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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第五章:ウィリディス領の実態

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魔法を使わない戦い方

「もう、キースさん。なんで名前を乗せなかったんですか?」


 ミルは少々怒り口調で呟く。


「別に名前を乗せる必要なんてないよ。目立ちたいわけじゃないし、名前が書かれても意味がない」


「キースを知っている者がキースの活躍を見て喜ぶかもしれないじゃない。その姿を見て自分も頑張ろうという気持ちになるんじゃない」


「そうかもしれないけど……」


「今はキースを毛ぎらう者はいないのよ。少しくらい胸を張ってもいいんじゃない? だって、悪い者を捕まえたんだから褒められるのが普通でしょ」


「僕はシトラとミルに良い子良い子してもらえたら十分だよ。地位や名声なんて必要ない。人助けは見返りを求めてするような行為じゃないからね」


「まあ、そう言われたらそうね。でも、誰でもキースみたく何の見返りも求めず人助けをするなんて簡単にできることじゃないわ」


「そうですよ。ぼくだったらお金をくれなきゃ人助けなんてしたくないです。無償で人助けができるなんてそれだけで凄い才能ですよ」


 シトラとミルは僕をとことん褒めてきた。やっぱり褒められるという行為はとても嬉しい。でも、褒められすぎると恥ずかしいし、本音かどうかわからなくなってくる。ただ、シトラとミルは本当に褒めてくれているとわかるくらい誇らしげな表情だ。


「二人に褒めてもらえただけで僕は悪者を捕まえた価値があるよ。褒めてくれてありがとう。凄く嬉しかった」


「えへへー。キースさんを一杯褒めるのも妻の仕事ですからね。褒められるところがあればとことん褒めちゃいますよー」


 ミルは目尻を柔らかくしながら微笑む。


「キースを褒めれば褒めるだけ、沢山可愛がってもらえそうだし」


 シトラはアルブを抱きしめてほくそ笑んでいた。

 ミルとシトラは僕の心を穏やかにしてくる。そうすることでいい影響を得られると理解しているようだ。ほんと、頭が回る二人だ。僕をいい気分にさせて少しでもいい思いをしようと考えているらしい。


 僕はシトラとミルの手の平の上でクルクル回る犬みたいにおだてられて生きて行くのかもしれない。でも、そんな人生も悪くないと思える。なんせ、大人になって褒めてくれる相手なんて本当にいない。子供の時に褒められた経験は一切無い。まあ、お母さんが生きていた時は褒められていたけど、五歳以降は一切褒められなかった。そんな幼少期を過ごした僕を沢山褒めたらそりゃあ、喜んで尻尾を振る。

 褒められることは大好きだ。でも、自分から進んで褒められようとすることはしない。僕の褒められるところはシトラとミルが見つけてくれる。大勢に褒められずとも、数人に感謝の気持ちを伝えてもらうだけで僕は幸せ者だ。次もまた頑張ろうと思える。


「じゃあ、朝食も終わったし、家に帰ろうか」


「そうですね。雨と犯罪者集団に会うという何とも不運な日でしたけど、結果良ければ最高な気持ちで帰れますね」


「そうね。嫌なことがあってもキースに可愛がってもらえるだけで最高な気持ちになれるから私達は幸せ者よ。もちろん、可愛がってもらうことが全てじゃないけどね」


 ミルとシトラは微笑み合いながら会話していた。話しに割り込めなくても心地よい。

 僕達は朝食を得た後、家に帰った。昨日は雨だったのに今日はスカッと晴れて気持ちが上がる天気になっている。

 昨日がこんな天気ならと思わずにいられない。でも、ミルが言った通り、終わりよければ昨日の観光のすべてが良かったような気分になる。不思議だ。


 家に帰り、待っていたプラスさんと戦って鍛錬をする。


「はっ!」


 プラスさんはレイピアを僕が振るうフルーファに当てた。僕の身がぴたりと止まり、これ以上攻撃できない。どういう仕組みなのだろうか。わからないが、身を引こうと思えば引ける。でも押し込めない。

 相手を止めて魔法で捕まえるという戦法が強いと思われるが、今は魔法を一切使わずに戦っているのでプラスさんの決定打に掛けた。


「プラスさん。魔法を使わなくても相手と戦えるように何か考えましょう」


「えぇ……。この私が魔法を使わずに相手と戦える方法があると思えないんだけど」


「考えを止めたら駄目です。何か方法はあるはずです。プラスさんの得意な何かで相手を倒す方法が……。あ……」


 僕は家の裏で育てていた解毒草を見た。それを見て、僕は気づいた。緑色の魔力は薬草の効果を高められる。逆に毒草の効果も高められる。


「プラスさんは毒に耐性があるんですよね?」


「まあ、ある程度の毒は効かないけど……。何をさせようとしているの?」


「毒付きのレイピアで相手を攻撃するんです。別にプラスさんの力が強くなる必要はない。いい考えだと思いませんか?」


「で、でも……。毒を使うなんて卑怯なんじゃ……」


「なにが卑怯なんですか? 自分の長所が使えるんですから何も気にする必要はありません。勇者に毒が効くかどうかわかりませんが、戦える予知はありますよね」


「そうだけど……」


「なら、やってみましょう。プラスさんは解毒も出来ますし、相手を倒して拘束してから解毒と言う流れに持って行けます。勝てる可能性があるならとことん試しましょう」


「うぅ……、わかった」


 プラスさんはコクリと頷いた。

 森の中で毒草を探し、手足を麻痺させる毒や気分を悪くさせる毒、眠気が襲う毒など様々な毒を採取する。プラスさんの魔力で毒の効果を操り、威力や持続時間を変える作業もお手の物だった。毒付きのナイフと毒が入った試験管を何本も所持し、戦いに臨む。


 シトラが僕の代わりに戦う。僕だと毒を分解できるのでプラスさんの戦いにならない。


「じゃあ、行くわよっ!」


「はい! どんとこいっ!」


 シトラは全力で走り、思いっきりの大ぶりをプラスさんに向ける。


「ふっ!」


 プラスさんはレイピアでシトラの動きを止めると、所持していた小さなナイフを投げた。シトラは後方に下がってナイフを弾く。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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