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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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プラータちゃんと買い物

「……取り残されてしまった」


 僕は一人になってしまい、自由時間が出来た。

 今日は休日なので学園もお休みなはずだ。プラータちゃんもお休みのはずなので、会いに行こうかな。


 僕は自由時間を使ってプラータちゃんと会うことにした。三名とほぼ同じ場所に向かい、プラータちゃんが寝泊まりしている勇者邸の離れにやって来た。すると、朝から花壇の手入れをしている機嫌がいいプラータちゃんの姿を見つける。

 長く綺麗な金髪をリボンで束ね、鍔が広い帽子をかぶって日差しを遮っている。影が落ちた顔は暗く見えるが、微笑んでおり、周りの凛と咲いている花よりも輝いて見えた。

 プラータちゃんの微笑む顏がどこか遠い記憶の母に似ており、気になっているのかもしれない。そんなこじつけがましい感覚に苛まれながらも、彼女に近づく。


「プラータちゃん。おはよう。元気だった?」


「あ、キースさん。おはようございます!」


 プラータちゃんは僕に頭を下げた。帽子の鍔が上がると日差しを一杯に浴び満面の笑みを浮かべている彼女が現れた。まだ成人していないのに整った顔立ちとどこか大人っぽさが醸し出ており、……胸がドキリとした。


「どうかしたんですか?」


 プラータちゃんに見惚れていると、彼女から樋口を切る。その声にハッとさせられた。


「あぁ。えっと、今日は時間が出来たから、プラータちゃんと話したいと思って」


「え……。それはつまり、デートのお誘い……と言うことですか?」


 プラータちゃんは指先を突き合わせていると、頬が紅色にじんわりと染まっていく。


「デート……。なんて言うんだろう。成人が未成年に手を出したら犯罪だから、買い物って感じかな? えっと、プラータちゃんは時間ある?」


 僕はプラータちゃんの口からデートと言う言葉を聞いてなぜか無性に照れてしまい、視線を反らしながら呟く。

 プラータちゃんの顔がパーッと明るくなり、ダダダっと走って離れに入って行く。


「お母さんっ! 私、デートしてくるっ!」


 プラータちゃんは大声を出して内容を簡潔に伝えた後、服装を正して家を出てきた。


「はぁ、はぁ、はぁ。お待たせしました!」


 プラータちゃんは決して高い衣装ではないが、夏でも涼し気な半そでと薄手の黄色いカーディガンを身に着け、女の子らしい柔らかそうな生地で出来たスカートを履いている。風が吹いてスカートが若干捲れると短パンが見えた。きっと下着が見えないようにするための配慮だろう。


「いきなり来てごめん」


「いえ、今日はお休みですし、気にしていません! それより、私に会いに来てくれたって言うのが物凄く嬉しいですっ!」


 プラータちゃんは兎のようにピョンピョンと飛び跳ねながら、日の光にも負けないくらいの輝きを放つ笑顔を浮かべていた。


 二人で買い物をするなんて実に二年ぶりだ。当時の彼女は一〇歳だった。身長は一三八センチメートルくらい。でも、二年も経てば成長し、一五〇センチメートル近くになっていた。


「あぁー、キースさんとの身長差が以前にもまして広がっている気がします」


 プラータちゃんは手を伸ばし、三〇センチメートルの差がある僕の頭に手を乗せようとしてくる。


「はは、そうだね」


 僕はプラータちゃんの頭に手を乗せ、胸の下辺りの高さにいると確認した。ミルと同じくらいかな。


「キースさん、手を繋ぎましょう。その方が仲良しに見えますよね」


「仲良しに見られたいの?」


「顔が全然似ていないんですよ。兄妹って思われませんし、騎士に見つかったら補導されちゃいます」


 プラータちゃんは見かけによらず慎重だった。


「大丈夫。手を握っていれば見つかったりしないよ。僕は影が薄いから」


 『無視』の効果で僕達が手を繋いでいれば他の者に嫌な視線を向けられることはない。


「じゃあ、プラータちゃん、どこに行きたい?」


「植物園に行きたいです!」


 プラータちゃんは堂々と言った。前から行きたかったのだろう。


「よし、植物園に行こうか」


 僕は以前ミルとシトラの二人と行った植物園に向かう。今日は快晴で、空気が澄み視界が良好だった。なので、植物がより一層綺麗に見えるはずだ。


 僕は植物園に向っている途中、屋台で売っている果物を使ったお菓子を購入し、プラータちゃんに渡す。薄く焼いた生地に生クリームと多くの果物を乗せたクレープと言うお菓子だ。


「え、食べていいんですか?」


「もちろん。プラータちゃんはお菓子が好きでしょ。朝食替わりに丁度いいかなとおもって」


「はわわ~っ! ありがとうございます!」


 プラータちゃんはクレープに齧り付き、美味しそうに食した。口周りに着いた生クリームが彼女の子供っぽさを助長させる。


「キースさんもどうぞ。凄く美味しいですよ」


 プラータちゃんは僕にクレープを差し出してきた。僕はありがたくいただく。


「うん、甘くておいしい。バナナがいい味を出しているね」


「そうですよね。イチゴも凄く美味しいです。何個でも食べられちゃいます~」


 プラータちゃんはクレープを食べきり、満足そうにしていた。でも、未だに口に生クリームが付いていた。


「プラータちゃん、こっち向いて」


「はい、なんですか?」


 プラータちゃんは僕の方に顔を向ける。

 僕は生クリームを親指の腹で掬い取り、綺麗にした。余った生クリームはもったいないので食しておく。なぜか、先ほど食べていたクレープよりも甘い気がする……。


「うん、凄く甘い……」


「ぼっ……」


 プラータちゃんの顔が一気に赤くなり、ぷしゅーっと萎むようにその場にしゃがみ込む。


「プラータちゃん、大丈夫? 疲れちゃった?」


「い、いえ……。そうじゃないです……。えっと、キースさん。カッコよくなりすぎるのは反則だと思います……。私が面食いだと思われそうじゃないですか……。私はキースさんの心に惚れたのに……顔までドチャ糞カッコいいんじゃ心臓が持ちません!」


 プラータちゃんはなぜか怒って来た。指に着いた生クリームを舐めたのが、行儀が悪かったかな。


「ん? 何を言っているのかよくわからないんだけど……。とりあえずごめん」


「誤ればいいってものじゃないですけどね」


 プラータちゃんは立ち上がり、一緒に歩いて植物園に行った。夏が近いので花が咲き誇っており、色とりどりの花が観察できた。


「うわあ~っ! すごい綺麗ですっ! あぁ~、可愛い!」


 プラータちゃんは花を見て大興奮。やはりまだまだ子供で、お花屋さんが夢の少女だと認識させてくる。植物園の中を歩き、ひたすら花を見た。まあ、僕は花を楽しそうに見ているプラータちゃんを見ていた気がする……。周りの綺麗な花より、彼女に視線が集まってしまうんだよな。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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