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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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緑色の勇者の真価

「くっ……!」


 シトラは後方に下がったのち、着地に失敗して転がった。ナイフを弾いた時、手の甲に少し傷を負ったのかもしれない。ごく少量でシトラの体が麻痺し、完全に動けなくなっている。


「う、嘘……。凄い効果が出てる」


「こ、これが麻痺毒。や、やばいわね……」


 シトラは身が動かせず、体がこわばっていた。


 プラスさんはシトラの首にナイフを当て。ただ戦うよりも楽に勝てていた。その後、魔法でシトラの毒を分解し、解毒する。


「はぁ……。毒を使われただけでプラスさんの危険度が一気に増したわ。これ、解毒できない者からしたら攻撃を躱しながら戦わないといけないのが厳しすぎる」


 シトラはプラスさんと相性が一気に悪くなった。


「じゃあ、次はぼくが行きますねっ!」


 ミルは両脚を踏みしめ、やる気満々だ。素早い初速で駆けだし、プラスさんに向っていく。


 プラスさんはもう一度同じようにレイピアを出して動きを止めようとしたが、ミルに攻撃を当てるのは至難の業だ。レイピアの素早い攻撃も当たらず、懐に入られる。


「貰った!」


 ミルは拳をプラスさんの顔に放った。


「ふっ!」


 プラスさんは一歩引いて試験管の中身を口に含んだあと液体を噴いた。霧状になった液はミルの顔に掛かる。


「にゃぁあああ~っ! 目が、目がぁ~っ!」


 ミルは目を押さえながら地面をのたうち回る。


「催涙性の毒液だよ。目にちょっと入るだけでも痛みが凄いでしょ。どうしよう。知識が戦いで使えるなんて……」


 プラスさんは自分の可能性を見出したかのような嬉しそうな顔をしている。ただ、その油断は危険だ。


「にゃあおらっ! 獣拳!」


 ミルはプラスさんの鳩尾に拳を打ち込み、無色の魔力を打ち込んだ。


「ぐふっ!」


 プラスさんはたまらず蹲り、悶えていた。


「にゃぁ、にゃぁ、にゃぁ……。プラスさん。ぼくは、目が見えていなくても戦えるって知らなかったですか?」


 ミルは音やにおい、肌間で敵の位置を把握できる。そのため、目が見えなくなっても相手の位置がわかるのだ。あののたうち回っていた姿は嘘ではないと思うが、相手の油断を誘うための意図した大きな反応だったのかもしれない。


「うぐぅ……。油断しました……」


 プラスさんは涙目になりながら立ち上がり、ミルの眼を治す。相手にどんな毒を与えても自分の魔法で直せると思うとどんな効果を発生させても強そうだ。


「さて、毒に耐性を持っていない相手への対策は出来ました。でも僕みたいに毒に耐性がある者が相手になるかもしれません。フレイは毒を燃やしてきますから効果が薄い可能性があります。ルラキさんは解毒魔法が使えると思いますし他の勇者も毒の対策を何かしら考えているはずです。毒が本命と見せかけて確実に決める必殺技みたいな力が欲しいですね」


「そ、そんな力があれば最初っから使ってるよ~。やっぱり勇者は化け物だよ」


 プラスさんは自分も勇者だとわかっていないのか、情けない発言をしていた。


「うーん……。ここまで魔法を使わずに戦えるようになったのなら、次は魔法を使ってもいいかもしれませんね。あの根っこを操る魔法は凄く汎用性が高いですし、手数を増やせます。防御手段にもできます。あの力で必殺技を作りたいですね……」


「『緑色魔法:根畑(ルートガーデン)』」


 プラスさんは地面に手を当てて、八本の根を地面から出現させた。タコ足のようにウネウネと動いており、拘束するのに役立ちそうだ。


「プラスさん。根の先端を鋭くして高速で動かせますか?」


「や、やってみる」


 プラスさんは魔力で根の先端を捩じり、鋭く尖らせた。そのまま、僕目掛けて根を動かす。音より遅いが普通の人なら絶対に躱せない速度で移動していた。


「この攻撃をもっと早く出来るようになってください。出来れば相手の死角から狙撃するような形が理想です。正面から魔法の打ち合いをしたら確実に相殺されるので、毒で相手をビビらせて本命は根の追撃攻撃と言う流れを作りましょう。必勝出来る戦法を何個も持っている者が勝てます。もちろん、ライアンみたく単純な力で勝負する者もいますが、プラスさんは手数で勝負しましょう」


「す、すごい……。キース君は戦いの才能があるんだね……」


 プラスさんは僕の発言を聞き、頷いた。

 僕の助言はここまでにして手数を増やしていく。


 プラスさんは基礎体力を第一に置き、走ったり筋力の鍛錬をしたりして体を限界まで鍛えた。元から持っていた薬草や毒草の知識を使い、様々な毒で相手を翻弄する技術を磨き、回復魔法はすでに極めていたため攻撃魔法のルートガーデンだけを極限まで使いこなせるように努力していた。


 一つずつ一つずつ確実にこなしていくと、プラスさんは劇的に変わっていく。治療と戦闘が出来る緑色の勇者へと確実に成長していた。

 まだまだ荒い部分が目立つもののさすが緑色の勇者と言うべきか、物覚えが早く強くなる方法を知ると、どん欲に求めており、シトラとミルに勝てる回数も増えて行った。


 六月の終わりごろ……。


「し、シトラちゃん、ミルちゃん……。あ、あれが出来たよ……」


「ほ、本当ですか……! や、やっとできたんですね!」


「うぅ、長い一ヶ月だった……」


 プラスさんとミア、シトラはこそこそ話をしており、一体何の話をしているのか気になった僕は三名のもとに駆け寄る。


「えっと、何の話をしているんですか?」


「あ、あぁー、えっと、何でもないよー。キース君は鍛錬に集中していてねー」


 プラスさんは視線を反らし、僕の顔を見てこない。頬が軽く赤くなっており、何かを隠しているのは明白だった。

 でも、言いたくないことなのか、僕に話してくれない。なら、無理に話を聞くのも悪いと思い、ミルとシトラにも追及することは無かった。


「じゃあ、キースさん。今日はぼくとプラスさん、シトラさんの三人で勇者邸に行ってきます。キースさんは一人で時間を好きに使ってください」


 ミルは珍しく僕から離れた。


「よ、よし! 早速行こう!」


 シトラはすでに興奮気味で、耳と尻尾を大きく揺らしている。

 プラスさんとの鍛錬を終えたミルとシトラは足早に家をあとにする。

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