親について
「ぷは~。沢山食べて美味しいお酒を飲んで、最高の気分です~」
「ほんとほんと。美味しい料理が沢山食べられるだけで本当に幸せよね~。でも、太らないようにしないといけないから、そこだけは注意が必要ね」
「ぼく達は獣族ですよ。筋肉量が他の種族より多いので簡単に太りませんって」
「それもそうね~」
ミルとシトラは体型が変わるほどの食事をとっていた。だが動き回るため、体の燃料となる。でも、いずれ体に脂肪がたまり出したら体が重くなってしまうだろう。食べすぎは危険だ。
「ミル、シトラは腹八分目にしておかないと苦しくなるよ」
「でも、腹八分目にしたら体力が持ちません」
「この後、体力をバカみたいに使うんだから、沢山食べないと体が持たないわ」
「そこまで無理しなくてもいいよ」
「無理なんてしていませんよ。ぼくは最大限楽しみたいから体力の源を摂取しているんです!」
ミルは沢山食べ、活力を満たす。
「そうよ。無理なんてしてないわ。体力が無くなったらキースも困るでしょ」
「僕は二人といられるだけで幸せだから、したくない時は言って。女の子の日と被る時もあるだろうし、気持ち的に落ち込んでいる時もあるでしょ。そう言う時に相手を受け止めるのは凄く難しいんだ。僕でも難しいから辛い時は遠慮せずに伝えて」
「もう、キースさん、妻相手に優しすぎますよ~。自慢じゃないですけど、キースさんと寝た夜で気分が落ち込んでいる日が一度もありません! まあ、今後はわからないので、しっかりと胸に刻んでおきます」
「キース、本当は私達にそんな権限は無いのよ。だって妻だもの。キースがしたい時に私達は文句を言えない。なんなら、相手を受け止めるのは私達の役目なの。だから、キースが言っていることは普通に考えたらおかしいのよ。獣族の雌は雄に尽くすのが普通。だって、守ってもらっているんだから。人だってそう。女は弱いから男が守る。夫の子を産むのが女の幸せって言う考えが根強いのに……、キースは私達のことばかり考えてる」
「僕はミルとシトラに幸せになってほしいだけだよ。辛い気持ちになってほしくない。その考え方は男の方が偉いと植え付けるための罠だよ。男女に良い悪いなんて無いし、どっちが強い弱いなんて関係ない。男だって弱いんだ。僕は一二歳の少女に心を抉られて何もできなかったみたいに一言で切られる時もある。そんな時救ってくれたのがミルとシトラだ。どちらかが守るじゃない。互いに支え合って生きて行った方がいい。僕はそんな家庭を築きたい」
「シトラさん、どうしましょう。ぼく、本当に一二人くらい子供が欲しくなっちゃいました」
「ほんと、こんな考えをする夫の妻になっちゃったら何人兄妹の家族になるのかしらね」
「僕の考えはおかしいのかな……」
「おかしいですね~。だって、キースさんの家庭でお父さんが真面に育児しているところを見たことがありますか?」
「無い……」
「ぼくの家もそうです。お父さんは仕事しかしていませんでした。きっと他の家庭も似たようなものですよ。それなのに、キースさんはぼくたちと支え合って生活したいなんて……。家事育児、その他諸々半分ずつにするって言っているようなものですよ。そんな夫がいたら普通の二倍は子供が産めちゃうじゃないですか~」
ミルは頬に手を当てながら耳をパタパタと動かし、尻尾を伸ばしきっていた。
「メイドを雇ったら三倍は産めちゃうかも……」
「なんでそうなるの……。沢山の子供がいたら楽しいかもしれないけど、ミルとシトラが疲れちゃうでしょ。気を少しでも楽にして神様からの贈り物が来たらありがたく受け取ろうよ。男を産めとかそんなことを言う気もない。家を存続させるのはスージア兄さんだけで充分だと思う」
「はぁ~、ほんと気が楽な夫だこと。優しすぎるのも大概にしないとどんどん沼っちゃうじゃない」
シトラは料理をおいしく食べられるだけで止め、デザートに移った。まだ食べるんだと思ったが、口に出さずにぐっと堪える。
「キースさんの赤ちゃんはきっと可愛いんだろうな~。いや、確実に可愛いに決まっている。可愛くないなんてありえない!」
ミルはすでに想像を膨らませていた。デザートを貰いに大きな皿を持って早歩きで移動していった。
「子供か……。僕、まだ一六歳だしな……。あと二カ月で一七歳か。まだ、親になるなんて想像もできない。ドマリスさんみたいな感じになればいいのかな……」
僕は自分と妻との将来を考えていた。貴族は出来る限り多くの子供を作って他の貴族の元に嫁がせたり嫁を貰ったりしながら土地を広げ地位を上げていく。
一応貴族の僕と王族のイリスちゃんとの子ならまだしも、ミルやシトラの子供が他の貴族に嫁いだり嫁を貰ったりすることはないだろう。だから、沢山産んでもらわなくてもいいのだが、妻の二名は産む気満々……。大家族になったら僕がしっかりと育てられる自信が全くない。
親と言う存在が全然わからないのに、いきなり親に成れるわけがない。生憎お金は沢山あるので生活に困ることはない。
僕が父になるうえで、ただ一つ確実に言えることは僕の父親のような親にだけはならないということだ。たとえ、三原色の魔力が無い子共が生まれたとしても育児放棄なんてするわけがない。
「子供が出来てすらいないのに、気にしすぎても仕方がないか……」
僕は暖かいお茶を飲み、心を静めた。
「ふふん~」
ミルは小さなケーキが山盛りの皿をテーブルに置く。
「ふぅ~ん」
シトラも同じくらい多いケーキが盛られた皿をテーブルに乗せる。
「た、食べすぎなんじゃ……」
「これくらいペロリですよ~」
「そうそう、これくらい余裕」
ミルとシトラの言う通りで、山盛りだったケーキがあっという間になくなってしまった。もう、吸引魔法でも使っているんじゃないかと思うくらい胃の中にケーキが入って行く。
夕食を得終えた僕たちは部屋に戻った。シトラとミルは普通に食べすぎており、お腹がポッコリと出ている。このままお風呂に入るのは苦しいと思うので、三〇分くらい勉強してからお風呂に入ることにした。
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