポン打たれると、回避するのが難しいんだけど!」


 アルラウネは質ではなく数で攻めてきた。口から吐き出される緑色の魔力は普通の魔法使いが連続で放つ魔法と同じくらいの量だ。

 頭に当たったら即死の攻撃がポンポンと放たれている現状に、驚きが隠せない。でも、僕達が戦わなければ国全体が危険に晒される。

 目の前から来る木偶人形は肉弾戦も行って来た。だが、ミルやシトラと共に鍛錬している僕に掛かればぬるい攻撃だ。


「プルウィウス流剣術。イエロー連斬!」


 地面を蹴り、木偶人形が魔法を放つ前に木端微塵にする。そのまま、加速し続け、巨大な胚珠を真横に切伏せた。


「おんどらっ!」


 木偶人形を吹っ飛ばしたシトラが勢いよく走り、胚珠目掛けて飛び蹴りを打ち込む。ドゴンッという巨大な鈍い音が鳴り、無色の魔力が足から放たれ、本体らしき人型の魔物が胚珠から飛び出た。下半身は僕がフルーファによって切り伏せた影響で無く、上半身だけの状態だった。


「まだまだっ! 頭を潰させてもらいます!」


 ミルも木偶人形を破壊し、空中にいる本体目掛けて飛んだ。両手に無色の魔力を込め、頭を挟み込むようにして叩く。両側からの獣拳により頭が潰された。


「も、もう無理!」


 プラスさんは力を抜き、魔法を解除する。アルラウネの根は動いておらず、停止していた。


「……まだだ」


 僕の魔力視に映っているアルラウネの巨大な体から魔力が抜けない。どうやら、少々遅かったようだ。


「キース、見て……」


 シトラは指先をウィリディス領の方に向ける。その先には巨大な木の根が学園のあたりから真上に伸びていた。


「まさか……」


 僕は胚珠の中身を確認する。下半身が無かった。


「あぶなかったー。いや、まだ胚珠の状態でよかったよ。もう、人間はほんと酷いことするんだからー」


 アルラウネの念話が僕達の頭の中に響く。領内に生えている一本の太い根のてっぺんに何かがいた。

 頭に綺麗な花が咲いている人型の魔物がいた。体は緑色で女性の体形をしている。胸が大きく、括れており、お尻も膨らんでいた。顔は人その物で美人と言ってもいいだろう。

 目、鼻、口、両手両足……。どれも人と同じだ。髪は草のようで風になびいていた。頭に咲いている花はスイレンのような綺麗な花だったが、なぜか悍ましい。


「あー、あー、うーん。声の方はまだでないなー。ほんと、面倒なことしてくれちゃってさ」


「なんか、アルラウネの威圧感が増したんだけど……。どういう状況なの……」


 プラスさんは城壁よりも高い木の根のてっぺんに立っているアルラウネの方を見ながら呟いた。


「おそらく、あの本体を倒さないと駄目みたいですね。さっき以上に手ごわくなっているはずです。気を引き締めて戦いましょう」


「うぅ、なんで、あの大きな方が本体じゃないのよ……。でも、人型になったんだから、少しは能力が落ちてるんじゃ……」


 プラスさんは戦いを考えたくないのか、視線を逸らす。


 僕は柱頭を切り裂き、エリクサーの素材を回収する。なんせ、巨大な花が一気に枯れだしたのだ。地中を通り、魔力が本体の体の中に集約されていく。花はボロボロになり、僕達は地面に着地した。

 あの本体は実なのだろう。花の栄養を全て吸収してしまった大食いの実だ。


「さてと、多くの人間から魔力をいただきますっ~」


 アルラウネは木の根を何本も伸ばし、ウィリディス領の地面から大量の根を生やす。根に捕まれば魔力を吸われてアルラウネの養分にされてしまうのだ。

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